ぬるぬるな先生のち義妹
「お兄ちゃん、これはどういうこと?」
ありさが目覚めたのだ。
「誘ってるんだよね?ありさに苛めて欲しくてお尻を突き出してるんだよね?」
「待てありさ!目覚めていきなりそれか!他にも言うこといっぱいあるだろ!」
「今ありさの目にはお兄ちゃんのお尻しか映ってないの。ありさの頭の中はお兄ちゃんのお尻をどうやって攻めるかしか考える余裕はないんだよ!」
やばい、こいつの言っていることの意味が分からない!
「もうお兄ちゃんたらホントにドMさんだよね。まさにそう受けの鏡だよ。そんなだからありさの中の悪戯心をいつもピンポイントに刺激しちゃうんだよ」
「ひぃ」
尻を撫でられた!
ソフトタッチで撫でまわしてくる!
「良かったちゃんと感じてくれるんだね。お兄ちゃんが抜けがらにならなくて本当に良かったよ」
「っう」
後ろを向くのが恐くて確認できないが、尻の割れ目に鼻っ面を押し当てるようにして顔を埋めてきやがったぞ!
しかもご丁寧に俺が逃げないようにしっかりと両手で俺の腹を抱きとめてやがるし。
そんなことしなくともうごけないんだけどね。
「お兄ちゃん。信じられないかもしれないけど真剣に聞いてね」
しかもこのまま会話を続ける気なのか!
「お兄ちゃんはお前の行動がすでに信じられないよ」
「兄妹のスキンシップだよお兄ちゃん。それよりさっき泥棒猫に唇奪われてたよね」
「あれは体が動かなくて避けられなかっただけだ」
「そんなことないよ。お兄ちゃんも乗り気に見えたもん。もし普通に動けてても避け無かったよね」
「それは…」
「いいのお兄ちゃん。怒ってはいるけどそれよりも大切なことがあるの。今朝ベットに落ちてたペンダント持ってるでしょ?あれはこっちの世界にあっていい物じゃないの。それどころか必ず持ち主に不幸を呼ぶものなの」
「何言ってんだよ。そんなオカルトみたいな話…あるかもしれないな」
今日あった出来事を思い返し否定できなかった。
「あれはね、夢玩具って呼ばれているものなの」
夢玩具か、零もその言葉を口にしていたけど一体何なんだ。
「夢玩具は人に夢を見せるの。ううん、違う、正確には人が見る夢はみんな夢玩具が見せてるって言ったほうが正しいかな」
「そんなわけないだろ、夢ってのは記憶の整理とかする時に脳が見せるとかなんとかって前偉い人がテレビで言ってたぞ」
「うん、そういうことになってるね。じゃあなんで、夢の内容って目覚めて起きた時はっきりと覚えていないかわかるかなお兄ちゃん」
「それはその、それが夢ってもんだからだろ」
「違うよお兄ちゃん。夢玩具が持って行っちゃうんだよ。その人が夢の中で見て聞いて感じて得た感情と一緒にね」
「冗談もほどほどにしとけよ。マンガやアニメの見すぎなんじゃないか」
「やっぱり信じられないよね。でももうお兄ちゃんも無関係じゃいられないんじゃないかな。あの泥棒猫がお兄ちゃんとキスしちゃったから、本当はありさのものだったはずのお兄ちゃんの初物を…」
忌々しい親の敵でも見たような時発するような声で恨みごとを言いつつ、さらに強く抱きつき俺の尻に深く顔を埋めてきた。
「お、おい、いい加減離してくれよ。逃げないからさ」
「だーめ、唇は取られちゃったけどこっちはまだ初物でしょ?だから先にありさが唾付けとくの」
なんだ俺の尻はそんなに魅力的なのだろうか。もしよければ屁でもこいてやろうか。
ありさといい、阿部先生といい尻に食い付きが良すぎるだろ。
それより零にキスされたことで俺が無関係で居られないってどういうことなんだ!
「それは後でくれてやるから続きを話せ…、もちろん冗談だぞ」
「本当!約束だよ!おっしり、おっしり、おにーちゃんのおっしり、何っが入っるかな」
「なにもはいらねぇよ!」
…冗談とわざわざ付け加えたのに聞こえない振りして力技で口約束したことにされちまった。くそ、うかつだった。
「冗談だからな!」
「続きだったよね。お兄ちゃんはね、あのキスで夢玩具と契約しちゃったんだよ。もうキャンセルもクーリングオフもできないからそこはあきらめてね」
無視して話進めやがったな!
