表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後輩にモテすぎる幼なじみは好きですか  作者: 紙城香月
幼なじみはモテすぎる生徒会長
2/5

 学食に向かうと既に学生が長い列を形成していた。


「少し出遅れたみたいだな」

「いいじゃないか翔。まずは食券を買おう。混んではいるがいつもよりは簡単に買えるぞ」


 確かに香夜の言う通りだ。こいつの前向きな考え方は一緒にいて助かる。是非とも見習いたいものだ。

 俺は先ほどの宣言通りカツ丼定食の食券を買う。香夜の方も俺と同じカツ丼定食のようだ。


 食券を握って列に並んでいると、不意に香夜が先ほどの授業のことを話し始める。


「にしても今日の由美ちゃん先生は一味違ったな翔。まさかチョークの次は出席簿を投げるとはな」


 忘れずに今日の俺の失態を掘り返す香夜。

 こういったことだけはしっかりと覚えてやがる。


「あれは俺も完全に予想外だった。あれって暴行の内に入らないの?」

「自業自得だし文句を言える立場じゃないだろ...」


 食券を出した後もしばらく香夜と雑談してると、ようやく自分たちが料理を受け取る順番が回ってきた。


 学食で働くおばちゃん達も、毎度これだけ学生で賑わっていたら大変だろうな。


 料理を受け取って、空いた席に素早く移動して座る。


 「「いただきます」」


 香夜と丁度タイミングが重なって昼食がスタートした。

 サクッとしたカツに、白米が進むようにつくられた食欲を刺激するタレ。そして付け合わせには学生たちから裏の一位と呼ばれる豚汁。


 二人で無言で目の前の昼食を堪能する。

 しばらくして香夜が唐突に。


「なぁ翔、俺はな思うんだよ」

「なにを」

「やっぱり高校生活を楽しむにはな」

「うんうん」


 高校生活を楽しむためには、か。なにが必要なんだろうか。

 少し箸を休めて香夜の話に耳を傾ける。


「───甘えてくれる美少女が必要だと思うんだよ!」

「...うん?」


 俺はこいつ(香夜)といて時々だが思うことがある。

───顔はそこそこ良いのに、何故こんなにも残念なのか、と。男子高校生らしくていいとは思うが。


「...何を唐突に言うかと思えば、また変なこと言いやがって。咽せたら大変じゃないか。そんなにいいのか?甘えてくれる美少女とやらは」


 俺はいつもの急な香夜の発言に呆れつつ、会話を続ける。


「えっ、甘えてくれる女子って良くないか?」


 即答で返して来やがった。なんて反射神経だ。こういうのを才能の無駄使いと言うのだろう。


「そんなものかねぇ。香夜の考えを否定する訳じゃないが、俺的にはそこまでいいものでも無いと思うけどな」

「まぁ限度ってものはあるけどな」


 笑いながら香夜が言う。


 そんなことを言っている間に、綺麗に定食は俺たちの胃の中に収まっていた。


「「ごちそうさまでした」」


 またしても重なる。


 学食から教室に戻る帰りに廊下で生徒会長と出会う。


「やぁ神江くん丁度良かった。生徒会の書類を職員室に運ばないといけないんだけど、前年度の生徒会の書類も溜まってたみたいでね。少し手伝っては貰えないかな」


 生徒会室の中には小さめの段ボール三箱が積み重ねられていた。正直な心情としてはベリー面倒だ。一人では小さめでも段ボール三箱は少し多すぎるので、是非とも断りたいところだが、断る理由は特に無い。...仕方ない手伝うとしよう。


「りょーかいしました。手伝いますよ会長サン。悪いな香夜。先に教室に戻っててくれ」


 会話は聞こえていたと思うが、一応香夜には一言告げて別れた。


「じゃあ、早速手伝って貰おう。荷物はこっちだから行こう。早くしないと昼休みが終わってしまうからね」


 ん?生徒会室の荷物じゃないのか?じゃあ一体どこの荷物を....あっ、荷物と言えば。

 俺は軽く手伝いを引き受けたことを後悔した。


「ここだ」


 当たって欲しくない予想は見事的中し、到着したのは職員室の真上にある会議室だ。

 生徒会長サンが予め借りて来ていただろう鍵で会議室を開ける


 そして会議室に広がっていたのは大量の段ボール。しかも嬉しくないことに全ての段ボールに均等に書類がギッシリと入れられているはずだ。


「...なぁ生徒会長サン?」

「なにかな」

「帰ってもいい───」


 『帰ってもいいかな?』その言葉がいい終わる前に。生徒会長の言葉が被せられる。


「男に二言は」

「ないです」


 俺はこの時、男に生まれたことを少し後悔したかもしれない。

ブックマークや評価を頂けると幸いです。

なによりも糧になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 僕は美少女より小さな美男子が欲しいッス。 面白いのでこれからも頑張ってくださいね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