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クロードの心

「クルシイ…」


この事が知れたら身の破滅だ…。


俺が八つ裂きにされようが、どんな殺され方をされても構わない…。


でも…彼を殺させるわけにはいかない。


彼を生かすために選んだ道だ…。


君は裏切り者だと怒り狂うだろう…


このことが原因で、全てが壊れてしまうかもしれない…


先々、ディオン皇太子殿下の率いるこの国を…


俺の愛する祖国、第一魔国を…守るためにも。


このことを何としても隠し通して…


俺は君を愛しながら…、彼を守って見せる。


アイリーン、君に会いたいよ。






今のはクロードの??


グリザスは、午前中の騎士団見習いの指導を終えて、寮に一旦戻ろうと、庭を歩いている所だった。


何故?こんな言葉が聞こえてきたのだろう…


近くにクロードはいないのに。

その時、見覚えのある男に声をかけられた。


「よぉ。グリザス。演武会以来だな。」


「ミリオン・ハウエル。」


長い赤毛の、魔族の男が聖なる大剣を背に背負って立っていた。


グリザスはこの男なら、クロードが何を隠しているのか見当がつくかもしれないと思い。


「ちょっと時間、取れないか?相談に乗って欲しいことがある。」


「え?俺に?まぁ友になろうと言ったのは俺だからな。かまわねぇよ。」


「それでは、俺の部屋で。」


寮の自分の部屋にミリオンを案内する。


部屋のソファに座って貰い、自分も彼の目の前に腰かけて。


「何か…飲み物でももらってくるか?俺は何も飲めないんで。食堂の人に頼んで貰ってくるが。」


「気を使わなくていい。それより。相談って?」


「俺はクロードに何かされたらしい。それをクロードの彼女にアイリーンと言う女性がいるだろう?その女性に知れたら、大変な事になると…俺が何をされたのか見当つかないか?」


ミリオンは、うわっ とつぶやいて。


「あの女は怖いからな。良く仕事で世話になっているんだが、なんせ第二魔国の魔王だ。

クロードに対する独占欲も凄くてな…。」


「そういえば、クロードの部屋に忍んできたのを知っている。クロードの魂を支配しようとしていた。」


その時はギルバートやカイルと共に阻止したのだ。


漆黒の髪を持つ、きつい顔をした、それは美しい女だった。


ミリオンは考え込むように、


「魂の支配なら、良く魔族が使う手なんだが、いや、違うな。グリザスがされているのは、魂の分割…その可能性の方が高い。」


「魂の分割?」


「ディオンにさっき会ってきたんだが、お前、襲われたんだってな。アマルゼの呪いの関係の化け物に。その時、聖女やあのオチビちゃん、それからクロードが助けに入ったって…。

もしかして。クロードはお前を助けたいって気持ちを強く持っていないか?」


グリザスは頷く。


「確かに。俺を守りたい…って言っていた。」


「魂の分割っていうのは、魂の半分を相手に憑依させるんだ。

だから、お前がもし、危険な目にあった時、すぐに転移して助けに来てくれるはずだぜ。

危機を感じる事が出来るからな。ただし、リスクもある。


魂が憑依って事は、繋がってしまっているって事だから…。全て聞こえる訳じゃないが、ちょっと心の声が聞こえちまう事があったり…万が一、守り切れずお前が殺されてしまう事があれば、クロードも相当なダメージを受ける。逆にクロードが殺されることがあれば、お前はその時点で命が終わる。

