王宮の図書館で…
諦めて、BLタグつけました。限りなく灰色から⇒黒に近づいている。BL疑惑。
グリザスはディオン皇太子殿下から、とある休日の午後、呼び出された。
王宮の広間に出向いてみれば、クロードとフィーネが先に来ていた。
「グリザス・サーロッド、参りました。皇太子殿下、何用でしょうか?」
尋ねてみれば、ディオン皇太子は。
「今度の週末、アマルゼ王国の国王に会いに行く。お前も同行しろ。
クロードとフィーネも同行してもらう。しっかりとお前が背負っている、アマルゼの呪いの行方を見届けるがいい。」
「承知しました。アマルゼの呪いの行方、如何なさるおつもりでしょう?」
疑問に思ったので聞いてみる。
「アマルゼ国王に、マディニア王国と合同の鎮魂祭を提案するつもりだ。我が国だけで、鎮魂祭をやっても、アマルゼの死人達の気持ちは収まるまい。200年前に亡くなった両国の人々を、石碑を建てて祭るつもりだ。両国の国境にでも。」
クロードが進み出て。
「それで、呪いは収まるのでしょうか?下手をしたら呪いの根源が、鎮魂祭を邪魔するかもしれませんよ。」
ディオン皇太子はニヤリと笑って。
「その時は、俺が責任を持って、叩いてやる。話し合いに応じない人間、いや、悪霊とて容赦はしない。」
グリザスは騎士の礼を取り、
「有難うございます。ディオン皇太子殿下、アマルゼの呪いの行方をしっかりと見届けさせて貰います。」
フィーネも嬉しそうに。
「わーい。私も行けるんだ。外に出るのって久しぶりでワクワクする。」
クロードが、フィーネに向かって。
「怖い物が出るかもしれない。大丈夫かな。」
フィーネがニコニコしながら。
「皇太子殿下がいらっしゃるし、大丈夫だもん。怖いのが出たら、いざとなったら、チュドーンするし。」
ディオン皇太子はフィーネを抱き上げて、
「フィーネの出番が無いようにしないとな。」
優しくその髪を撫でる。フィーネも嬉しそうだ。
グリザスはふと思った。
― 子がいないのは、ディオン皇太子殿下は辛いだろうな… ―
王宮から出て、クロードに。
「ちょっと用事がある。先に寮に戻っていてくれ。」
クロードが気にしたようで聞いてくる。
「用事って何です?」
「王宮図書館に行ってみたい…騎士団に入団していれば、使用できると聞いた。
聖女様との事が疑われてから、王宮に行くのを控えていたんだが、どうしても読みたい書物があって…。」
「それじゃ俺も一緒に行きます。」
いつもクロードには気を使って貰って申し訳ない限りである。
王宮図書館は、王宮の中にあって、貴族や騎士団に入団していれば、使う事が出来るのであった。
入り口の職員に、騎士団所属であると申請してから、図書館の中に入る。
凄い量の書物が、整然と整理されていた。
グリザスは困ったように、
「歴史書はどこだ?」
クロードも辺りを見渡して。
「これは凄いですね。ええと…。歴史書、歴史書…」
二人が探していると、歴史書の所で、聖女リーゼティリアが、書物を見ていた。
グリザスとクロードに気がつくと、リーゼティリアは顔を上げてこちらを驚いたように見た。
「あら、グリザス様とクロード。珍しい所で会いますね。」
「この前は魔物に襲われたのを助けてくれて有難う。感謝している。」
リーゼティリアにグリザスは礼を言う。
リーゼティリアは首を振り。
「それなら、クロードとフィーネの活躍が素晴らしかったからですわ。私などは大した力もなく…。」
クロードが慌てて、
「いや、聖女様の癒しの力があってこそですよ。」
リーゼティリアは楽し気に笑って。
「グリザス様…お聞きしたい事が。今、幸せですか?勿論、魔物に襲われたりする辛い事もありますけど…騎士団に入ってよかったですか?」
グリザスは頷いて。
「聖女様…俺は幸せだ…。ディオン皇太子殿下にも感謝したい…。騎士団に入って、本当に生きがいを感じている。有難う…。貴方は俺の神です…聖なるリーゼティリア…」
リーゼティリアの前でひざまづく。
「それは良かったわ。アマルゼ王国には私も同行します。呪いに打ち勝ちましょう。」
それから、リーゼティリアは、グリザスが好きそうな歴史書を選んで、勧めてくれた。
リーゼティリアが図書館からいなくなった後、クロードはしみじみと。
「ほんとに信仰の対象なんですねぇ…聖女様って、グリザスさんにとって。」
「何だ?お前も、疑っていたのか?」
「いえ…貴方から、今、とても爽やかな風を感じますから…。」
ふと、グリザスは、ある女の事を思い出した。
リーゼティリアを火炙りに追いやったあの女…
「何故、あの女が…マディニア王国の王族の祖先なんだ…。祖先でなければ、時をさかのぼってでも、殺してやりたい。」
クロードが考え込むように。
「それも、敵の狙いなのかもしれませんね…。ミリオンから聞きましたよ。過去に引き戻された件、その女を殺せば、マディニア王国の王族が滅びますから…。
敵は貴方と、聖女様と、マディニア王国の王族を憎んでいる…。」
「俺は恨まれるのはかまわん…もう。死んだ人間だ。
だが、聖女様と、ディオン皇太子殿下には生きていて欲しい。」
「俺は…貴方に生きていて欲しいですよ…。一緒に、この騎士団で頑張るって約束してくれませんか?」
誰もいない図書室の、本棚の陰で…
グリザスは何とも言えぬ雰囲気になっていることに焦った。
慌てて言葉を紡ぐ。
「約束しよう。そろそろ寮へ戻ろうか。図書館へ付き合ってくれて有難う。」
クロードも頷いて。
「戻りましょうか…」
グリザスは思った…。気のせいだと思いたい…。
クロードには愛する婚約者がいるのだ。そして何よりも「男」だ…
グリザスは誓った。
今宵は歴史書を読みまくって全て忘れようと。
部屋に籠ると、借りて来た歴史書を、夜遅くまで読みまくるグリザスであった。




