妹背エリその6
「……リュウジさん大丈夫なんですか?」
「リュウジは強い子よこのくらいなんでもないわよ」
零はペンダントから出てきてリュウジの顔の前で手を振っている。
「反応がないわね、これ現実世界に帰ってるっぽいわ」
「死んでませんか!本当に大丈夫なんですか」
「しつこいわね。心配ないわよ。それより今がチャンスじゃないかしら。リュウジを犯し放題よ妹背エリさん」
零はエリのブレスレットに話しかけた。
右腕に光る金の腕輪は金の花弁を6つ咲かせ中央に宝石を輝かせていた。
「……エリどうするの、せっかくお邪魔したんだからこんなビジュアルになってますけど手くらい、握ってから帰ります?」
エリの右腕から声が上がった。
「正々堂々と戦いたいですぅ。ありささんがいる現実で」
「あーまあ、ありさちゃんでしたっけ、あの子とんでもないですもんね」
「六花、そういえばありさちゃんどうしたの?家にいないの?」
そういえばと、零は尋ねた。
「実はですね、お伺いしたとき彼女に応対してもらいまして、エリ、気圧されちゃったんですよ」
「こ、こわくはなかったんですよぅ、ただ…」
「ただ?」
「リュウジさんが好きだって、兄弟だとか血のつながりとかどんなわだかまりがあっても、リュウジさんが女性であったとしても、私はお兄ちゃんが好きなんだって、…私のことをお兄ちゃんを犯しに来た強姦魔なんだって決めつけて、リュウジさんへの愛情…いえ、情欲を口走り襲ってきました」
「…ま、まあ、ありさちゃんらしいわね」
「素であれなんですかお姉さま!夢玩具に取りつかれているんじゃと疑いましたよ私とエリは、…よく見た結果も確かに異状はありませんでしたけれど」
「私は負けません!きっとリュウジさんとお近づきになって見せます!」
「あらあら、現実でもありさちゃんがリュウジにベッタリよ。攻略難易度は高いけれどがんばりなさいね」
「ありがとうございます。零さん」
話もひと段落し、落ち着きだしたこの瞬間、二階から叫び声が上がった。
「あー!これ違う!お兄ちゃん!どこにいるの!本物はいずこに!」
バアン!ドアをあけ放つ音が聞こえた。
「ありさちゃん目を覚ましたみたいですね」
「あら、何か魔法でも使っていたの?」
「はい、お姉さま。人肌を持つ極上の肌触りの「小町リュウジ等身大抱き枕」を作成し、魔法によって抱き枕を本物のリュウジさんだと錯覚していただきました」
「なるほどね、いったいそのリュウジは何をされていたのかしらね?」
「さあお姉さま私にはわかりません。喜々として部屋に引きずり、ベットに押し倒したところまでしか見ていませんから」
ドドドドドド、階段を駆け下りる音が聞こえる。
「やばいですぅ。ありささんが来ちゃいますよぉ!逃げましょう!六花!」
「そうですね。また明日、お邪魔しますねお姉さま」
「いつでもいらっしゃい。お茶会でもしましょうよ」
バアン、居間のドアが開け放たれる。
「あ!お兄ちゃんこんなところにいたんだね!私何でか知らないけどこの抱き枕お兄ちゃんだと思ってずっと看病してたんだよ!」
ありさは虚空を見つめるリュウジのみがいる室内に踏み込んでいった。
彼女の持つ等身大リュウジはくたくたになっており、とろどころ湿っていた。
その後、二人のリュウジとありさがどうなったのか知る者はいない。
この夢は、この一日限りのものなのだから。
ありさはうたかたの夢を満喫したことだろう。
次の夢は現実の続き、夢は続くものではないのだから。