てか、契約?何の話だ。
「契約って何のことだ?」
「簡単に言うと一生付きまとわれるってことかな。それであの泥棒猫のせいで大変な目に会うと思うよ。具体的な内容は口で伝えるより実際に体験した方が分かりやすいと思うからありさからは何も言わないでおくね」
「えーと、それってもしかして俺の平和な日常は終わっちゃったってこと?」
「うん、そうだね。上手いこと言うね。でもお兄ちゃんは遅かれ早かれ夢玩具に関わる運命だったと思うよ。それが今だったってだけで」
「それはどういう…」
俺は言葉を最後まで続けることは出来なかった。
それは、阿部先生が起きたからだ。
ただ起きた訳じゃない。
倒れた状態そのままの姿勢から起き上がったのだ。
つまり、今高橋先生は女の子座りしている。
ぬるぬるの体で、下半身にモザイクを従えて、俺を見ている。
そう、女豹のポーズのまま尻に顔面を押しつけ抱きついているありさがいるこの状態の俺を凝視しているんだ。
「あー、小町、そういうことをするなとは言わない。でも時と場所は考えて欲しい」
「先生、何を勘違いしているんですか!そういうこっとってどんなことですか!」
「え、誰?」
ありさが俺の尻から顔を離した。
本当に俺の尻しか目に入って無かったんだな。
倒れている先生に気付かないなんてな。
「む、お前は小町妹か。兄妹でなんてことをしているんだ!お前らの噂は私の耳にも入っているぞ!まさか本当だったとは!おい、聞いてるのか、何とか言ったらどうなんだ!」
「い、いやー!変態!」
先生の無駄にでかい声に負けないほどのボリュームのありさの声が響いた。
「教師に向かって変態とは何事だ!小町兄妹、お前たちにはたっぷりと先生が説教をくれてやる」
顔ぷるぷると震わせ赤くなった先生は立ち上がろうとした。その姿を見て俺はこの人学習能力ないなと思った。
そして案の定盛大にこけた。
「ぐぁ」
べちゃ、何度目かの粘着質な音が響く。
今度はうつぶせに倒れたようだ。
「っー」
声にならないうめき声を上げている。
どうやら下半身を強打したようだ。
かわいそうに、あの勢いで打ちつけたのだ。相当きついだろう。
「お兄ちゃん、あの変態はいつからいたの?」
苦しんでいる先生には悪いが俺にも変態にしか見えないな。
「ありさが目覚めたときにはこの教室でもう寝てたぞ」
「なにもされなかったよね。だいじょうぶだったんだよね。」
ありさも気を失ってたんだし何かされてないか不安にもなるか。
「もちろんお兄ちゃんが守ってやったぞ」
「違うよ。お兄ちゃんがだよ!」
「俺かよ!」
「おしり掘られてないよね?」
「な、なぜそれを…」
あの出来事を見てきたように尻の話題に触れられたたのでどもってしまった。
早く話題をそらさないと!
「だ、大丈夫だ。掘られてはいない。未遂だよ未遂。それに先生も夢玩具に操られていたらしいんだ」
「それは分かってるよ。そうじゃなきゃ学校に変態なんて湧かないもん」
「そうだよな。それでなありさ、先生の記憶を弄ってやってくれよ。先生が不憫すぎる」
「それは構わないけどお兄ちゃんのお尻の話は後でしてもらうからね」
阿部先生へと向かっていくありさ。
掌には例の光の球が出来ている。
「その液体やたら滑るみたいだから気を受けろよ」
「うん。魔力が込められてるみたいだから普通の液体じゃなさそうだね」
そんなんもわかるもんなんだと感心していると苦しんでいる阿部先生にありさは光の球を投げつけた。
すると呻いていた先生は大人しくなってしまった。
「さ、次はお兄ちゃんの番だよ。詳しく聞かせてね」
一仕事を終え俺に向かってくるありさ。
彼女の眼には獲物である俺のことしか映っていないのであろう。
だから気がつかなかったのだろう。
ローションの水たまりがが背後から襲いかかっていることに。
「ありさ危ない!」
「え?」
めちゃ、粘着質な音が響く。
津波のようになったローションの波がありさにかかった。
「だ、大丈夫か?」
恐る恐る声をかける。
「いやー、お兄ちゃんのえっち。そんなにありさの下着が見たいの?」
濡れたことで透けているブラウスを気にし、両腕で胸を抱くありさ。
…うん、大丈夫そうだな。
「ものすごく滑るみたいだから注意しろよ」
「心配しないでこれでもありさは魔法使いなの。こんなのへっちゃらだよ」
そう言うと躊躇なく一歩を踏み出した。
そして「きゃっ」と短い悲鳴と共に、べちゃっと粘着質な音が響く。
何が大丈夫なのかありさはバナナの皮で滑るみたいにきれいにすっ転んだ。
そしてM字開脚をして捲れ上がったスカートからおパンツが丸見えになってしまっている。
全身ぬるぬるになった結果、色白のおみ足からは粘着質の糸が垂れ、例の添付画像と同じ緑のしまパン もべったりと張り付いていて大変けしからんです。はい。
お兄ちゃんの愚息が反応できたらいいなって思います。はい。
出来ることなら孫の成長を眺めるお爺ちゃんが如く微笑ましく眺め続けたいがそうもいかないよな。
「大丈夫かありさ?」
「…」
返事がない。どうやら、先生と同じく頭でも打って気を失ったみたいだな。
つまり、おパンツの観察をしてもいいってことかな?
