表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の世界の宝石  作者: ぼじょばに
7/23

おにいちゃん観察日記


~おにいちゃん観察日記~


小町ありさ


△月○日 くもり

 

 今日から夏休み。

 待ちに待ったお兄ちゃんとの甘くて淫らな日々の始まりです。

 

 そんな日々の始まりに私の背中を押してくれるような素晴らしいお兄ちゃんの秘密を知ってしまいました。

 

 ナオトさんと遊ぶということで家を出て行ったお兄ちゃん

 これはお部屋に忍び込むチャンスです!

 

 さっそく忍び込む私

 まずはお兄ちゃんの香りが詰まったベットに飛び込みます

 お兄ちゃんの香りに包まれて私は幸せです

 

 一通り堪能した後

 お兄ちゃんのオカズチェックの始まりです。

 隠しているつもりでしょうが私にかかれば秒殺です。

 最近のお兄ちゃんの好みはどうやらグラマラスなおねーさんなようです。

 納得のいかない私はいつものように妹ものの雑誌を代わりに置き

 おねーさんたちには退場して頂きました。

 お兄ちゃんの喜ぶ顔が目に浮かびます。


 満足した私ですがおねーさんたちが収納されていた本棚に違和感を覚えました。

 本棚の奥行きの割に本の収納スペースが少ないんです

 不思議に思い他の段と比べてみたところやはりおねーさんたちの段だけ収納スペースが少ないようです。

 これは何かあると奥の板を調べたところ、右端に指を一本引っかける程の穴が開いているのを発見しました。

 さっそく指を引っかけ引っ張ってみました。

 ぱかっと簡単に板は外れました。

 隠されていたものに私は喜びを隠せませんでした。


 18と印刷されたシールが付いている箱がずらっと並んでいました。

 そのすべてが、タイトルからいわゆる妹ものということが分かったからです。

 私と一つになることをお兄ちゃんもどこかで望んでいるのかと思うとによによしてしまいました。

 この夏こそお兄ちゃんを食べる私の夢がかなう気がしました。




「…」

「どうかしたのかしら?急に黙り込んで?」


 零が意地の悪い笑みを向けてきた。

 俺の手には、


 ~おにいちゃん観察日記~


 なるピンク色の革表紙のゴテゴテしている邪悪なる魔道書が握られていた。

 もちろん俺の私物ではない。

 じゃあ誰のものかって?

 そんなの聞かなくても分かるでしょ?

 名前かいてあったんだからさ。

 俺たちはありさの部屋にいる。

 ここまでの流れを振り返ると、

 後始末を終えた俺はヌルヌルのありさを背負い家まで帰ってきた。

 着替えさせてベットに寝かせた。もちろん俺ではなく零にやらせたぞ。

 その時机の上にあるこの魔道書に目を付けた零が「私を働かせたのだから見返りを要求するわ」と仰り目を通すことになった。以上。


 「誰に説明しているの?」

 「誰にだろうね。ははは」

 「この日記を読めば私から説明すべきことが少なくなると思ったのだけれど、知らなければいい事まで知ってしまったようね」

「ああ、まさかありさにエロゲーがばれてたなんてな」


 しかし、考えてみれば分かったかもしれない。

 確か夏休みに入った頃から俺へのアプローチ法が直接的なものばかりになった気がする。

 露骨なアピールを続けてきた理由にはどうやら俺にも原因があったようだ。


「あなたたち兄妹はそろってアブノーマルな趣味をしているのね」

「うっさい!現実と二次元を一緒にするな!俺のかわいい妹たちは画面の中にいて、現実では妹以外の女の子が好きなんだよ!」

「あんなに食い入るようにありさちゃんのしまパンを見てたのに?」

「ぐぅ…それは」


 言い返せない。謎の光に邪魔されたとはいえ脳内メモリーに再生できるほどガン見していた俺としては。


「まあ、あなたたちの性癖はどうでもいいのだけれどね」


 ならつ突いて来ないで下さい。


「ほら、続きを読みなさい。ありさちゃんが目を覚ましてしまっても知らないわよ」

「分かったよ。読めばいいんだろ。読めば」


 半ば自棄になりページを(めく)っていった。



○月×日 はれ

 

