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夢の世界の宝石  作者: ぼじょばに
10/23

ED


 数個の宝飾品が飾られている。

 ただただ広い部屋の中に、

 一つ一つの宝飾品が薄暗い部屋を照している、

 その室内にただ一人、女性がいる。

 水晶を眺める女性はつぶやいた。



 やはりリュウジには記憶はない。

 そんなことわかっていた。

 封印に次ぐ封印、制約と誓約、

 幾重にも折り重なっているのだから仕方ない。

 しかしリュウジは契約を行った。

 記憶もなくほとんど力がない状態で、

 零の力を借りたとしても不可能なはず。

 …ならば別の要因があるはず、


 今少し、泳がそうか。


 そのつぶやきと共に彼女は霧のようにその場から消えていった。



「リュウジ!聞いてるのリュウジ!」


 俺の耳元で零ががなり立てる。


「聞いてるよ、なに」


 俺は汚れてしまった服と全身を公園の水道で洗っていた。

 8月の終わり、まだ夏なのでいいが冬なら風邪をひいていたところだろう。


「この子みたいにこれから救う夢玩具みんなに手を伸ばすつもりなの?」


 零はミズハを抱っこしている。

 つかれたのだろう。よく眠っている。

 あれからひと悶着あり、ミズハが男の娘であったり、零のパンツ丸見え事件があったりしたが、それはまた別の話だ。


「当たり前だろ!夢玩具だって人間なんだろ!どういう経緯でなるか分からないけどさ」


 わしゃわしゃ素手で俺は股座をおもいっきり豪快に洗う。


「そう、あなたがそれでいいなら…まあ、人型をとれる夢玩具なんてめった出会えないのだから構わないかしら。…で、リュウジあなた女性の私の前でその恰好はどうかと思うわよ」


 零は落ち着いたのかいつもの口調に戻り、当たり前の疑問を口にした。

 確かに少し前なら恥ずかしがっていたと思う。

 人払いの魔法を張ってあるから気にせずに全裸で体を洗ったりもしなかっただろう。

 何かが変わったようだ。

 きっと成長したのだろう。


「自己完結してるとこ悪いんだけど違うわよ。リュウジ、呪いって信じる?」

「急に何言ってんの?中二病?」

「…やっぱりやめようかしら。聞いとかないときっと後悔すると思うんだけどなー」


 わざとらしいすねた演技をする零。

 かわいいっちゃ可愛いが、いまいち心に刺さるものはなかった。?おっかしーな。割と俺の好みのリアクションなのにな。


「どう?」

「何が?」

「心に刺さるものがなかったでしょ?」

「まー、確かにそうだけどそれが?」


 俺は洗体を終了し絞っておいた服を着ていく。

 肌に張り付き正直気持ち悪い。

 だがこれだけ熱ければすぐに乾くだろう


「ありさちゃんのこと思い浮かべてみて」

「うーん、うん」


 俺は素直にありさのことを思い浮かべた。

 ロリ巨乳で元気一杯、いつも笑顔で一直線で、

 俺のことならわき目を振らず直進してくる。

 やたらとボディータッチが激しくて、

 いつも獲物を狙う猛禽類のごとき視線を放ち、

 隙あらばベッドに潜り込んで来ようとする、

 そんな義妹のことを俺は家族だと思っている?


 ?、なんだこの胸の鼓動は、まるで俺の永遠の妹「茜色に染める空 ヒロインの瀬長湊(せながみなと)」に出会った時のようなときめきではないか!俺がエロゲの妹以外に恋に落ちる?ありえん!いままで妹たち以外には心を揺さぶられていないのだからな!

 ?、なんだか股間がむずがゆいな。なんだ?

 見下ろすと、テントが立っていた!

 その事実に衝撃を受けてしまった。

 個人的には魔法が使えるようになったことや、ここ数日の出来事をひっくるめても追いつかないほどのものだ。俺は思わず叫んだ。


「俺は!EDじゃ!なかっ!たん!だー!」


 俺の咆哮はご近所に響き割った。平日の真昼間。公園でNGワードを叫ぶ男。

 苦節17年ついに俺にも春が来たんだ!

