表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者が多すぎて異世界に転生できなかった俺は、他人の転生を阻止することにした  作者: 最上碧宏
第1章 転生を阻止するだけの簡単なお仕事
5/70

4:異世界はもう満員です

「……は?」


 我ながらなんと間抜けな声だ。

 ブリュンヒルデは平静に、まるで授業のような口振りで、


「あたし達ヴァルハラはね、死んだ勇者エインヘリヤル達の魂を集めて、いつか来る終末ラグナロクに備えて鍛え上げるための組織なのよ。分かる?」


 ……聞いたことある。なんとかプロファイル。


「で、まあ、訓練の一環として、色々な世界に勇者エインヘリヤルを送り込んで、活躍してもらってたわけ」

「それが異世界転生?」

「そうそう。でもね」


 ブリュンヒルデは急に疲れた顔で、肩を落とす。


「もう勇者エインヘリヤルの頭数は十分なのよ。この前の戦争で十分足りちゃってるっていうか、むしろ救う異世界の方が足りてないっていうか。そもそも地球人口増えすぎ。いくらヴァルハラでもキャパってのがあるし」


 今度は突然顔を上げたかと思うと、そのままグチグチと、


「しかも最近多いのよ。現世でダメだったからコッチで頑張ります! みたいなタイプ。あんまり言いたくないけど、まずは現世で数字出してからにしてほしいのよねー。前線でキルスコア100、指揮官クラスなら20000は超えてもらわないと、やっぱどこ行ってもポストが無いのよ。狭き門なのよ」


 段々世知辛い話になってきたぞ。転職か?


「ええと……死人が多すぎて、転生の……枠? が余ってない、ってこと?」

「そうそう、そういうことなのよ。肝心の終末ラグナロクはいつになっても来ないし、転生待ちの勇者エインヘリヤルは増える一方だし、ヴァルハラは住環境悪いから色々文句も出るし、なんなら犯罪とか起きちゃってるしね? 死後の世界にも治安維持が必要って、もう何なの? お前ら死んだんだから大人しくしてろよ! みたいなさぁ」


 なんかちょっとかわいそうになってきた。

 見た目は『精悍な女騎士!』だけど、言ってることが……お役所っぽい。


「……なんか大変なんだな、ヴァルキリーって」

「ここからがもっと大変よ」


 何故か拳を握りながら、ブリュンヒルデ。


「増えすぎた勇者エインヘリヤルの管理に困ったオーディンのオッサンが、こっちに無茶振りしてきたわけ! 『運命を改竄し、死者を減らすのだ』ってさあ」


 ぶんぶんと拳を振って。


「こちとら『戦死者を選定する者』だっつの! 死んだ後のお世話が仕事だから! 死人減らすとかお門違いもイイ所だかんね!? ね!?」

「あ、う、うん。そうね。大変だね」


 ブリュンヒルデの鬼気迫る表情に、思わずたじろぐ。


 そろそろ分かってきたぞ。

 ブリュンヒルデは、顔立ち自体は凄まじく整っているのに、百面相のせいで妙な愛嬌を漂わせている。

 なんというか……そう、いわゆる残念美人といえばいいのか。あとおっぱいが無い。


「という訳で。現世に直接干渉できないあたし達(ヴァルキリー)の代わりに、君みたいな転生阻止者フィルギアが必要なのよ」


 ぽん、と肩を叩かれて。


 俺は咄嗟に言葉を返せなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