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いざ、忍耐の地へ

 起床してから間もなく、僕たちは全員で朝食を食べる。

 そして数時間ほど、ずっとみんなで駄弁ったり遊んだりして、時間を潰した。


 起きてから出発する予定の時間まで、少なくとも三時間近くあったのに。

 よほど楽しかったからか、もしくはかなり世話になったデイジーたちと別れる時間が近づいているからか、あっという間に感じた。


 現在の時刻は、およそ十時半。

 デイジーが言うには、あと数時間もすれば港に船が到着するらしい。


 僕、ヴェロニカ、イベリスは準備を済ませ、玄関に立つ。

 デイジー、ラン、ヤマブキさんの三人も向かいに立っている。


「気をつけてくださいね。また、会える日を楽しみにしています」


 言いながらも、デイジーは少し涙ぐむ。

 そんな様子を見て、僕も思わず泣きそうになってしまったが、何とか引っ込ませる。

 涙なんて見せない。死にに行くわけじゃないんだし、別れるときに涙なんて不要だろう。

 見せるのは、笑顔だけでいい。


「うん。それじゃあ、行ってくる。みんなも元気でね」


「はい……行ってらっしゃいです」


 目尻に雫を溜めつつも、デイジーは最後に笑ってみせた。

 それでいい。せっかく旅立つんだ、最後に見たデイジーの顔が泣き顔だなんて絶対に嫌だから。

 するとヤマブキさんが一歩前に出て、口を開く。


「それじゃあ、おいらはみんなを送ってくるよ。徒歩だったら、何日もかかっちゃうからね」


 どうやら、この街から港まで、徒歩では数日かかってしまうみたいなのだ。

 けど、ヤマブキさんには馬車がある。

 さすがにそれでもかなり時間がかかってしまうことに変わりはないが、全速力で向かえば数時間で済む。


「シオン様、また虐められに来てくださいませ」


「……いや、虐められには来ないけど。でもまあ、また戻ってくるよ」


 その言葉を最後に、僕たちは背を向けて扉を開ける。

 そして外に出て、馬車に乗り。

 港へ向かって駆け出した。



     §



 どれくらいの時間が経過した頃だろうか。

 イベリスは車内で居眠りを始めてしまい、ヴェロニカも退屈そうに外を見ながらウトウトしてしまうほどの長時間を経て。


 僕たちは、ようやく港に到着した。


 たくさんの人が辺りを闊歩し、店と思しき建物がいくつか軒を連ねている。

 更に、広大な青い海には。

 一隻の大きな船が停まっていた。


 これは……予想以上である。

 てっきり、もっと小さい普通の船かと思っていたのだが……まるで豪華客船みたいだ。


「あ、もう来てたみたいだね。それじゃあ、みんなとはここでお別れになるかな」


「ありがとう。今まで、色々と」


 僕がヤマブキさんにお礼を告げている間に、ヴェロニカはイベリスを叩き起こす。

 船が行ってしまわないよう、すぐに馬車から下り、もう一度お礼を告げる。

 そして、船のもとへ足を向けた。


 周りに店が色々あって気にはなるものの、見たところ食べ物か、ちょっとしたお土産程度のグッズしか売っていないようだ。

 ただ、食べ物の店から漂ってくるいい匂いが鼻腔をくすぐり、何だかお腹が減ってくる。


「し、シオン。お腹が空いてきたので、何か買ってきてもいいデスか!?」


 よだれを溢れさせながら、イベリスが言ってくる。

 どうやら、お腹が空いてしまったのは僕だけではなかったらしい。


「あの、できればあたしも、何か食べたくなってきたわ」


「じゃあ……せっかくだから買ってから船に乗るか」


 ということで、僕たちはそれぞれ食べたい物が売ってある店へ行き、購入していく。

 ちなみに僕が唐揚げ串、ヴェロニカが焼きそば、イベリスがハンバーガー。見事にバラバラである。


 食べながらも、チケット売り場で三人分の料金を支払い(宿に泊まったときより遥かに高かった)、船の前に立っている男性にチケットを手渡す。

 こうして、僕たちはようやく船の中へ入ることができた。



「す、すごいデス……っ!」


 入ってすぐ、イベリスが辺りをキョロキョロ見回して感嘆の声をあげる。

 確かに、これは思わず息を呑む。


 とても清潔に整えられた内装。

 かなり広く、上へ続く階段も、下に行ける階段もあり、自動販売機らしき機械もいくつか置いてある。

 テーブルと椅子に、バーのようなカウンター。

 更に奥には、個室の扉が並んでいた。


 予想を遥かに上回る。

 まさか、ここまで豪華な船だったとは。

 さすがに料金が高いのも頷ける。


「こんなの、生まれて初めて乗ったわ……」


「僕もだよ。もっと小さい船かと思ってたのに」


 こんなに広く色々な設備が設けられているのなら、オークモスに着くまでの時間潰しはいくらでもできそうだ。

 そんなことを考えながら二階に上ると、様々な娯楽が用意されていた。

 本当に、時間潰しどころか、むしろ時間が足りなくなるレベルだな。


「シオン、ヴェロニカ。せっかくなので、みんなで遊んでいきマショウ!」


 イベリスが嬉々として言ってきたが、それも悪くない。

 というか、着くまでに結構時間がかかるだろうし。

 こんな経験もそうそうあるわけじゃないんだ、楽しんでおくべきだろう。


「……いいけど、あたし弱いわよ?」


「大丈夫デスよ。楽しめれば、問題なしデス!」


 こうして、僕たちは用意されている多数の娯楽を手当たり次第に遊んでいくこととなった。

 今まで家に引きこもってゲームばかりだったけど、友達と一緒にアナログゲームもいいものだな、とちょっと思った。


 ちなみに。

 オセロやブラックジャック、ポーカーなどでも遊んだのだが。

 ヴェロニカの意外な実力が発揮され、少し苦戦してしまったのは別の話。

 というか、普通に負けました。


 やっぱり、デジタルのゲームじゃないと勝てないな、僕。

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