いいよね、だってしょうがないよね、俺も未だに腰が抜けてて動けないんだもん。
どうしょうもないよね。
よし、言い訳完了。ガン見開始します!
しかし、いざ網膜にべったりおパンツを焼きつけようとすると謎の光が邪魔をした。
目を凝らそうとも、擦ろうとも、謎の光がありさのおパンツを死守するガ―ディアンの如く消えることはなかった。
まるでアニメのお風呂シーンで不自然に大事なところを守るあれのようだ。
しかし、発見もあった。阿部先生のビックマンモスを覆うモザイク先生とありさのおパンツを死守する謎の光では、謎の光の方がいかがわしさを感じないのだ。
単純にビックマンモスとおパンツではいかがわしさのレベルが違うという訳ではない。
もし逆にビックマンモスが謎の光で消されておパンツがモザイクで消されていたら間違いなくおパンツの方がいかがわしくなってしまう。
液晶越しではなくリアルで見た働く先生たちのおかげで俺はまた一つかしこくなることが出来たな。
「あなたはいつもそんなにどうしょうもないことばかり考えているのかしら」
小馬鹿にする声と共にどん引きした表情で零が現れた。
「お前、また俺を放置して逃げたろ!」
「あらあら、なんのことかしら」
とぼける気か!くそ!意地悪い笑みを浮かべやがって、絶対俺でも遊んでやがるな!
「遊んでなんかいないわよ。ただ私なりにリュウジの事を守ろうとした結果がこうなっているだけよ」
あれ、俺口に出して喋ってないよな?
会話が成立している気がするぞ。
「そうよ。そこで伸びてるありさちゃんが説明してくれた契約の影響ね。私とリュウジに繋がりが出来たからあなたの考えは全て私に筒抜けになるの。でも私の心の中は今のリュウジじゃ覗けないから一方通行ってわけなの」
な、何だって!それじゃあ思春期真っ盛りな恥ずかしい妄想が垂れ流しになっちまうじゃないか!
「ふふ、楽しみにしてるわ」
もうやだ、疫病神に取りつかれたみたいじゃん。
「あまり私の悪口は心の中でも考えない方がいいわよ。私の機嫌を損ねたら寝込みにでもありさちゃんを消しかけさせるわよ」
「ごめんなさい」
「まあ、いいわ。それよりありさちゃんのかわいいしまパンを興味深そうに覗きこんでたわね。あんまりにその顔が気持ち悪かったから光渡しを入れたのだけれど、もしかして見えないことで逆に興奮させてしまったかしら」
「あの不自然な光はお前のせいかよ!それとそんな上級者向けの趣味はねぇよ!」
「お前?そう言えば先ほども何度か私のことをお前呼ばわりしたわよね。私はお前呼ばわりされることはあまり好きではないのよね」
零の顔は笑顔のはずなのに何故か恐怖を感じされてくれる。
目に見えない圧力をかけられているみたいだ。
「リュウジ、あなたの部屋に本棚があるわよね」
「ああ、それがどうした?」
「本棚の奥の板が外れること知っているわよ。その先に隠してあるものってなんでしょうね?」
「は、はは、ななななンの事か全くもってわかりませんな」
何故ばれた!ありさにもばれないようフェイクに次ぐフェイクを重ねた上で隠した俺のトップシークレットが!
「ふふ、その様子だとやっぱりリュウジにとって秘密にしておきたいことのようね。特にありさちゃんにはね。黙っていて欲しい?告げ口してしまっても構わないかしら。」
あかんてほんまにあかん。ありさはんに知られもうたらうち、兄の威厳保てませんわ。
やばい、エセ関西弁が出るくらいマジでやばい。
「調子に乗ってました!!マジすんませんした!」
俺は女豹のポーズのまま勢いでお許しを貰う作戦に出た。
「そういう体育会系なノリも嫌いよ」
作戦は裏目に出てしまったようだ。
見る見るうちに不機嫌ゲージが上がっていく!