 ひそかに悩み、人に話せず、剥げてしまうのではと毛根が心配になるほど悩みぬいた問題が解決したんだ!


「これが!叫ばずに!いられるかー!」

「うるさい!インポ!」

「インポじゃないです!ほれほれ」


 テントを零に見せつける、俺の心は無限にはばたいている。


「短小!包茎!服の上からでも匂うのよ!ちゃんと洗ってるの!不潔ね」


 ゴキブリを見つけてしまった時のような顔を向けられ俺ともう一人の俺は大人しくなってしまった。


「ごめんなさい。ずっと悩んでたことが解決したのでつい」

「ごめんで済めば警察はいらないのよ!それに騒いでミズハが起きたらどうするの!こんなに気持ちよさそうに寝てるのに」


 俺にミズハを押し付けてくる。

 確かにかわいい。10人が見たら10人がかわいいという寝顔だ。


「抱かせててもらってもいいか」


 抱っこポーズを取りにやにや顔で問いかけた。


「だめよ変態!濡れた服のあなたが抱いたら風邪ひいちゃうじゃない」


 抱きたくてうずうずしていたが、ひっこめられてしまった。


「まあそうか、?夢玩具も風邪ひくの」

「当たり前じゃない。あなたが言ったはずよ。私たちは元は人間なの。だから人型の私やミズハは寿命がないだけで大体人間と同じよ」

「ふーん、もし俺が現実で死んだらどうなるんだ?夢玩具になるのか?」

「あなたは死んだらそうね、私と契約をしたときの姿でこちらの世界の住人になるわ」

「そっか。そうなんだな」

「?文句をつけてくると思ったのだけど冷静ね」

「俺もバカじゃないので、考える訳ですよ。零が俺についてくれなかったら阿部先生みたいに俺がなっていたかもしれないんだろ?」

「そうね、暴走した夢玩具ならね。でも、私並みに力があって悪意のある人型ならあなたの体を乗っ取ってリュウジに成り代わって生活を送るってパターンもあったわ」

「何それ怖!」

「まあ、ありさちゃんがどうにかしたでしょうけどね。私は悪意があったわけじゃないからありさちゃんも私がリュウジの周りにいても気づききれなかったんじゃないかしら」

「ふーん、なるほど。じゃあもし俺がこの世界から目覚めなくなったらどうなるんだ?」

「先輩としてエスコートしてあげるわ」

「そりゃどーも」


 おざなりに手を振り返事をする。

 立ち話もあれなので俺たちは休憩スペースのベンチにミズハを寝かせ、隣のベンチに腰を下ろした。


 現状整理するとこんな感じか


 内魔法 現実で使える魔法、自らの感情を魔力に変換、使いすぎ注意、使い手、ありさ

 外魔法 夢で使える魔法、空気中の成分を使用、使用料の上限あり、使い手、夢関連者

 夢玩具 夢の世界で人間の感情を食料とするもの(元人間) 善悪複数の主張あり

 夢遊戯 夢と現実を行き来する人間 死ぬと夢玩具になる 俺

 宝石主 宝石に宿る人型の夢玩具の主 人型の夢玩具はとても強いので要取扱注意


「こっちも話し続けていいかしらリュウジ」

「ああ、頼む」

「えーと、どこまで話したかしらね?そうそう、呪いの種類ね」

「と、いうと」

「インポ治ったでしょ」

「…はい、テントを張れました。毎朝ありさが股間を凝視してくるとき、ばれないか気が気じゃありませんでした」

「いらないことまで言わなくていいわよ!まず今までかかっていた呪いについて説明するわ」

「お願いします!」


 俺は前のめりに、聞く体制に入った。


「ひとことでいうと〃妹しか愛せない呪い〃よ」

「はあ」


 これまたドストレート。おれは妹しか愛せない。ラノベにありそうなタイトルだ、あはは。