 お兄ちゃんとの甘くて淫らな生活は今日で終わってしまいます。

 明日からは新学期、

 この1月余りのお兄ちゃんに四六時中くっ付いていられる時間は終わってしまいます。

 今年もお兄ちゃんに夏の思い出を刻んでもらえそうにありません。

 寝ぼけているお兄ちゃんに馬乗りになってゆすって起こしても、

 つまづいたふりをしてお胸が当たるように抱きとめて貰った後に上目遣いを送っても、

 乳首を抓んで刺激を与えたりしても、

 なにをしても、

 こいつなにしてんの?みたいな冷たい目線を送ってくるだけで手を出して貰えませんでした。

 今ではその視線ですら私にとってはご馳走だということは秘密です。


 そんなお兄ちゃんですが私には知られていないと思っている秘密があるかもです。

 もしかしたらですがお兄ちゃんは夢玩具に手を出しているのかもしれません。

 確信が持てないのでまだ仕掛けませんが要注意です。

 お兄ちゃんの事は大好きですが   ちゃんのことを考えるならやはりお兄ちゃんに夢玩具を使わせるわけにはいきません。


 もしもの時はお兄ちゃんの記憶を消すしかないのでしょうか?

 あ、でもその場合は私に都合のいい記憶をお兄ちゃんに植え付けてもいいのでしょうか?いえ、むしろ付けるべきなのでしょう!



「…」

「どうかしら。何か質問はある?」

「突っ込みどころ満載だが、この何とかちゃんて誰?」

「リュウジ、あなた字も読めないの?恥ずかしいわね」

「違う読めないんじゃない。理解できないって言えばいいのか?この文字だけなんて書いてあるか分からないんだ」

「要するにそれが文字を読めないってことじゃないの?」


 くすくす笑う零に苛立ちを覚えてしまった。

 文字が読めない訳じゃないんだ。人の名前が書いてあることは分かる。でも読めない。

 ラテン文字とかアラビア文字とか読めない文字で書かれている訳じゃない。

 間違いなく日本語で書かれている。

 でも読めない。この人の名前だけ何故か読めないんだ!


「そんなに恐い顔をしないでリュウジ。その名前はね、読めないことが普通なのよ。むしろ読める人の方がよっぽどどうかしているのよ」

「どういうことだ?」

「そう遠くないうちにあなたにも読めるようになるわ。そうしたら説明してあげる」

「要するに教える気はないってことか」

「まあ、そうね」


 ニヤニヤ顔を向けてくる零。こいつは本当に説明する気はあるのだろうか?

 おっとやばい、心の中とは言えこいつ呼ばわりしちまった!


「大丈夫よ。いつもあなたの心を覗いている訳ではないのよ」


 このタイミングでそんなこと口に出すって絶対覗いてたじゃん!


「じゃあ次の質問、夢道具ってなんだ?」


 ありさの魔道書には突っ込みたい文が満載だが次は夢道具について聞こうと思う。

 何度かこの単語は耳にしたが、何なのか聞けていなかったからな。


「そうね。まずはそこから入った方がいいわね」

「頼む」

「夢を見たことはあるわよね。人には言えない恥ずかしい夢、現実では決してあり得ない怖い夢、訳が分からない意味不明な夢、他にも沢山あるわ。でも人は好きな夢を見られる訳ではない。どうしてかわかるかしら?」

「夢道具が見せてるってんだろ」


 これは、ありさも同じようなことを言っていた気がする。


「そうよ。人が見る夢はね、私たち夢道具が見せてるのよ。でも話はそこで終わりではないのよ。なぜ、夢道具が人に夢を見せているのだと思う?」

「確か、感情を出させるためだったか」

「その通りよ。人の感情は私たちにとってはあなた達が口にする食糧と同じものなの」

「それって夢道具は夢魔みたいなものだって認識でいいのか。例えばサキュバスとかさ」

「流石はエロゲーマー、なかなかに博学ね。その認識でも間違いではないわよ。でも人の味覚と同じで私たちにも好みの味があるから必ずしもえっちな夢からでる感情がほしい訳ではないのよ」

