☆1日目☆アトランティスへ
1日目
「アトランティスと天使のお仕事」
俺、和田幸女みたいな名前だと子供の頃いじめられたな。ともかく俺はこれから49日、アトランティスで夢のような時間を過ごすことになる。
目が覚めた俺は巨大なモニタールームが見渡せる応接室のような場所に案内された。
案内してくれたのは小さなエンジェル。天使の輪を頭に乗せて白い羽で飛ぶ。
そこには一人の美女が立っていた。天使の輪があることから天使だと思われる。
「わたくしの名はミカエル。天使長をしておりますの」
ミカエル!!大天使の一人、天使の中でも最も偉大とされる天使!気品といい立ち振舞いといいルシファーとは大違いだな。涙と鼻水まみれでスライディング土下座をしたルシファーを思い出していた。
ミカエルは話を続ける。
「神様からだいたいのお話は聞いておりますわ。貴方も変わった方ですね。最近の方々は強い能力を得ての転生を希望される方がほとんどですのに。転生も嫌、生まれ変わりも嫌なんて希有ですわ。とりあえずここの仕事を見ていただき、適正試験の後、天界へ向かわれることをオススメいたします」
「適正試験があるんですか?」
「ええ、ここで働いてい者のほとんどは適正試験の勉強のためにここにいますの、後にテストを受けて合格者が正天使として天界での仕事にあたります。」
「え?ここにいる人は天使じゃないんですか?」
「天使は天使なんてすけど・・・天使見習いですわ。地球上に例えたら「順社員」といったところでしょうか。」
正社員へのテストとか、まんま会社だな。
「わたくしの仕事はアトランティスでの天使たちの管理、試験問題の作成、天界へ送る天使の選定が主ですわ。ここでのその他の天使の仕事はモニターチェック、つまり2つの世界の監視ですわ。異常があった時に天界へ知らせバランス調整を行ってもらう。
あとはアトランティスの住人の陳情を受けての生活改善などを行います。」
(なんか、会社の中間管理職と役場の仕事を両方やってるみたいだな。めんどくさそうだ)
俺はモニタールームを覗き込む。
空中を忙しそうに飛び回る小さな天使たち。
モニターの前にはリクルートスーツを着た人間。いや。頭に天使の輪があるからあの人達も天使なのか。
「リクルートスーツ?!」不思議に思った俺が呟くと
ミカエルはドンと机を叩き立ち上がる。
「リクルートスーツは完璧な衣服てすわ!!試験を受ける予定の天使たち皆に着させてますの!他の住人との区別も直ぐにつきますし、動きやすくて機能的!地球人が産み出した最高の逸品てすわ!!」
どんだけリクルートスーツが好きなんだよ・・・・
ま、確かに就活生は皆リクルートスーツを着ているし直ぐに見分けがつきそうだな。
「あ、説明を続けますね。」
ミカエルは優雅に椅子に座り直し。説明を続けた。さっきのルシファーといいミカエルといい、我を忘れて取り乱すと「優雅」で装う習慣があるらしい。
「大切な話をしますわね。」
ミカエルは真顔になって続けた。
「ここアトランティスは地球上にあります。よって地球と同じ時間が流れます。夜になれは眠くなりますし、疲れもしますし、空腹感もあります。これから「49日」貴方にはアトランティスの様々なモノを見ていただきます。そしてどうなりたいか、選んでください。」
「俺が選ばなかったら?」俺は疑問に思っていたことを口にした。天界、転生、生まれ変わり、どれもめんどくさそうだし、他の選択肢があれば聞いておきたい。
ミカエルは冷静な顔で答えた。
「消滅しますわ。」
「え?あの世とか地獄とか死者の行くところって他にあるんじゃ?」
「いえ、消滅します。ちょっと考えて見てくださいね。地球と貴方が言う異世界、仮に2つしか生命体がいる星が無かったとします。」
今、さらっとスゴいこと言ったぞ。「仮に」もしかして、他にも生命体がいる星があるのか?宇宙人?!UFO!
ミカエルは続ける。
「そこで亡くなった方を全て他の場所に送ったらどうなります?地球上で一年間に亡くなる人間の数をご存知ですか?」
「・・・・・!」
「ね、恐ろしいでしょ?これ以上わたくしの仕事増やさないで欲しいわッ!恐ろしい!恐ろしい!ただでさえ転生者のせいで仕事量が膨大なのに!神様もめんどくさいってコチラに丸投げにするし!恐ろしい!やだ!もう仕事したくない!」
ブラック企業の中間管理職・・・そんな言葉が浮かんだ。
まずは、目の前にいるブラック企業の中間管理職、いや、大天使様を宥めないと。
「ミカエルさん落ち着いてくだい。消滅するのは理解出来ました。つまり第二の人生が送れるのはほんの一握り、何故かその一人に俺が選ばれた。選択肢のどれも拒んだ俺に神様が「49日」の猶予を与えた。と、いうことですね?」
「ええ、そういうことですわ。ここアトランティスにはたくさんの種族が住んでいます。その者と交流して身の振り方を考えてみてください。
1日目はアトランティスの案内と成り立ちを説明いたしますわね。ここからはポセイドンに頼みましょう。アトランティスが地球上にあった頃の王ですから適任でしょう。何よりわたくしは忙しいのです!」
「!!!!」
いつの間に!俺の横には白い髭を蓄えた筋肉隆々、腰に布を巻いただけの老人が立っていた、
「ポセイドンッ!!!うわっ!神話だ!神話!」俺は思わず叫んでいた。まさか生きてる間にポセイドンに会えるなんて!あ、死んでるか。
厳密には死んでるとも・・・とにかく49日の間にどうするか決めないと消滅してしまう。本当の意味で「死んでしまう」のだから。