我が家のモフモフ合戦
「白い方が勝つわ」
前略。そんなセリフをリアルに聞きました。
……嘘です。
このセリフを言った人は誰もいないかもしれません。ただ、我が家にはそんなことをいつか言われてしまうだろう、対照的な家族が二人います。
犬です。
THE ワンコです。
大きさは、二匹とも同じくらいの小型犬(膝下くらいです)。テリア犬といえば、分かる人もいるかもしれません。
色は、片方は茶色、片方は白。
白い方はすらっと細身で、腰もきゅっと締まっています。茶色の方はずんぐりと太っています。太りすぎてむしろタヌキに見えます。
二匹とも毛深く、耳の裏はモフモフです。片方をなでると、もう片方が高い確率で割り込んできます。
そのヤキモチも可愛いぜ……。
茶色の方は、尻尾も太い。先っぽが黒く、胴体の真ん中にも黒い筋が走っています。その体型と毛色は年々タヌキ化の一途を辿り、家族の間では「本当にタヌキなのでは?」という声が聞かれます。私もタヌキとアライグマのハーフの線を睨んでいます。犬の可能性は捨てました。が、くるくると愛らしい黒目に、ついつい煙に巻かれてしまいます。この愛らしさは、あるいは本当に犬かもしれません。
そんな色も体型も正反対な二匹は、なにかにつけて戦います。
まずはかけっこ。
これ、必ず太った方が負けます。
白い方はシャシャッと機敏に動くのですが、茶色の方はバスケットボールみたいにばよんばよんと鈍重に跳ねていきます。
しょっちゅう喧嘩もします(犬は順位にうるさいようです)。その時も威勢がいいのは、細身の白い方。茶色の犬は「やれやれしょうがねぇな」という感じで、すごすごと引き下がっていきます。
これが我が家のモフモフ合戦。
表の戦いは白優勢で進みます。
しかし、茶色の犬も負けてはいません。というか、こいつは裏の戦いにすべてを賭けているフシがあります。
茶色の方は愛想がいい。
白い方はコミュ障気味。ちょっと神経質なやつなのです。が、茶色の方はぐいぐい人前に出ます。
でも、馬鹿な子ほど可愛いのは本当です。
でへっと舌を出して、笑っているような顔をすると、みんな「可愛い~!」と可愛がります。実際かわいい。
勝負では適当に負けておいて、裏では愛想を振りまく。そして陰で人気をさらう。
なかなかやり手です。
一番よりもナンバーツー。二匹しかいないけどナンバーツー(?)。
負けてすごすご退散する背中にも、「君、本当の人気者は俺なんだぜ?」的な余裕が感じられてなりません。
いよいよもってタヌキです。
さて、私が帰宅をすると、彼らは尻尾を振ってお出迎えしてくれます。
白い方が威勢よく吠えて、茶色い方を追っ払います。
今日も勝負は白い方の勝ちです。
白い方は、飼い主に顎の下をなでられる栄誉に浴します。しかしその後ろで、茶色い方はちゃっかりと他の家族に愛想を振りまきます。色々と気の張るナンバーワンは白い方に任せて、気楽に暮らしているよう。
このモフモフ合戦、本当の勝者は果たしてどちらなのでしょうか。
ひとつ確実に言えるのは、犬が可愛いということです。
実は、ついつい手をかけてしまうしまう人間が、この戦いの一人負けかもしれません。ナンバーツーの足の下には、人間というナンバースリーが埋まっているのかも。
最後に、飼い主の誰もが思っている言葉で締めさせていただきます。
――ウチの子が一番!
変なエッセイにお付き合いいただき、ありがとうございました。