まぁ死霊みたいだから、天に帰るって方が正しいか…


アイリーン様が怒り狂う訳、解るな。この魂の憑依っていうのは、一度やると取れないんだ。

愛する人とやるならともかく、他の相手とやったんだから…。」



「何で俺などの為に、そんな危険を冒して…」


クロードに申し訳なかった。


自分が原因で、クロードに迷惑をかけるような事態になったら。


いや、下手したらもっと大事になるかもしれないのだ。


ミリオンが赤い髪を掻き上げながら。


「ともかく、何が何でも隠すしかないだろ?謝ってすむ相手じゃない。

バレた時は俺も責任持って、お前やクロードの味方をしてやるよ。」


ミリオンは立ち上がると、グリザスの隣に腰掛け、抱き寄せ子供にやるように、グリザスの背をポンポンと優しく叩いて。


「ヨシヨシ。あまり思いつめるんじゃないぜ。お前、剣を持っていないと、お姫様タイプだな…。周りが守ってやりたくなっちまう…男なのに面白い奴だ。」


何かこの間から、子供扱いされていないか?この男に…お姫様タイプって…男として何だか複雑なんだが。



ミリオンが魔法陣を展開し、


「それじゃ、また、来るわ。」


「今日はありがとう。」


転移するミリオンに礼を言う。


彼が転移して帰った後、部屋をノックする音がした。


「どうぞ。」


と言えばクロードが部屋に入って来た。


「聞いちゃいました。お二人の会話。俺の声も聞こえていたみたいですね…。」


「クルシイ…って、言っていたな。何故、こんな事を…俺は姫じゃない。お前自身の危険を冒してまで、守って貰う事はない。ただの死霊だ。」


「友達だからですよ。」


クロードはにっこり笑って。


「俺も…そうだな。フローラも、あ、フローラってこの間会った、騎士団長の婚約者なんだけど。幼馴染でね。お互い、昔から友達って憧れて、大事にしたくて…魔界でもそれなりに友達っていたけど…騎士団の見習いになって、ギルバートやカイルとか、そして貴方が友達になってくれて。

俺、嬉しかったんだ。特にグリザスさんはほっとけなくてね。やっかい事とか色々と巻き込まれるから。守ってあげたいって…。そう思えた。


魂の分割なんてやってしまって、アイリーンを裏切る事になっちゃったけど…俺。アイリーンの事、好きなんだ…。人一倍、頑張り屋で…そして寂しがり屋で…。お互い、意見は対立する事あるけど…とても素敵な女性だと思ってる。

結婚して、子供沢山作って…きっと可愛いんだろうな…。


俺、隠し通せるかな…。自信ないよ…。でも。アイリーンになら殺されてもいいかな…。

でも俺が殺されちゃったら、グリザスさんも死んじゃうよね。第一魔国と第二魔国も戦になるかもしれない…。俺って馬鹿だよね…」


グリザスはクロードを抱きしめて。


「ありがとう。本当に…。魂の分割の事は、辛いだろうが、アイリーンには秘密にしておいたほうがいい。もし、ばれてお前が殺されるというのなら、その時は…俺の命が終わったとしても後悔はない。でも、出来れば、ディオン皇太子殿下の世を見てみたいものだ。


騎士団の方でも一応。俺は正騎士扱いだが、勉学の方ではまだまだ正騎士のレベルに達していない…。

正騎士の勉学の方の試験を受けて、晴れて皆と一緒に正騎士になりたいものだな。」


クロードはグリザスを見上げて。


「正騎士か…見習いの中で、例年だと20人のうち、3人位しか、正騎士になれないんだよね。グリザスさんの指導がいいから、剣技の方はみんな大分レベルが上がったけど。

皆で一緒に正騎士になれるといいなぁ…。」


クロードはグリザスから離れると。


「あ、午後の講習が始まりますよーー。行きましょう。まずは頑張って勉強しないとね。」


いつもの明るいクロードに戻ったようで、グリザスは安心した。


午後の講習に使う本と筆記用具とメモを持ち、二人は寮を出て急ぐのであった。


空は晴れ渡り、冬の青空に雲がぽっかりと浮かんでいた。




クロードの心、結論出ました。ううん。やはりお友達なんですね。フローラもそうなんですが、クロードもフローラもお友達が大好きみたいです。

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