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転生者が多すぎて異世界に転生できなかった俺は、他人の転生を阻止することにした  作者: 最上碧宏
第2章 美少女JCコスプレイヤーの転生を阻止せよ!
25/70

24:俺、完全に悪役なんですけど

ウノハラ・シノブさんは、倉庫の中二階に立つ俺と、一部始終をとらえていたビデオカメラを睨みつけると


「……どこの組の人間だ?」


一段低い声で、そう訊ねた。

てか、俺の方こそ訊きたいよ。


(あなたこそ、完全に刑事じゃなくてアウトローでしょ。拷問手慣れすぎじゃね?)


でもまあ、そうだよなあ、やっぱそう思うよなあ。

不祥事を撮影して刑事脅そうなんて、完全にアウトレイジな方々の手だもんね。


(まさか誰も、俺が善意の魔法使い(・・・・・・・)だなんて思わないよな)


着てきてよかったスカジャン。刺繍が重くて、肩こるんだコレ。


「まあまあ、心当たりはいくらでもあるんじゃないですか?」

「私を脅迫するつもりか」


シノブさんが、顎でビデオカメラを示した。


確かに、これには彼女がツゲタニ・ユウスケくんをぶん殴っている動画が収められている。

『現職の刑事が殺害予告犯を私刑に!』

なんて、動画サイトで流すには格好のネタだと思わない? 俺もいよいよチューバーデビューかな?


「やだなあ、怖い顔しないでくださいよ。俺はあなたと仲良くしたいだけですから」


あはは、と笑ってみせる。

うん、俺、今めっちゃ悪役だな。薄い本の導入に出てくる男だな。


「……何が望みだ」

「そこにいる馬鹿で間抜けな殺害予告野郎、俺も大嫌いで死ねばいいとか思うんですけど、とりあえず開放してもらっていいですか?」


シノブさんが沈黙する。

こちらの目的を計りかねているのだろう。


(俺だって分からねえよ)


誰が好き好んで、ユウスケくんなんかのために、警官を脅そうって考える?

リアル警官なんて、ネットでイキってるヤツの二百倍は恐ろしいぞ。


「…………」


シノブさんは懐から出した折りたたみナイフ(って、えええ、そんなものまで持ってたの、超怖いんですけど、何この人)で、ユウスケくんの拘束ケーブルを切った。


「は? え? な、なになになに?」


開放感からか、意味不明な言葉を放つユウスケくん。

もう黙っててほしい。


と思ってたら、シノブさんが椅子ごと彼を蹴り倒してくれた。ありがとう。

ユウスケくんは、折れた足を抱えて床をのたうち回る。


そんな彼に、シノブさんは拳銃を突きつけた。


「カメラを持ってこい。でなければ、コイツの脚にぶち込むぞ」


警官の銃じゃない。ヤクザ映画でよく見るヤツだ。

足がつかないように使い捨てなのか。


(やっぱそう来るか)


流石に目論見が甘すぎたか。

結局、手荒な真似に出るしかないのか。

ああもう、畜生、なんでこんな危ない橋を渡らなきゃいけないんだ。


「別に渡してもいいんですけど、その前に動画アップしちゃってもいいですかね?」


俺はスカジャンのポケットからスマートフォンを取り出して、ビデオにつなぐ。

もちろんアップするつもりなんかないんだけど。


しかしシノブさんの手は早かった。

いつの間にかもう一丁が、こちらに向けられている。


(んなバカな……早撃ちガンマンかよ)


しかも、ユウスケくんの鼻先に銃弾を打ち込んで、


「持ってこい。次は無いぞ」


さて、どうしたものか。

ユウスケくんの脚が、穴だらけのリコーダーみたいになっちゃうのはかわいそうだ。流石に。


「分かった、分かりましたよ。渡します」


言って、俺はビデオカメラを一階に蹴り落とした。


「こっちまで取りに来てくれたらね」


そして、後腰に挟んでおいた拳銃を取り出す。

もちろん、部屋においてあったコスプレ用のモデルガンだ。

ダイ・ハードでブルース・ウィリスが使ってたヤツ。


「…………」


シノブさんは無言のまま、照準を外さない。


オイやめろよ、この人マジでターミネーターか何かじゃないのか。


「ちょっとちょっと清実ちゃん、大丈夫? 全然交渉進んでなくない?」


耳元でブリュンヒルデの声。俺も小声で応じる。


「あー……正直、シノブさん甘く見てた感あるわ」

「あの目つき、あたし知ってるよ。本物の戦士。生まれる時代を間違えたね、あの人」


だろうな。ヴァルキリーからもお墨付き。

この人に比べたら、俺なんかその辺のチンピラだ。


とにかく、この膠着状態をどうにかしないと、俺はともかく哀れなユウスケくんがどえらいことになってしまう……


その時。


まるで福音のように、着信音が鳴り響いた。


「――――!?」


シノブさんのスマホから――そしてもちろん俺のクローンスマホからも。


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