「これ冗談じゃないわよマジよ。思い当たることあるんじゃないかしら。この呪いあほな名前のわりに思春期男子にかなりきついわよ」


 俺はすぐさま口を開く。


「ついさっきまでEDでした。俺はホモなのかもしれないと悩んだ時期もありました」

「別にあなたの赤裸々なジェンダーまで話さなくていいの!とにかくこの呪いはね、血のつながった妹でしか性的興奮を得られなくなる呪いなの」

「ひ、ひどい、ひどすぎる!人間のすることじゃねえ!」

「まあそれあそうでしょ、恐らく夢玩具にかけられてると思うわよ」

「といてー、呪いといて」


 頭を抱え体をグネグネぐねらせる。


「で、私とミズハの宝石主になったことでリュウジの外魔力が強くなって呪いの性質が少し変わったの」

「どんな風に?」


 ぐねらせたことにリアクションがもらえずともあきらめず体をくねらせる俺。


「紛らわしいからよく聞くのよ〃妹なら愛せる呪い〃よ」

「どう違うの?」

「ありさちゃんで性的興奮を覚えたでしょ?それがヒントよ」


 うーん、なら、ならか…、


「〃義妹なら愛せる呪い〃ってことか」

「何そのピンポイント過ぎる呪い?そんなのありさちゃん位しか使えないんじゃないの」

「は、は、は、…、ありさホントにそれ使えたらどうしよう」


 想像したら怖くなって震えてしまった。

 そんな俺などお構いなしで進行していく。


「答え発表よ、正解は、〃妹と付くものになら性的興奮を覚える〃って呪いよ。今度は範囲が広くなりすぎているから日常生活気を付けて送らないと即豚箱行きよ」

「質問いいか?」

「どうぞ」

「最初の問いとどう関係があるんだ?もともと妹がついてないなら関係なかったんじゃないか?」

「ところがこれがあるの。前の呪いの状態だとあまりにも効果範囲が限られている為か結構抜け穴があったのよ、例えばエロゲーの実妹、突発的なラッキースケベなどなど、体が反応しなくとも心で楽しめるものはたくさんあったと思うの」


 なるほど、納得だ!俺が今まで生きてこられたのも心の栄養補給のおかげだな。

 俺は刻々うなづいた。


「問題は今の段階の呪いなの、一見すると、前より範囲も広いし肉体的な快感もえられし緩和されているように見えるのだけれど、あら大変!ラッキースケベもHなイベントも今のリュウジは妹以外からは何をさせても体も心も反応しないの!」

「そんなばかな」


 俺は鼻で笑ってしまった。

 すると気に障ったのか零が仕掛けてきた。


「物は試しよ。ひざまづきなさい。包茎!」


 突然罵倒されたが俺もやり返す。

「お前は俺のこいつを見たこともないのにそんなこと口に出すな隠語女!」

「ご褒美和欲しくないの」

「ご褒美?」


 怪しく微笑むと零はフリルがあしらわれているスカートの裾をたくし上げた。

 俺はとっさに仰向けに倒れた。頭を打とうが関係がない。

 勃起を取り戻した男子高校生にエサを与えるなど笑止!

 網膜に焼き付けるようにガン見する。

 零はベンチから立ち上がり大股を広げた。

 真下から見上げた俺の網膜には黒のガータベルトにTバック、お尻は丸見え、前の布も面積が少なく素晴らしい。さらに凝視し続ければ筋が見えるかもしれない。

 しばらく見続けた。零が顔を赤くして震えてきた。


「ど。どう分かって貰えたかしら。」

「何が?」

「まだわからないの!私の恥ずかしいところを見たいだけじゃないでしょうね」


 美少女のたじたじ顔、大変好物な俺だがここにきて異変にきがついた。いつも俺の胸から湧き上がっていたパッションを感じられない。零の秘密のカーテンなんて覗ければ1週間は妄想だけで心はたぎり続けていただろうに。全く今の俺の心には刺らなかった。