常に意地の悪い笑みを浮かべていたのにムッとした顔をしてるよ。
このままではゲージが振り切れちゃうよー。
「どらやきを買ってあげて」
「ん?」
どこかで聞いた事のある懐かしい声が聞こえた気がした。
「今何か言ったか?」
「何も言ってないわよ。リュウジに反省の色は見えないしこれは実力行使に出るしかないわね」
不穏な気配をダダ漏らして零はありさの方へ向かおうとした。
何をする気か分からんがまずいことは分かる。
何とか止めないと!
しかし方法が思いつかない。
こうなったらあの声に従ってみるか。
「どらやき買ってやるよ」
「どらやき!」
するとものすごい速度でこちらに振り返る零。
その顔は先ほどまでの不機嫌な様子も怪しげな雰囲気もなく彼女の見た目に合う幼い子の無邪気な笑顔そのものだった。
いつもその顔でニコニコしていて欲しいものだ。
というか、マカロンとか西洋っぽいもん食ってそうな見た目なのに随分和風なもんに食いつくんだな。
どこぞのネコ型ロボットかよ。
しかし、機嫌は良さそうだ。
攻めるなら今しかない。
「あー、零さん。本棚の事はどうか内密に」
「…」
駄目だ、話を聞いていない。
幸せそうな笑みを浮かべて何処かにトリップしてしまったようだ。
願わくばそのまま何処かに旅立って頂きたいものだ。
「は!リュウジどうして私の好物を知っているのよ!」
御早いお帰りで。
「いや、どらやきを買ってやれって聞こえた気がしたからさ」
「…ふーん、なるほどね。やっぱりそういうことなのかしらね」
「どういうことだよ」
「時期がくればリュウジにも分かるわよ」
零は頬笑みを浮かべて一人で納得していた。
やはり、俺には説明をするつもりはないようだ。
「さて、今日は久しぶりにこっちの世界に出てきて疲れたわ。後のことは任せたわよリュウジ」
そう告げると零は消えてしまった。
「ちょっ、待てよ零。放置すんなよ。せめてこの惨状を片付けてからきえてくれよ」
俺の視界には下半身がコンニチハをしているヌルヌルな阿部先生とおパンツに光がはしっている神々しいありさ。そして、ローションに塗れた床が映っている。
こんなのどうしろというんだ!
「掃除だけ頼んだわよ。そのくらいできるでしょ?」
俺の脳に直接話しかけているかのように姿の見えない零の声が聞こえた。
「掃除しろったって俺動けないんだけど?」
そう、俺は今だに女豹のポーズを続けていた。
「動けるはずよ。魔法は解いておいたもの。」
「へ?」
本当だ!動けるぞ!
…今零が不穏な事を口にしなかったか?
魔法は解いておいたもの?うん?まさかね…
「そのまさかよリュウジ。途中から私が動けなくしておいたのよ」
「またかよ!俺に恨みでもあんの!」
「ふふ、そんなに激しく動いておなかの具合は平気かしら」
そう言えば痛くないぞ!
悶絶するぐらい強烈な一発を腹にくらったはずなのに。
「不思議かしら?リュウジがお尻を突き出してる間に私が治しておいてあげたのよ」
「…普通に治してはくれないんですね?」
「ええ、奇跡には代償はつきものでしょ?」
「そうっすね」
俺は力なく答える。
この短い間に何を言っても俺にはどうすることもできないと悟ったからだ。
きっとこれから先も付きまとわれてしまうのだろう。
あー、誰か助けてください。
しかし、祈りは届かず俺は一人悲しくローションの後片付けをするのだった。
~
零はリュウジを眺めていた。
モップを手に持ち床の掃除をしているリュウジ。
私に対しての不満をぶつぶつ呟くリュウジ。
そんな姿を眺めていた零は不意に呟いた。
「ふふ、安心するにはまだ早いわよ。これから欲望に溺れた夢玩具があなたを狙うわ。現実では彼のように乗っ取った人間を使い、夢の中では夢玩具自らね。でも何も心配することはないわ。今度こそリュウジ、あなただけは私が守ってみせるわ」
誰に聞かせるわけでもないその呟きには、彼女の決意がこもっていた。
この彼女の決意と共に彼の受難に溢れる日々は始まりを告げるのであった。
~