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26 バトルロワイヤルの準備完了

 ◆◇◆


 5月12日夜。

 児童養護施設にいる俺に氷室さんから電話がある。


「お嫁様バトルロワイヤルの準備が整いました」

「いよいよですか」

 

 俺の緊張が高まる。


 タワーマンション最上階でお嫁様バトルロワイヤルを開催。

 千紘姉さん、ニーナちゃん、麿莉奈、桃香、藍が一堂に集結する。


「今さらですけど、ほんとにこの5人なんですよね……」

「はい、女の子と保護者に説明が終わっています。皆様、快(こころよ)くご了承いただきました」


 千紘姉さんとニーナちゃんと麿莉奈からは参加(エントリー)の意思を直接聞いた。桃香と藍とは会っていないがOKしたんだな。

 

「はぁ、親の顔が見たい……」

 ため息。俺なんかのお嫁様候補として、娘を差し出すのは気が知れないんだけど。


 俺と児童養護施設で育った千紘姉さんが受け入れてくれたのはわかる。あと麿莉奈も実家のビジネス救済のため人質にされた子だ。

 

 ニーナちゃんの親が、バイトを頑張っていた俺を信じてくれたってのを聞いた。


 だが、桃香、藍の親がよく同意したなと思う。


「ふふ、幸斗様が好感を持たれているからですよ」

「いや、百歩譲って、女の子がそうだとしても親が疑うでしょ。娘を誘拐されるんじゃないかって」


「幸斗様が六文銭ホールディングスの大株主であることの証拠を示しましたからね。六文銭ホールディングスの社長や、財務大臣とかの大物政治家に説明に行かせました」

 氷室さんはジジイどもを顎(あご)で使ったような言い方をする。


「……大掛かりな工作がされたんですね」

 俺のお嫁様選びは国を揺るがすほどなのか。


「親は、娘が資産1兆円の幸斗様のお嫁様になったら大金が手に入るとワクワクしていますよ」

「でしょうねぇ」


「女の子の方は、お金よりも幸斗様自身の人柄が好きですよ」

「ほんとかなー? そう思わないとやっていられませんが」


 千紘姉さん、ニーナちゃんは俺のことが好きだからだ。


 でも麿莉奈は金目当てだし、政略結婚は俺で手を打っておくのがマシ……という現実的な理由。

 生意気な後輩の藍も金目当てだろうな。


 ギャルの桃香も金が大好きそうだ。でも桃香は俺がお腹を空かせていた時に、パンを恵んでくれてやさしくしてくれた。俺は桃香にとても好感を持っているけど、桃香だって俺にちょっとは好意を持ってくれていると思いたい。


「しかし……幸斗様はまるで、親が反対して、メンバー交代があった方が良かったような口ぶりですね」

 氷室さんは怪訝(けげん)そうにする。


「そりゃ恥ずかしすぎますもん」

 だってさ、俺が好意をほのかに抱いている女の子が集められちゃうんだ。


 好きな人がバレるって恥ずかしいよね。初対面の麿莉奈を除いて、4人もいるし。年頃の男の子だったら、いくつもの恋を持っているのはしょうがないんですよ。


 お互いに気まずくなりそう。


 ありがちなラブコメみたいに、親の再婚で美少女が転がり込んできてほしい。最初はお互いに何とも思っていないのに、いつしか惹(ひ)かれ合う展開が良かった。

 恋が自然発生すると、恥ずかしくなくていい。


 アニメの主人公って、特に好きな子がいない状態からスタートする。で、偶然出会った美少女となんとなく恋に落ちる。

 楽ちん人生で、都合がいいよなぁ うらやましい。


 現実の男の子は元々好きな子がいるのが普通なのにさ。

 

 アニメ主人公は本当は好きな子がいても描かれてないんだろう。元々好きな子がいなかったことにされて、身近な美少女の方が簡単に手に入るからって、くっつくわけだ。本能の赴(おもむ)くままに生きている。


 本来、別の美少女が現れたら、元々の恋を貫くべきかものすごく苦しむことになる。

 でもって別の美少女に気持ちが移ったら、不貞、汚れている、氏ねとバッシングを受ける。

 俺はまさに今、針のむしろに座らされている状態。


 嘘つきのアニメ主人公はなんの非難も受けないのに、正直者の俺は叩かれまくる。正直者はバカを見るというが、本当に日本社会は不公平だ。


 お嫁様バトルロワイヤルは、女の子にちやほや取り合いにされて楽しそうだけど……俺はかなりつらいことになる。

 バトルする女の子たちの方が大変だろうけど俺の方も絶対に大変だ。

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