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四分の一に分かつ

 あれから、どれだけの長時間、雨の中を歩いたのか。

 雨雲に覆われていて最初から薄暗かった空も、今ではもっと暗くなってしまっている。

 もう夜になってしまったのだろう。


 四方の霊塔と思しき建造物は、存外早く見つかった。

 かなり離れた位置からでも、その高くそびえ立った四つの塔が見えていたのだ。

 しかし、姿は見えても、近くに到達するまでに思いの外時間がかかってしまった。


 そうして、何とか僕たちは塔のふもとに辿り着いた。

 近くから見ると、一層その迫力に気圧されてしまいそうになる。

 そんな塔が、東西南北に四つ、かなり近い距離に配置されているのだから尚更に。


「どこから行けばいいのかな……?」


 四方を見回し、ヒゴロモが首を傾げる。

 四方の霊塔にて待つとは書かれていたものの、四つの塔のうちどこにいるのかまでは記されていなかった。

 一つ一つ、手当たり次第に登っていくしかないのだろうか。


「くははははっ! いくつあろうと関係ない。海王神たる我が、全ての穢れし楼閣を踏破してやろうではないか……ッ!」


 ガーベラは高笑いともに、一つの塔へ向かって歩む。

 そして大きな扉を押し開けると、ギィィと重々しい音が鳴り響いた。

 外観からして多少予想はできていたが、中を覗いてみた感じだとやはり途轍もなく広い。四つ全てを攻略するのは、相当骨が折れそうだ。


「どっちにしろ行ってみるしかないデス!」


 イベリスが口火を切って塔の中に入り、ガーベラも一歩を踏み出し後に続く。

 すると、途端に。

 ゆっくり扉が動き出し――完全に閉まってしまう。

 イベリスとガーベラの二人を、塔の中に残したまま。


「し、シオン。これ、開かなくなってるわよ!?」


 驚いたヴェロニカが咄嗟に再び扉を開けようと試みるも、一ミリも微動だにしない。

 僕も他のみんなも一緒に試してみたが、結果は変わらなかった。


 重い……などというレベルではない。まるで地面とくっついてしまったかのように、動かなくなっているのだ。

 先ほどは、小柄であまり力も強くないであろうガーベラでさえ、容易く開けたほどだというのに。


「みんな、どうなってるんデス?」


 中からイベリスの声と、ガンガンと扉を叩いているかのような音が聞こえてくる。

 僕は声を張り上げ、答える。


「何でかは分からないけど、閉まっちゃったみたいだ。僕たちも一緒に入ることは無理そうだから、とりあえず二人で先に進んでみて」


 心配なのはもちろんだが、扉が開かない以上僕たちにはどうすることもできない。

 だから、二人が何とか無事に乗り越えられることを信じるしかないだろう。


「そうデスか……分かりマシタ」


「く、くははははっ! よかろう。刹那の刻を以て、この塔に破滅を呼び起こしてやろうッ!」


「やははー、ガーベラと二人きりなんて珍しいデスね!」


「ギャーッ! だからって抱きつくなぁっ! 何で、よりによってこいつなんだよぉっ!」


 ほ、本当にあの二人で大丈夫かな……。

 別の意味で言い知れない不安を覚えながら、僕たちは近くにある別の塔へ歩を進める。


 四つ存在する塔のうち一箇所だけに先ほどのような仕掛けが施されているとは思えないし、きっと残りの三つも何かしら仕掛けられている可能性が高いだろう。

 あくまで推測に過ぎないが、もしかしたら全ての塔で勝手に扉が閉まってしまうようになっているのかもしれない。


 そう思い、とりあえず念のため一人ずつ入ってみることに。

 まず試しにアマリリスが自ら進んで入っていったが、何の変化も現れなかった。


「何も起こらないね。もう一人、入っておいでー」


「……」


 アマリリスの明るい一言にネリネが頷き、ゆっくり足を踏み入れる。

 途端、ガーベラやイベリスが別の塔に入ったときと同様に、独りでに扉が閉まった。


にぃ、これどういうことなのかな……?」


「どういう仕組みなのかは全く分からないけど、多分二人が中に入った時点で閉まるような仕掛けになってるんだと思う」


 幸いと言っていいものかどうか、僕たちは八人でやって来た。

 二人ずつなら、四つの塔でちょうど分けられる。


 ある意味、当初の予定だった全ての塔を手当たり次第に行くことより、こうやって手分けしたほうが効率はいいかもしれない……が、中でどんな危険が待ち受けているのか分からない以上、やはり少し不安には思ってしまう。

 とはいえ、今のこの状況なら、そうする他ないわけだが。


「どうする? 塔は、あと二つあるわよ?」


「とにかく行ってみるしかない」


 最初から、僕たちに諦めるなどという選択肢は存在しない。

 イベリスもガーベラも、ネリネもアマリリスも、それぞれ二人ずつ塔に入ったことで、きっと不安な中上へ上へ進んでいっているはずだ。

 だから僕たち残りの四人も、すぐに他の塔を進まなければ。


「じゃあ、あたしたちも行ってくるわね」


 ヴェロニカは残された僕とヒゴロモにそう告げ、塔の中へ入っていく。無言で顔を逸らし続けるカルミアとともに。

 あの二人、接点もあまりないだろうし、大丈夫なのかな。

 イベリスとガーベラのコンビとは違った意味で、少し不安になる組み合わせだ。


「行こっか、にぃ


「そうだね。まさか、ヒゴロモと二人きりになるとは思わなかったけど」


「えへへ」


 どことなく嬉しそうなヒゴロモと一緒に、最後の塔へ入っていく。

 扉が閉まるのを確認した後、僕たちは一歩を踏み出す。


 そうして、八人が二人ずつに分かれ。

 僕たちの、四方の霊塔の攻略が幕を開けた。

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