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その吸血鬼は、ゲーム世界でもツイてない。  作者: 果実夢想
四章【変わりやすい愛情】
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果てしない旅路へ

 デイジー邸の一室にて。

 僕は床、ヴェロニカは椅子、イベリスはベッドにそれぞれ思い思いの体勢で座っている。

 ヒースを倒してヒゴロモを救ったのはいいが、今後の目的、特にどうやって元の世界に戻る方法を探すのかを話し合うために。


「……ヒースは帰る方法なんてないって言ってたけどさ、でもやっぱり何か一つくらいは方法あるんじゃないかって思うんだ」


「その肝心な方法が分からなくて、困ってるんだけどね」


 僕の考えに、ヴェロニカが苦笑で返す。

 確かに、あくまで僕の願望と推測でしかないし、たとえ何かしらの手段があったとしても、それが分からなければ意味がない。


 ヒースは執拗に元の世界を捨てろだとかこの世界で暮らすことを決めろだとか言っていたが、さすがにそれは無理な話だろう。

 ほんの数日、ちょっと遊ぶくらいならまだしも、永遠に過ごすのは嫌だ。男の体も、ちょっと恋しくなってきたし。


「ヒースが言っていたこと、覚えてる?」


「どれのことデスか?」


「〈キーワ〉っていう、組織のこと、かな」


「それはもちろん覚えてマスよー。ワタシたちをこの世界に連れて来た張本人なんデシタっけ」


 僕にはそういう知識も技術もないため詳しくは分からないけど、ヒースの発言が正しければ〈キーワ〉に属している奴らがゲーム世界を創り出し、そこへ僕たちを転移させたらしい。


 ゲームを作ったのではなく、ゲーム世界を創り出した。

 つまり、〈キーワ〉の人たちはテストプレイの抽選に当選した者か、もしくは何かしらの方法で存在を知り、ハッキングしたことによって乗っ取ったのか。

 そうして、利用することを企んだのだと思う。


 トップの人は十人いるとも言っていた。

 パーティを組める人数は最大で十人なので、おそらくトップの全員はパーティを結成しているのだろう。

 他の人がどうなのかまでは、さすがに分からないが。


「〈キーワ〉の目的は、元の世界への復讐って言ってた。元の世界を“捨てて”この世界で暮らし、元の世界で平和な人生を送ってた人たちに報復し、自分たちと同じように辛い過去を持ってる人たちを仲間に引き入れるって。だから、僕たちが元の世界に戻る方法を探すという目的を持って行動する以上、今後も〈キーワ〉との衝突は避けられないと思う」


 つまり、またヒースのときのような戦闘が必至ということだ。

 正直な話、ヒースはあまり強くはなかった。話しを聞いた感じだと、かなり最近〈キーワ〉の一員になったみたいだったし。


 しかし、僕があれだけの傷で済み、ヒゴロモも救うことができた上に勝利したのは、相手がまだ新米に近いヒースという男だったからかもしれない。

 十人いるというトップの者がどれだけの強さを誇るのかは知らないけど、おそらく戦闘になってしまえば勝つのは容易ではないだろう。

 トップという立ち位置にいる以上、少なくともヒースたち下の者よりは実力があるんだと思うから。


 だから、簡単ではないのだ。もしかしたら、今まで以上に危険で、過酷で、苛烈な旅路となるかもしれない。

 そう思って、ヴェロニカとイベリスを順に見る。

 すると、諦めや逡巡、不安などは微塵も浮かんでいない微笑みが返ってきた。


「何言ってんのよ、今更。そんなもの、承知の上だわ」


「そうデスよー。だからって、諦めるわけにはいかないじゃないデスか」


 全く、肝が据わった仲間たちだ。

 でもおかげで、遠慮なく話すことができる。


「……〈キーワ〉の、トップにいる十人の人たちが、この世界を創り出して僕たちを連れて来た。ってことは、少なくともこの世界に連れて来る方法はあったってことだよね。だったら、その人たちの誰かは帰る方法を知っていてもおかしくはないんじゃないかな」


「そうね。あいつらは帰りたいとは思ってないみたいだし、本当に帰る方法なんて残してない可能性もあるけど……」


「うん。たとえそうでも、ちょっとでも可能性があるなら賭けてみる価値はあると思うよ」


 ヴェロニカの言うことにも一理あるが、だからといって少しの可能性を捨てることはできない。

 極めて低いかもしれない。でも、ゼロではないのだから。


「じゃあ、シオン。ワタシたちの次の目的ってのは――」


「――そう。〈キーワ〉のトップにいる十人を探す」


 イベリスの言葉を受け継ぎ、僕はそう言い放つ。


 きっと〈キーワ〉は、僕たちプレイヤーのことを探しているのだと思う。

 元の世界で平和だった者を見つけた場合は、報復という名の殺害をして。元の世界で辛い過去があった者と会った場合には、仲間となるよう勧誘するために。

 だからこそ、僕たちと出会ったヒースがあんな行動を取ったのだろう。


 しかし、今度からはそんな一方的なものじゃない。

 僕たちも、元の世界へと戻る方法を聞き出すために――あいつらを探してやる。


「でも、どこにいるのかなんて分からないじゃない。ヒースも、いきなり現れていきなり襲ってきたわけだもの」


「確かにそうだね。だから、まずはこの世界の色んなところを行ってみる必要があるとは思う。もちろん、他の大陸にも」


 大陸は、全部で七つある。その全てに行くとなると、かなりの時間と労力を要してしまいそうだが、今の段階では他に効果的な方法が何も思いつかない。

 けど、相手も僕たちを探しているのなら、向こうから来てくれる可能性だってあるだろう。

 現に、この間ヒースのほうからやって来たわけだし。


 とはいえ、ただ待つだけでいられるわけもなく。

 この世界のことをもっと知り、元の世界に帰る方法の手がかりを探しつつ〈キーワ〉のメンバーも探す。

 それらを行えるのが、やはり、この世界の各地に赴くことだろう。


「なるほど、旅ってわけね」


「そうなるね。その途中で、他のプレイヤーにも〈キーワ〉にも会えるんじゃないかな」


「ワタシは賛成デスよー。色んなところ行ってみたいデスし!」


 楽しそうに同意を示してくるイベリスだが、完全に旅行とか観光に行く気分だな、これ。まあ、気持ちは分からなくもないけど。

 ヴェロニカは暫し逡巡の様子を見せたのち、頷いて答えた。


「……そうね。分かったわ」


 と、いうことで。

 我がパーティの次の目的は、元の世界に戻る方法を探しつつ〈キーワ〉のメンバーを探すことと相成った。

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