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転生者が多すぎて異世界に転生できなかった俺は、他人の転生を阻止することにした  作者: 最上碧宏
第3章 連続殺人犯の転生を阻止せよ!
47/70

46:誰が一番悪いのか?

銃口から吐き出された弾は、俺の手のひらで火花を散らしながら潰れていった。


「忌々しい手品だ、ガキめ」

「槍度島は、これから死ぬより酷い目に遭う。槍度島を野放しにしてた警察もズタズタになる。目的は果たせたろ」


エザワはしつこく銃爪を弾いた。

その都度、放たれた銃弾は潰れていく。


「コイツはオレが殺す。それだけだ」

「……その後は?」


銃声が止む。

弾が切れたのか。それとも、エザワが手を止めたのか。


「全てを終わりにする」


エザワが口にしたのは、『死の運命』。

それこそ、ウルザブルンが予知した結末。


俺が止めなければいけないもの。


「そういう訳にはいかない。お前は死なせない」

「オマエは、どうしたいんだ? 銃弾も効かない無敵の力で、被害者も加害者も、全員の命を助けて、それで満足か? 博愛主義の神様気取りか?」


俺は笑った。


「そんなにいいヤツに見えるか?」

「悪党ぶるのはやめろ。……オレはあの人を守れなかった。あの人がいない世界には、いたくない。それがオレの望みだ」


エザワの目は、妙に静かだった。

まるで死を前に、悟りを開いたみたいな。


「じゃあ何か? 今度はお前が、センセーを置いていくのか。お前に惚れた人を」

「……ただの同情だ。彼女の人生に、オレは必要ない」


俺はエザワの拳銃を掴み取った。

生身だったら火傷しそうなほど熱くなった銃身。


「確かにお前は恋人を守れなかったヘタレで、怒り狂った復讐鬼で、人間を死ぬまで拷問にかけるサイコパスだ。でも、お前がやったことに、救われた人がいる。価値を見つけた人がいる」


銃を奪って、放り捨てる。


「お前に希望がなくても、お前に希望を見出した人がいるんだよ」


エザワの表情が、にわかに強張った。

凪いでいた瞳に、火が灯る。


「黙れ。これ以上邪魔するなら、今度こそ殺す」


宣言とともに繰り出されたエザワの拳は、俺の顎を見事に捉えた。


もちろん仮の肉体(ウイルド)は、脳震盪なんて起こさない。

でも、俺は後ろに退いた。


「ケッ、やってみろ! 自分のパンチは銃弾より強いって自信があるなら、な!」

「抜かせ、ガキが」


やっぱりエザワにはチート能力なんて必要ないんじゃないか。

そう思うほどのフットワークとパワーだった。

油断したら、疾風迅雷ライトニングスピードで強化した動体視力でも追いきれないかも。


「どうした、エザワ! まだ俺は死なないぞ!」


怒涛の攻めを受け流しながら、俺はじりじりと後退していく。

ロイヤルスイートが誇る、四方津湾を一望する大窓へと。


「俺を殺さなきゃ! お前は死ねない!」

「うるさい、黙れ、黙れ――」


エザワの手が、俺の首を捉えた。

窓ガラスに背中を叩きつけられる。


当然、強化ガラスなのだろうけど……残念ながら、仮の肉体(ウイルド)よりは頑丈じゃない。


「死ねッ、死ねッ、これで、全部、終わりだ、全部、全部、全部――ッ」


何度もぶつかるうちに、白くひび割れていくガラス。


「そうは行くかよ」


俺は呟いた。


そうだ。終わらせない。

俺は自分のやりたいことをやる。


そのためなら、エザワの人生なんて知ったことか。


「落ちろォ――ッ」


一際強い衝撃とともに。


俺は、宙に放り出された。

でも、降り注ぐガラスの破片の中、エザワの腕だけは掴んで離さない。


「クソ、オマエ、はな、せェェェェェェッ」

「嫌だね。お前は、絶対に、死なせない」


そうして。

四方津湾の海面に叩きつけられるまで、エザワ・シンゴはもがき、叫び続けていた。


腹の底に溜まっていた絶望を吐き出すかのように。


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