「例えだろ!なんでも卑猥なことに結び付けようとするなよ」

「あらごめんなさいね。でも人の三大欲求を満たすような夢はとっても人気があるのよ。例えるならお米やパンみたいなものかしらね」

「何だよその例え」

「まあ聞きなさい。リュウジもそうだと思うけど食事はパンやお米だけじゃないわよね。そこに好みのおかずも付けるものよね。ふふ、私が言いたいこと分かるかしら」

「あー、なんとなく分かった。夢道具のその日の気分で人に見せる夢を決めてんだな。人が好みで食事をするのと同じように」

「そういうことよ。人の夢に巣食い欲望を食う終わりのない輪廻から外れしものの末路、それが私たち夢玩具。私たちは自らの欲望のために人に夢を見せるの」

「ふーん」


 やっぱりこいつ、言動といい服装といい中二病を患ってるんだろうな。

 ドヤ顔で力説されてもなー。


「それじゃあ簡単な説明も済んだことだし、早速仕事をして貰いましょうか」

「仕事ってなんだよ?」

「そうね、とりあえずありさちゃんの隣に横になってもらえるかしら」


 零はベットの方を指さし俺に指示してくる。

 眠っているからとはいえありさの隣に寝転がるのは嫌な予感しかしない。


「勘弁してくれよ零。ありさも年頃の女の子なんだぜ。兄貴が自分のベットで横になるなんて普通嫌だろ」

「ありさちゃんならリュウジが全裸で横にいようと狼狽えるどころかご褒美になると思うわよ」

「ですよねぇ」


 俺の反論など零の正論で軽く論破された。

 しかし全裸の兄が横にいて喜ぶ義妹ってなんだ。字面だけみると相当正気を疑う行動だよな。


「早く寝てちょうだい。あまり愚図つくようならありさちゃんを起こしてドッキングさせるわよ」

「はいはいわかりましたよ。寝ればいいんでしょ寝れば」


 俺は椅子から立ち上がりやれやれとちっちゃい子の我がままに付き合うお兄さんが如く零に従いありさが横たわるベットに腰を下ろした。

 ありさは小柄とはいえ真ん中よりに眠っているのでシングルサイズのベットではやや狭いが俺は身を小さくして横になった。

 密着しているので強く感じるがありさから女の子特有の甘い香りと柔らかさを感じた。

 いつもおふざけで構ってくるときは気にしなかったが、こいつもいつの間にかちゃんと女性になっていたんだ。


「ありさちゃんも魅力的な女性だって気が付いたようね。エロゲの妹ばかり見てるから現実の義妹に目が向かないのよ」


 いつの間にか俺の横に浮いていた零が俺とありさを見下ろしていた。

 その眼差しは何を考えているのか分からないが俺たちのことを考えてのものだとはわかった。


「で、これからどうすればいいんだ?」

「力を抜いて楽にしていてちょうだい」


 手を軽く振り了解の意を表し目をつぶった。

 今日一日で今年の夏休みよりも濃密な時間を過ごしたな。

 ありさに襲われて零に助けられ、阿部先生に襲われて零に助けられ、それでこれから零に仕事とやらをさせられるわけだ。

 こんな日常が続くならありさが言うように俺の平和な日常は終わっちゃったのだろう。

 でもそんな訳の分からない騒がしい日常も嫌いじゃない俺もいる訳で、きっと俺は笑っていられるんだろうな。零とありさと一緒にさ。


「いってらっしゃいリュウジ。向こうでまた会いましょ」


 俺の唇に湿り気のある柔らかいものが触れた。とたんに眠気が強まり俺はそのまま意識を落とした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