おふろ
「はあぁー、ついにやってしまった……」
俺は湯船に口までつかり、ぶくぶく泡を吹いた。
朝風呂とは贅沢な気もするが仕方がない。
あのままじゃ学校にも行けなかったからな。
ありさは俺がすると言ったが断わり、自室の掃除をしている。
釘を刺したので突入はしてこないと信じ、臭かった俺は風呂に入ることにした。
今までは心も体もありさに反応を示していなかったがこれからは訳が違う。
俺はありさを一人の女性として意識してしまっている。
これは間違いようのない事実だ!
…これが恋なのだろうか……、いや違うはずだ!
妹背さんに感じたものとはまた違う気がする。
ならば……最低な男としての肉欲なのだろうか?
それも違う気がする。
勃起を取り戻したばかりだが、単純に興奮していただけではないと思う。
ありさに口付けをされたとき、最初は戸惑って訳が分からなかったが嫌ではなかった。
むしろうれしかった。
優しい気持ちが胸からあふれ出して、穏やかな心持になっていた。
俺はありさのあの行為を受け入れてしまっていた。
ありさは奇行を働くが、気立てが良く身内びいきなく美人さんだ。
彼女から言い寄られればなびいてしまう男は多いだろう。
もしありさが俺以外の男とキスをしたり、それ以上……
……やめよう、こんな思考。イライラするだけだ。
俺はありさに対して独占欲のようなものを持っているのだろう。
だから、これは決して恋ではないはずだ!そうだろう?零?
「……」
「やっぱりか…」
今朝からそうだった。
零もミズハも呼びかけても応答をしてくれなかった。
まだ寝てるのだろうか?
…そのうちこっちから話しかけなくてもなんか言ってくるよな?気にしないでおくか。
そういえば零が言ってたっけか?夢の世界での出来事は現実に影響すると…
確かにそうだった。現に今も全身ひどい筋肉痛になっている。
今では冗談で語れるが、下手したら死んでもおかしくはなかっただろう。
ありさには安心させるためああ言ったが果たして俺はこの日常を送りつつけられるのだろうか?
零とミズハはもちろんなこと、妹背さんだって同じ夢遊戯なんだ。
協力してもらえば何とか乗り切れるかな。
…いまさらだが俺、夢の世界からどうやって目覚めたんだったけかな?
確か妹背さんが居間にいて、彼女の過去の体験を見て、うん、彼女に魅了されちゃったんだったな。
あ、六花さんと会話してて妹背さんとは会話してないなそういえば!
学校で会えるだろうし、俺から声をかけよう。
「おはよう、俺とともだちになってくれませんか?」
って、驚くかな?でも「よ、喜んでぇ」なんて赤くなって答えてくれるとうれしいな。
長風呂しても、ありさの風呂突入イベントの可能性が上がるだけなので、のぼせてしまわないうちに上がるとしよう。
浴槽から立ち上がり、湯気で曇る浴室を後にした。