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三度目の正直

 アロエとの戦闘中、突然デイジーが現れて。

 転移魔法によって、何とか逃げ出すことができたあと。

 僕たちは一旦カナンガの町に戻り、アリウムさんの家へ集まった。


「本当は私も一緒に行きたいところなんですけど、あまり長い間ミントスペアから離れているわけにもいかないので……」


「ああ、大丈夫だよ。さすがに僕たちだけで行くからさ」


 次の目的地が慈悲大陸――ディルウィードに決まった以上、明日あたりで早速向かうつもりだ。

 確かにデイジーが一人いるだけで戦力は倍増するだろうし、未知な場所である以上、デイジーが一緒にいたほうが助かるのも事実。


 でも、さすがにそこまで面倒をかけさせるつもりもない。

 デイジーにはちゃんと、ミントスペアを守るっていう大事な役目があるんだから。


「あの、もっとみなさんと一緒にいたいんですけど……その、そろそろ私は帰らないといけないので。くれぐれも、気をつけてくださいね?」


「うん、分かってるよ。ありがとね、色々と」


「デイジー、助けてくれてありがとうデス! また会いマショウ!」


「はい、もちろんです。それでは、また」


 ぺこりと頭を下げ、デイジーは杖を掲げる。

 そして、井戸の底で言っていたのと同じ詠唱をし、デイジーを淡い光が包み込む。

 それから間もなく、一瞬にしてデイジーの姿は消え去った。


「せっかく再会できたと思ったら、もう帰らないといけないなんて。残念だわ」


「ま、仕方ないよ。ランたちも心配するだろうし」


 むしろ、わざわざ僕たちを助けるためにこんなところまで来てくれたことに感謝しかない。

 と、さっきまで僕たちの会話に参加することなく黙って見ているだけだったネリネが、突然口を開く。


「……まさかとは思うけど、うちも一緒に行かないといけないの?」


「え、だめ?」


 ネリネの問いに、僕は思わず首を傾げる。

 正直、ネリネを含めた四人で慈悲大陸ディルウィードに向かいたいと思っていたのだが。


「……うちには一緒に行く理由がない」


 相変わらず、冷めた口調で淡々とそう言ってくる。

 井戸までは同行してくれたものの、だからといってネリネはまだ僕たちのパーティに加入したわけではない。

 だから、ネリネの言っていることも一理ある。


 でも、このままお別れするのも嫌だった。

 僕は意を決し、三度目となる言葉を口にする。


「それなんだけどさ……僕たちのパーティに入らない?」


「……シオンって、意外としつこい」


 溜め息混じりに、ジト目で突っ込まれてしまった。

 自分でもしつこいところがあるのは承知の上だが、それでもやっぱり諦めたくなんてないのだ。


「僕は、ネリネとも一緒に行きたいんだよ。ネリネは誰かと組むのが嫌って言ってたけど《つる》、つるめば連むほど誰かに裏切られるって言ってたけどさ。僕は……僕たちは、絶対に裏切ったりなんてしない。これまで一緒に戦ってきて、もう僕たちは――仲間って言ってもいいんじゃないかな」


「…………恥ずかしくないの?」


「う、うるさいなっ」


 せっかくパーティへ誘っているのに、ジト目で引かれてしまった。やめてください、余計に恥ずかしくなる。

 もしかしたら、今の僕は顔が赤くなってしまっているかもしれない。


「……でも」


 またダメか、と半ば諦めかけていたとき。

 下手したら聞き逃してしまいそうなほど小さな声で紡がれた一言に、僕は気づいた。


「……うちは、ずっと周りの人間を疑い続けてきた。誰が、いつ裏切るのか分からないから。一人だけで行動して、誰かと組むことを恐れてた。だけど、シオンたちを見てたら……うちも、仲間っていうものが、欲しくなってきた、かも」


 表情を見られないようにしているのか、顔を逸らしてポツリポツリと自分の心情を明かしていく。

 何が言いたいのかあまり理解できず、答えられないでいると。

 ネリネは僕のほうへ向き直り、その一言を放った。


「……だから、うちも。もう一度、誰かを信じてみたくなった」


 大して変わらない、いつもの無表情。

 だけど、今の僕には。

 その口角が、ほんの少しだけ上がっていることを見逃しはしなかった。


「ね、ネリネ……それって」


「……別に。シオンたちは色々と迂闊だから、心配になっただけ」


 また顔を逸らし、ボソリと呟いた。

 表情を隠しているつもりなのか知らないが、頬が赤くなっていることまでは隠せていない。

 もしかしたら、照れているのだろうか。意外と、可愛いところがあるじゃないか。


「ネリネもパーティに入ってくれるんデスかっ!? やりマシタ! これで猫耳も触り放題――」


 イベリスが歓喜の叫び声をあげた途端、パンッと乾いた音が鳴り響く。

 気づけば、いつの間にかネリネは銃口をイベリスに向けており。

 耳元を一発の銃弾が掠め、イベリスの耳から一滴の血が垂れていた。


「……近づいたら撃つ」


「い、いや、まだ近づいてないのに撃たれたんデスけど。しかも、ちょっとだけ当たったんデスけど」


 イベリスは耳を押さえ、顔面蒼白となっていた。

 相変わらず凄まじい早撃ちだな……対象がイベリスっていうのが色々と残念ではあるが。

 何度目か分からないくらいだし、そろそろ懲りればいいのに。


「そういや、ちょっと気になったんだけどさ。ネリネって、何でそんなに猫耳を触られるのが嫌なの?」


「……なに。もしかして、シオンも……」


「あ、いや、違う! 単純にちょっと気になっただけだから!」


 今度は僕に銃口を向けてきたため、僕は慌てて誤解を解く。

 すると、若干疑いの眼差しではあったものの、銃を下ろしてくれた。

 本気で怖いから、いちいち銃を突きつけるのやめていただきたい。


「……猫耳は……性感帯、だから」


「え? あ、あぁ、そういう……」


 目を逸らしながらの一言に僕は察し、どう答えればいいのかも分からず、そんな曖昧な返事を返す。

 性感帯ってことは、もし猫耳を触られてしまえば……き、気持ちよく、なっちゃったりするってことかな。

 そりゃあ、嫌がるのも無理はないかもしれない。


「せ、性感帯デスか!? 何それ、えっちぃデス……っ!」


「あんた……興奮してんじゃないわよ」


 頬は少し赤く染まり、口からは大量のよだれ。今のイベリスは変態さに拍車がかかっていて、さすがに怖い。

 だがネリネは無視を決め込み、僕に言う。


「……じゃあ、そういうことだから。パーティに入れてほしい」


「あ、うん、分かった」


 と、いうことで。

 ヴェロニカやイベリスとパーティを組んだときと同じ手順で、ネリネもパーティに加えることができた。


 こうして。

 僕たちのパーティに、新たな仲間が加入したのだった。

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