「うそだろ!あの心のときめきをかえせ!」


 長年連れ添った何か大切なものを俺は失ってしまったのかもしれない。

 勃起という新しい友達の為に。


「リュウジ、あなたそんなにバカだったかしら?中身が変わってしまったくらい思考がピンク一色よ」

「自分ありさの兄貴なんで!」


 俺は断言してしまった。最強のパワーワードを。この言葉はもう覆せないだろう。


「あー、もういいわ、付き合いきれない!まじめな話をしましょ!これからの話よ」


 そろそろこの光景とはお別れか。

 絶景のはずなのにまったく俺に訴えかけてくるものはない。

 男として悲しいよ。


「いつまで茶番を続けるのかと思ってたよ」

「そう思うなら止めなさいよ!いつまで私のパンツ見てるのよ!」


 零はぷりぷり怒るとドッサッとベンチに座わった。

 俺は服が湿っているので落とし切れないどろ汚れをつけたまま零の隣に腰をろす。

 一呼吸をおき零が話し始めた。


「朗報と悲報どちらから聞きたい?」

「朗報からお願いします」

「あなたの呪い、私の姉妹が集まれば取り除けると思うの」

「まじか!俺普通の男子高校生になれるのか!」

「普通の基準が分からないのだけど、性事情のことならそうよ」

「しゃあー!」

「すぐには見つからないと思うわ。長い目で見てほしいわ」

「かまわないさ。一生このままじゃないんだろ?」

「姉妹が見つかればね」


 俺はガッツポーズを全力でとった。


「そんな笑顔のリュウジに伝えにくい悲報ね」

「なるべくソフトでお願いできる?」

「無理よ、リュウジは今後も夢玩具を助けるといったわ。でもねあと一人、それ以上は呪いを解いてからでないとリュウジ、あなた死ぬわよ」

「え?」

「夢遊戯になれたあなたでも限度はあるの、今リュウジは私とミズハの感情、いえ魔力が体中に流れ込んでいるの。それが流れ込みすぎるとその人間はもう夢玩具よ。この世界では意識もあるし生活できるけれど現実では心臓の鼓動が止まるの」

「零が全力で俺に魔力流し込んだら俺ってすぐにポックリ逝っちまうの!」


 零はふふっと笑い俺の頭をなでた。


「契約の絆みたいなものよ。一定量が流れ続けるだけだから意図的にはいじれないの」


 頭をポンポンされる。

 …心を読まれるってやっぱり不便だな。

 何考えるかばれちまう。おどけて見せても無駄なんだな。


「急にこんなことになって怖いわよね。現実だとか夢だとかわけわからないわよね。でも目の前のことから目をそらさずよく頑張ったわよリュウジ。大丈夫、あなたには私がついてるわ、私だけは何があってもあなたの味方でいてあげる。これからもずっとよ。だから無理に笑わなくていいのよ。不安も不満も口に出していいのよ」


