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転生者が多すぎて異世界に転生できなかった俺は、他人の転生を阻止することにした  作者: 最上碧宏
第1章 転生を阻止するだけの簡単なお仕事
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1:チート能力は条件付きで

 気付けば俺は、見たこともない場所に立っていた。


 見渡す限り真っ白で、自分以外には誰もいない。

 まるで神様が手抜きをしたみたいな空白だけが広がっている。

 いわゆる死後の世界というやつか。


「聞こえますか?」


 女の声が、だだっ広い空間に響く。


(来た)


 俺は心の中でガッツポーズを決めた。

 知ってるぞ。見たことある。

 不慮の事故で死んでしまった哀れな魂に、第二の生を与えてくれるやつだ。


「聞こえてる。あんた誰?」

「概ね、あなたが考えている通りですよ」


 話が早いのは向こうも同じだった。

 一瞬の光が走り、女が姿を現す。


「初めまして。私はフレイア。あなた方が言うところの神です」


 言われなくても神としか思えない。

 とんでもない美女。

 星を散りばめたような長い金髪に、透き通りそうなほど白い肌。

 そしてメリハリが効きまくったプロポーション。

 しかも身につけてるのは、柔らかそうな薄布だけ。


海良寺清実かいらじ きよみくん。十七歳、市立四方津高校二年。帰宅部。両親は健在、姉と妹が一人ずつ。趣味はゲームと読書、好きな食べ物はかた焼きそば……」


 このファッションは殺傷力が高すぎる。童貞でなくても死ぬ。


 ていうか、これもう裸じゃないか。

 薄布、透けてるし。微妙に見えそうで見えない――と見せかけて実は見えてるような――むしろ全裸よりすごいんじゃないコレ。


「……ちょっと」


 ヤバい。すごい。おっぱいすごい。

 女神じゃなければ他の何か危険な存在じゃないか。

 悪魔とか。


「ちょっと! どこ見てるんですか、もう! 私、神ですからね。降しますよ天罰。ていうか、もう少し畏れ敬ってください」

「すいません、なんか……いや、神なのは分かるんですけど」


 あまりにも全てが整いすぎていて現実感がないというか。

 もしかするとこれ夢なんじゃないの、って気がしていて。

 エッチな方の夢。


「残念ながら現実です。本当はあなた、助かる予定だったんですけどね。ちょっと手違いがありまして」

「……え、じゃあ、謝罪と賠償を要求してもいいの?」


 やったぜ! エッチなやつだ! と俺は心の中でガッツポーズを取るが。


 フレイアはニッコリと笑った。


「清実くん。あなた、アレでしょう? チート能力とか欲しいんでしょう?」


 あ、そっち。

 うん、そっちの方でもいいです。


 ていうか人の命は地球よりも重いんだぞ。チートだけじゃ足りないんだからな!

 ついでに異世界での穏やかな暮らしとハーレムもください。


 口には出さなかったけれど、多分フレイアにはバレているのだろう。

 さっきから、俺の言葉よりも思考に反応しているように見える。


「清実くんはアレですね。だいぶ俗物ですね」


 案の定、憐れむような目。

 自分で聞いたくせに。


「うるさいな。女神に比べれば、みんな俗物だよ」


 大体、お前が生み出したんだろう、地上の生き物は。


「まあ良いわ。あげますあげます、チート能力。条件付きですけど」


 思った以上にぞんざいな感じで、フレイアが手を差し出す。


 手のひらから湧き上がったのは、白い光の球。

 目を凝らすと、何か輝く文字のようなものが凝縮されているのが分かる。


「それに触れば、俺もチート獲得ですか?」

「話が早くて助かります」


 ところで、条件付きってなんですか。

 ていうか、どんなチートがいいとか、選べないの?


「いいから早くしてください。どうせもらうんでしょ? 大丈夫ですよ、今流行ってるやつですし。というか後がつかえてるんで。私忙しいんですよ、神なので」


 心底面倒くさそうに、というか、若干疲れすらにじませながら、フレイア。

 神も疲れるのか……


「まあそんなヒドい条件じゃないんで。デスゲームとかしないんで。ね」

「え。ちょっと、え、なんか押し切ろうとしてません?」

「いいえ。というかもう次、待ってるんで。はい。ほら!」


 ずいっと突き出された光の球。

 ついでにぶるんと揺れるフレイアの乳。

 でかい。柔らかそう。薄布からちょっとピンク色はみ出てる。


「詳しい説明は後で担当の者に聞いてください。ね。どうぞ!」


 俺はものすごい紳士なので、とても大変極めて紳士的な手つきで左のおっぱいに――あ、めっちゃ睨まれた――光の球に手を触れた。


「はい頑張って! じゃ、次の方どうぞー」


 衝撃。しかる後に落下。




 ――どれぐらいの時間が経っただろう。

 ふと目を覚ますと。


 そこは、どう見ても異世界ではなかった。


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