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実践と捕縛

「ほら呪文なんて必要ない」

「そんな、馬鹿な」

「なぁ、思ったんだけどな? そんなに空が好きなら、上のほうから街でも眺めてみたらどうだ?」

 

 結界が浮いた。

 ふわりと。次の瞬間には凄い速さで上昇していく。さらに上へ上へ。


「あ、あ、や、やめろ! やめ!」


 すでに遠くからそんな声が聞こえてくる。それに聞こえるように声を張ってやる。


「大丈夫落としはしない。多分な」

 

 魔術師が結界を叩くが当然びくともしない。その間も覆った結界はさらに上空へ登っていく。


「や、やめろ、まってくれ、まて!」


 悲鳴をあげる男に、ロイスは哀れだな、と思った。

 

 ──ああ、面倒くさい。

 

 冷めた目で魔術師を見送る。

 見えなくなるほどに上空まで上がっていく姿を眺めて、ロイスはなんとも言えない微妙な気分に顔を歪めた。


 ──まただ。魔術師とこうして対面すると、いつもこんな風な気持になる。なんていうんだろうな、こういうの。


 ロイスはふいとめを背けた。

 男を見送るのをやめる。

 それから外套をひるがえして歩き出した。カレンが後ろで何かを言っているが、聞こえないふりをする。

 魔術師なんて嫌いだ。とロイスは心の内側でそっと嫌悪をかみしめた。


 気分は最悪で、街から去ろうとするロイスの後ろ姿をカレンが追いかけてくる。その気配を感じながらも、カレンを追い払う気力もなく歩みをすすめる。



 その時だった。唐突に上空から光が向けられ、ロイスとカレンの姿が暗闇に照らし出しされた。

 ハッとして、ロイスは足を止めた。振り返りまぶいさに目を閉じる。

 街の城壁の上からロイスとカレンに当てられているのは、サーチライトというやつだろうか。

 眩しいほどの光が二人に降り注ぎ、ロイスとカレンの影が長く長く伸びていく。

 そのあまりの眩しさに、カレンが目を閉じた。ロイスも薄目を開けて上空を見上げる。


「そこで何をしている!」


 城壁の上から声が降ってくる。どこか高圧的なその声はおそらく聖騎士のものだとロイスは感じた。そして実際、光が目眩しとなってはっきりとはわからないが、城壁の上には複数人の武装した人間たちがいるようだった。

 ロイスは思わず舌打ちをする。

 騒ぎすぎたらしい。街の夜警に当たっていた騎士たちに見つかって騒ぎになっているのだ。


「まて! 動くな!」


 そんな怒鳴り声が聞こえてくる。

 それで止まるやつがいるか。とロイスが遠くに見える森林に向かって駆け出そうとした、その時、ロイスの腕を華奢な手が掴んだ。


「待ってよ! 私たち襲われたんだよ! 正直に言えば捕まったりしないよ!」

「お前……昼間に俺がいったこと聞いてなかったのか? あいつらに魔術師のために動くっていう考えはないんだ!」


 そこまで言って、ロイスは不意に眉を顰めた。


 ──いや、ならばなぜ、このタイミングで出てきた? 土埃があれだけ立っていればもっと前に聖騎士が駆けつけてきてもおかしくないはずだ。それなのに事が終わるまで待っていた? なぜ……?


 ロイスが思案していたその数秒の間に、街の内部から騎士たちが数人あらわれて、ロイスとカレンの周りを囲んだ。そうして、剣を突きつけられる。


「おとなしくしてもらおう」


 聖騎士の一人がそんなことを言う。

 完全に包囲されてしまったようだ。

 

 ──くそっ。


 ロイスは内心でそう吐き捨てて、両手を上げた。逃げることはできる。しかしここで聖騎士を攻撃して教会そのものをを敵にするのは得策ではない。

 とは言っても指名手配されている身だ。ここで捕縛されてどうなるか、その詳細はわからないが、ろくなことにはならないだろう。


 ──最悪処刑とか……。ありえないって言えないのが悲しい話だな。


 実際そういう例はいくつかある。それらの記録を思うと嫌な気分も増し増しだ。

 どっちにしてもいいことはない。

 が、罪が軽いうちに捕まっておくといいかも知れない。そんなふうに思う。

 罪が重くなれば最悪もありうるが、今の罪が軽いうちならば、うまくいけば指名手配もなかったことにできるかもしれない。

 

 ──なんて、楽観的すぎるか。


 なんにしても、今は大人しく捕まった方が、まだマシというものだろうと思われた。

 ロイスにならってカレンがおずおずと両手を上げる。

 たちまち二人は騎士たちに捕縛された

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