 零は俺の太腿に対面で座り、抱きしめてくれた。

 俺は恐怖も不安も負の感情も持っていた。

 何で俺がこんな目にとか思ってた。

 零が現れなければ平和な日常が続いてたのにとかな。

 でもそれは違ってた。

 俺に憑り付いたのが零じゃなかったら俺は今頃どうなっていたのだろうか。

 零は姉妹を探すためって言ってるが俺の為に契約してくれたんだ。

 乗っ取って俺の体を自分のものにもできたのだろうし、


「その手もあったわ!」

「おいおい」


 冗談よなんて言って優しく俺を甘やかしてくれる。

 俺の懐に収まりきってしまう小柄な零からは甘い懐かしい匂いがした。

 いつかは思い出せないが誰かに昔、こうしてもらった気がする。


「もう大丈夫かしら」


 俺の胸に両手を乗せ、見上げてくる。

 俺は見つめ返し答える。


「ありがとう零。俺は大丈夫、不安も理不尽も感じてるけどさ、零が俺を助けてくれるんだろ」

「ええ、私の宝石主(マスター)、あなたの不安も脅威も私が取り除くわ」


 見つめあう俺と零。

 小説とかドラマならキスシーンに入る流れだろう。

 零にならされても嫌ではないし。

 でもそうはならない。

 零が俺に向けてくる感情は恋人のそれとは違う気がするし、俺にも呪いがかかっている為胸の高鳴りが起きないからな。

 でもなぜか落ち着くんだよな。零が近くにいて、触れあってるとさ。

 見つめあう俺たちはふふっと同じタイミングで笑ってしまった。何やってんだろうな俺たち。


「あー、おにいたんとおねーたんがいちゃついてるの。ミズハしってるの、ちゅーってっするの。.みちゃいけないの」


 いつの間にか目覚めていたミズハは両手で目を隠し指の隙間からこちらを窺っていた。

 俺たちはぷいっと互いに顔を背け、下を向く。

 誰にも見られていないなら気にならないが、誰かに見られると恥ずかしい。

 なんなんだろうかこの気恥ずかしさは、穴があったら入りたい。


「まだしないの、まだなの?」


 滅茶苦茶興味津々に覗き見てくるミズハ。


「ミズハ、人様のラブシーンはお口にチャックして黙って覗くものなのよ」


 先に立ち直った零が俺から降り、あってるんだかよくわからない注意をしている。


「わかったの。おくちにチャックなの」


 ミズハはニコニコ笑ってお口にチャックの仕草をした。かわいいなあ、もう。


「?おにいたん、おねーたんどうしたの」


 尊いものを愛でる表情をした零と目が合った。俺も同じ表情をしているのだろう。

 なにはともあれ俺はこの無垢な男の娘を助けたのだ。後、阿部先生も。

 これにて俺の夢の世界の初仕事は無事に終了かな。

 零風に言うなら満点ではないけれど次点で合格くらいの仕事ぶりだったんじゃないかな。

 さーて帰りますかね…今何時だ!

 俺は公園に設置されている時計を見上げた。

 時間は13時を大きく回っていた。

 今日は午前授業、12時30分には終わる。

 下校には10分もかからない。間違いなくありさは家にいる。…やばいな。

 俺はスマホを出そうとポケットに手を突っ込んだ。

 ペンダントとブローチが入っているだけだった。

 机上に充電しっぱなしで忘れて出かけたようだ。

 これはまずい、機嫌をそこねると直してもらうのにかなり無茶ぶりされるからな。

 ご機嫌取りになんか買って帰るか。あ、金一銭もないんだった。

 どら焼きの買いすぎで、女ってやつはホント金がかかるぜ。


「リュウジ、私とミズハは昼食をとってくるわ」

「おいおい、金はどら焼きに使ったからもうないぞ!」

「私の家にお菓子のストックはたくさんあるの。さ、行きましょ、ミズハ」

「うん、おねーたんといくの。おかしなんてすごくひさしぶりなの!」


 零に手を引かれたミズハはしゃいでいる。

 にしても家ってどこのあるんだ?


「リュウジ、ペンダントをだしなさい」

「ああ、ちょっと待ってくれ」


 ごそごそポケットから取り出した。


「これが私の家よ。リュウジの家より中は広いのよ。今度あなたも招待してあげるわね」


 零とミズハがペンダントに触れると二人はペンダントに吸い込まれてしまった。


「すげー、二人とも消えちゃったよ」


 俺はペンダントを掲げて日の光に照らしてみた。

 このペンダントも宝石(アンティーク)ならこの石も宝石なのだろうか?何の石なんだろうな?


「おにいたん、きこえますか?きこえたらおへんじくださいなの」 


 頭の中に直接語り掛けられたようにミズハの声が聞こえた。

 零と同じで契約の影響で一方的に意思疎通ができるようになったんだろう。

 どうしたんだ?零に何かご馳走になってるんじゃないのか?


「そうなの、えーと、ざっはとるてっていうの?しっとりしててあまあまなでとってもおいしいの」


 いいなー、俺も食いたいなー。ザッハトルテ、横文字のカッコ良さだけでどんなくいもんかよくわかんないけど。


「ペンダントは首にかけるものよ。着けときなさいリュウジ、首からかけてもらえれば私たちもここから外の様子が見られるのよ」

了解、女もんじゃなくてよっかたよこれ」

「その時はあなたが合わせなさい」


 俺に女装をしろと!似合わんぞ!


