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転生者が多すぎて異世界に転生できなかった俺は、他人の転生を阻止することにした  作者: 最上碧宏
第3章 連続殺人犯の転生を阻止せよ!
29/70

28:ギャルと未亡人(推定)の間で何故か修羅場

話を少し戻そう。


十一人の人間を拷問の末に殺害した、現代のエド・ゲインことエザワ・シンゴ。

(エド・ゲインが誰かって? ググってくれ)

『彼を死の運命から救う』なんて厄介なクエストがやってきた時。


俺はどういう訳か、家の近所のスーパーでギャルと未亡人(推定)に挟まれて修羅場中だった。


(待て待て待て、どういうことだコレ、おかしいだろ)


俺はただ、メゾン・ヴァルハラの寮母(?)である優香さんの手伝いで、近所のスーパーまで荷物持ちに行っただけだ。


「……キヨミくん?」


そして、そこでバッタリあの子にあっただけなんだ。


「ああ、えっと、カレンさん」


アンドウ・カレンさん。

転生阻止者フィルギアとなった俺が初めて助けた転生候補者。

金髪にがっつりメイク。とってもかわいいギャル。


そういえば連絡先もらってたっけ。

俺としたことが、ずっとドタバタしてたから完全に忘れてたな……


「え、キヨミくん、買い物? てか、この辺住み?」

「うん、まあその、荷物持ちっていうか」

「あらあら。清実くん、どうしたの?」


立ち止まった俺に気付いた優香さんが、引き返してくる。


(……ん?)


その瞬間、何か妙な空気が生まれた気がした。

気のせいだよな。もしくは俺の自意識過剰。


「あら清実くん、こちら、お友達? かわいい子ねえ」

「あ、どーも。えと、キヨミくんの……お姉さん? え、マジで? すっごい美人じゃん!」


おっと。そうじゃないそうじゃない。

でも待て。

どう説明するのがいいんだ、これは。


「あー、優香さん。こちらはカレンさん。お友達……知り合い? みたいな」

「なにそれ。え、ウチそういう扱い?」

「えっ。いや、悪い意味じゃなく」


なんでいきなりキレるんだ。変なこと言ったか?


と。

カレンさんはいきなり腕を絡めてきて、


「ウチ的には、キヨミくんは命の恩人だし、顔カワイイし、ケッコー運命感じてんだけどぉ」


あー。運命が絡んでるのは間違ってないけど、そういう意味じゃない。

あとね、スゴい柔らかいし良い匂いするしドキドキするからやめて。ホントやめて。


「あら、あらあら、まあ、そういう? そういうこと?」

「そーなんです、お姉さん」


なんでニコニコしてんの、優香さん。

ていうか二人で話を進めるな。


「あの。カレンさん、こちらは優香さん。姉じゃなくて、えーと……寮母さん、みたいな」


確かに優香さんみたいな姉がいたらいいな、とは思うけど。

一応言っておくが、俺の本物の姉とは似ても似つかない。

アイツは地獄の化身だ。悪魔の生まれ変わりだ。


「あ、そうなんだ? キヨミくん、寮住みなの?」

「ええ、少し事情があって……私達、共同生活をしているんです。ね、清実くん?」


なんで含みのある感じに言い直したの、優香さん。

せっかく一番無難なワードで誤魔化したのに。


「……はぁ? え、ごめん、詳しく聞いていい?」


ちょっとカレンさん痛い、腕が痛い、めっちゃ絞めてるでしょ痛い。

おっぱいが当たってるとかそういう次元じゃない。

肋骨。めりこんでる。


(おいおい、勘弁してくれ! ラブコメかよ)


言っておくが、俺の夢はあくまで「異世界転生してのんびり田舎暮らしでハーレム」であって、「現実世界でギスギス三角関係」ではない。

おっぱいの大きいエルフとかおっぱいの大きいケモミミとかおっぱいの大きいドラゴンとかに取り合われたいのだ。あわよくば一夫多妻制で俺だけのパラダイスを築き上げたいのだ。


(ギャルと未亡人(推定)の板挟みは、俺には荷が重い……)


そもそも俺、どっちとも付き合ってないっつーか!(いや美人だとは思ってるけど)

言うほど美味しい思いもしてないっつーか! 畜生!


「あのー、清実さん。お時間よろしいですかー?」


不意に呼びかけられて。

俺は危うく叫び声を上げるところだった。いやもうほとんど上げてた。


「……お取り込み中でした?」


女神スクルド。

運命の三姉妹(ノルニル)が一柱にして、新たなクエストを俺のもとに届けてくれる連絡係である。

サイズの合わないローブを纏った美幼女が、いつの間にか俺の足元に立っていた。


「あら。スクルドちゃん」

「……は?」


優香さんの言葉に、カレンさんが眉根をひそめる。

そりゃそうだ。文字通り生きている次元の違う女神は、普通の人間には見えない。


「あらあら、ごめんなさいね、カレンさん。急用を思い出したわ。行きましょう、清実くん」


ナイス助け舟です、優香さん!

と、思いきや。


何故か彼女は、俺の手を握って歩き出す。

やめろおおおおお、事態をややこしくするなああああああ。


背中にドッスリ刺さるカレンさんの視線に耐えながら、俺はなんとか駐車場に停めてあった車に戻った。

ふう。どうにか致命傷で済んだぜ。


後部座席に座ったスクルドが、首を傾げながら。


「わたし、間が悪かったですかねー?」

「そうねえ。あと少し早く来てたら、清実くんがワタワタしてる、かわいい顔が見られたかも」


おい。

やっぱり、わざとやってたのか優香さん……畜生、とんでもないドS未亡人(推定)だな!アレか、『我々の業界ではご褒美』ってヤツか!


「心臓に悪いんでやめてください、優香さん……で、スクルド。新しいクエストか?」

「ええ、そうなんですけど。ブリュンヒルデはどこですかー?」


助手席でシートベルトを締めながら、俺は溜息を吐いた。


「一昨日から続けてた洋ドラ三十時間マラソンをやり遂げて、満足そうに寝てるよ」


しかも何故か俺の部屋で。

ちなみに俺は十八時間でギブアップして、その後、十二時間寝た。

エスパー少女がラリってアメコミヒーローと一緒にメキシコの大麻畑を焼き払って大統領に表彰される夢を見た。死ぬかと思った。


「相変わらず、たるんでますねえ。フレイアさんに告げ口しようかなー」

「そうだな、それがいいと思う」


俺達がブリュンヒルデの悪口を繰り出している内に、優香さんが車を発進させる。

TVモードのカーナビから、昼下がりの情報番組が流れ始めた。


「それでですね、今回の転生候補者なんですけどぉ」


スクルドが手元のハンディ・ウルザブルンをこちらに差し出してくる。

浮かび上がっていたのは、若い男の顔写真。


「エザワ・シンゴさん、二十歳。四方津市内の大学に通う、男性の方ですー」

「……ん?」


どこかで見たことあるぞ、この顔……


「あらあら。それって、この人のこと?」


優香さんがカーナビのモニターを指す。

映っているのは、エザワ・シンゴの顔写真。


そして脇に添えられた、『十一名を殺害した容疑で指名手配』のテロップ。


「……嘘だろ」


俺は、思わず呟いていた。


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