妹背エリその5
伝えるべきことを終えた六花は魔法の行使を止めた。
「エリには二面性があります。リュウジさんはどちらもご覧になりましたよね?エリは長い間一緒にいたり心を完全に許した信頼のおける相手以外には、人見知りな態度をとってしまう子なのです。そしてあなたのことを愛しています。」
「「……………」」
2人は無言だった。
「何か反応してください!エリの恋心を覗いたのでしょ!」
あんまりな態度についに六花が怒こってしまった。
エリの肉体はぷくーとほっぺを膨らまし、両手を握り頬の高さくらいまで上げた。
怒ってますアピールだろうが、リュウジの目にはどう映ったのだろうか?
彼は何も申さないまま鼻血を流しだした。
「ちょ!お姉さま!リュウジさんが鼻血を!」
リュウジが首から下げているペンダントから腕が生え、
その腕がティッシュを鼻に詰めた。
みるみる赤くティッシュは染まっていく。
「お姉さま!それ!リュウジさん大丈夫なんですか!」
「問題ないわ、リュウジは耐久力には自信がある男なのよ」
「そうなんですか?」
六花はだんだん不安になってきた。
この男はエリにふさわしい男なのだろうか?
エリが好意を寄せた理由は理解できるし、困っている人に手を差し伸べる好青年だ。
しかしこの男、本当にエリと見た男なのだろうか?
なにかキメているのではないだろうか。
やばい匂いがプンプンする。
「お姉さま、この男性小町リュウジさんで間違いないのですよね?」
「ええ、正真正銘、私の宝石主、小町リュウジよ。癖が強いのが玉に瑕ね」
「強すぎますお姉さま!この男さっきから会話に全く参加してきません!どうなってるんですか!」
リュウジは相も変わらず、鮮血に染まるティッシュを鼻に詰め、スケベ面をさらし、虚空を見つめ続けている。
彼はどこにたどり着くのだろうか?
「こっちも訳ありなのよ六花。私も姉妹たちに協力を仰ぎたかったの」
「お姉さまほどのお方が!何があったのですか!」
「リュウジに罹った呪いをどうにかしたいのよ」
「呪いですか?呪いでこんな風になられてしまわれたんですか?」
「んーまあ、近からずも遠からずね」
「?そうですか、ちなみにどのような呪いに」
「妹と付くものになら性的興奮を覚える呪いよ」
「は?」
「だから妹と付くものになら性的興奮を覚える呪いよ」
「ふざけてるんですかお姉さま!」
「いえ、バカみたいな呪いなのだけど、無駄に強力で私だけではどうにもできないのよ。疑うなら覗いてみればいいじゃない?」
「お姉さまを疑うわけではないのですが確認させていただきます」
六花はサーチの魔法を使った。
呪いの構造が見えてくる。
いびつな魔法陣?いえ、六芒星?お姉さまとの契約を受けて少し焼き切れている部分もあるみたいです。確かにこの呪いは、もとは〃血のつながった妹でしか性的興奮を得られなくなる呪い〃ですが今は〃妹と付くものになら性的興奮を覚える呪い〃になりますね。あーそういう訳ですね。こんな呪い組めるの私たち姉妹くらいのはずです。組んだ本人なら解けるのは当然だし、外れを引いても、あと、解くには二人は欲しいところ、姉妹が四人集まれば、うーん、でも………
「お姉さま!この呪いやばいです!」
「でしょ!そう思うわよね」
「命の危険があるわけではないですけど、魂にこびりついてる汚れみたいなっているのでしょうか?」
「そんな感じよね」
「お姉さまはこの呪いどうやって解くおつもりですか?」
「そうね、力押しでもいいのだけれどね。こういうやつは五乃葉が得意だと思うのよね」
「あー、お姉さま見た目で判断してはいけないんですよ。……確かに得意そうですけど」
零と六花は同じ姉妹を思い浮かべていた。
真っ黒のドレスを身にまとい靴も小物も黒統一、肌だけはやたら白く、真っ黒なお目目はクリッと大きい。そして無口。声がかわいいのにもったいない子。それが五乃葉だ。
「六花も思っていたんじゃない。絶対呪術に詳しいわ。幸い季節は夏よ。今は撒餌にリュウジもエリも使えるわ。きっと釣れるわよ」
「お姉さまそんな邪悪な顔しないでください。エリがちじみ上がってしまいますから」
「そうなの、気弱な子なのね。だから六花がその子に入ってるのね」
「そこまでではないんですが、ちょっとありまして…」
「まー、よくわからないけれど大変そうね」
「そうなんですよ、会話に参加してこないリュウジさんはどう思いますか」
今までペンダントに話しかけていたので気が付かなかったが、リュウジは虚空を見つめ青い顔をして白目をむいていた。