「案外悪くないかもしれないわよ。阿部先生っていったかしら、先生にまた襲ってもらえるかもしれないわよ」


 冗談じゃねえよ、変なこと言うから鳥肌が立っちまったじゃねえかよ


「おにいたんとおねーたんとってもなかよしなの」


 ミズハとだってなかよしだぜ、一緒にパパを見守っていくんだろ


「そうなの、ミズハぱぱにもあいたいの!おにいたん!こんどぱぱのところにつれてってなの!」


 学校に行けば会えるんだから張り切らなくて大丈夫だよ。現実で連れってってやるからな


「ありがとうなの、おにいたん。おにいたんもぱぱもおねーたんも大好きなの」


 俺も好きだよ。ミズハ。

 声は聞こえてこないが零は萌え悶えていることだろう。

 ミズハの仕草や笑顔は男女関係ない愛される尊いもんだからな。


「早く帰らなくていいのリュウジ、歩くペースが遅いわよ」


 全身バキバキなんだよ。しょうがないだろ、ちょっと動かすだけでいてーんだからさ。


「あれは私も正直ビビったわよ。突然大柄な黒人が乗り込んできたんですもの。リュウジは魔法のセンスが斜め方向にズバ抜けてるわよね」


 あれは必死だったから出来たからな、全身筋肉痛になるからもしたくないけどさ。


「そう、まあいいわ、私はMP不足だし、ミズハも食べたら眠そうにしてるからしばらく休憩してるわね。今日はお疲れさま。初めてのパトロールにしてはハードだったけどどうだったかしら?」


 ぼちぼちだよ。これからもよろしく頼むよ相棒。


「任せない、それじゃあ寝るわねお休みなさいリュウジ」


 おやすみ零、よい夢を

 …ミズハも寝てたし夢玩具ってねるんだな

 俺も疲れたし帰ったら寝るかな、あれ俺って睡眠とるとどうなるの?


「現実に戻るわ」


 …現実で睡眠とると?


「夢の世界にくるわよ」


 俺って睡眠とれないの?


「大丈夫よ、肉体はちゃんと睡眠をとってるわ。魂は休みなく人の何倍も働かないといけないのだけどね」


 それなんてブラック企業?

 夢遊戯になってそれが一番きついよ。俺寝るの好きだったのに。


「あまりお勧めしないのだけれど、限界を迎える前に私の家に招待するわね。この空間なら夢遊戯も睡眠をとれるのよ」


 なら今入れてくれよ。すぐねたい。


「まだ駄目よリュウジ、この空間で夢遊戯が寝ると平気で何週間も眠り続けるのよ。魔力が回復したら何とかしてあげるからあなたはありさちゃんのご機嫌取りでもしてなさい。もう寝るから話しかけないるんじゃないわよリュウジ」」


 了解、零は寝れない俺に付き合おうって気はないわけね。

 きて、一人寂しく帰りますか。

 痛む体に鞭を撃ち家路につく。

 家にはおそらくご立腹のありさがいる、どうしますかね。

 快晴の日差しに視線にちらつく謎生物、謎生物をつける人々、この光景が俺の日常になっていくのだろう。いったいこれはなんてラノベなのだろうか。

 作者がいるなら泣くまで殴りってやりたい!

 でもこれが俺の生きていく日常なんだからな。

 零もミズハもありさもみんないるからつらくても俺も笑って過ごせるよ。

 父さん母さんあの事故で俺だけ生き残っちゃたけどさ、今俺楽しいよ毎日、そっちに…いけなくなっちゃたみたいだし、近々顔見せに零とミズハを連れていくよ。

 おセンチになってもいいことないしとっとと行きますか。

 乾いてきた汚れたパーカーを腰に巻き俺は歩き続けた。


ED(END誤字)×

ED(男の病気)○

ある意味タイトル詐欺でした。

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