東京
仕事で東京に行くことが多い。
東京は、やっぱり人が多くて。
東京は、やっぱり景気がよくて。
東京は、やっぱり夜が長くて。
東京は、やっぱり日本の中心なんだと実感する。
東京に頻繁に行くようになって、ずいぶんたつけど。
いまだに、道を間違えるし。
いまだに、電車に乗り間違えるし。
いまだに、バスを乗りこなせない。
僕は、いまだに東京に馴染めないでいる。
美味しいと思うワインは、だいたい値段が安いもの。
すこし高めのブランドものは、やっぱり自分には似合わない。
お洒落で洗練されている場所は、何だか居心地が悪く感じてしまう。
ひとりで外食をするのが苦手で、気の利いた行きつけの店もない。
相変わらず、人見知りな自分。
なのに、人情味溢れる下町の雰囲気が好き。
店先のお総菜の香りと共に、ゆるい空気がだらりと流れてくる。
ところどころに、バブル時代の活気の残骸が散らばっているのを見つける。
それは、時がたつにつれて、戻れない切なさへと変化しているようだった。
そんなゆるい空気感がとっても落ち着くけど。
優しく声をかけられるたびに、少しとまどってしまう。
昔から変わっていない自分。
今日もまた、ひとり東京で迷ってしまう。