⑤
家の前で俺に手を振る彼女の名は銀杏楓。今日の昼休み、俺に大量のダンボールを運ばせた我が高校の生徒会長だ。
「先に帰ってたなら家の中に入ればいいのに」
「いや〜、そうしたいのは山々なんだけどさ、ほら、今日は朝ご飯を翔くんの家で食べたでしょ?その時に鍵を自分の家の中に置いて来ちゃったみたいで....」
テヘヘと舌を小さく出して照れ笑いする楓。
学校で生徒会長の楓しか見てない後輩たちからしたら考えられないだろう。
「で、俺が帰ってくるまで待っていた、と」
「そゆこと。だから早く開けて♪」
「ったく....二年に上がってから何度目だよ....」
こいつとは幼馴染みで家も隣だ。
隣と言うこともあってか、親同士かなり仲が良い。むしろ良すぎる。
ところで、なぜ楓が鍵を忘れたのと俺が帰ってくることが関係しているかと言うと。
実はこの二つの家、正面から見たら両方の家の間が不自然な壁で塞がっていて後ろが見えない状態になっている。
そして家を後ろから見るとポコッと横長方形に壁が出ていて、家と家を繋いでいる。
それで、だ。その出ている部分がどうなっているかと言うと。
双方の家の裏口が撤去され、現在では廊下となって繋がっている。他にも繋げられた部分はあるがそこは割愛しよう。
つまり俺と楓は互いの家に出入りが可能となっている。
だから楓が鍵を忘れても、俺が鍵を持っていれば問題なく楓も家に入れるってことになる。
そこまででも問題有りなのだが、俺にとってはさらに大きな問題が発生している。
事の発端は年末に両家で行った忘年会で、酔ったノリで買った宝くじが原因である。
買った本人である、俺の父親と楓の父親がまさかの一等が当選してしまい、(俺たち子供の知らないところで)両親の両親と緊急会議が行われて、この魔改造が決定された(らしい)。
だがしかし、宝くじ×2の総額は魔改造しても、余裕で余る。そこでバk───親同士は思いついてしまった。
『世界一周旅行でも行こう!』『『イェーイ!!』』と言った感じで。
だが俺たち学生は、高校もあると言うことで行ける訳もない。
そうして残されたのは俺と楓と繋がった家。
つまり、一つ(繋がっているから二つ?)屋根の下で俺と楓の生活が始まった。
───そして現在に至る。
ブックマークや評価を頂けると幸いです。
なによりも糧になります。