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雨天の町中で

「や、やっと着いた……」


 ヴェロニカが、前方に広がる光景を見て深々と息を吐く。

 いや、ヴェロニカだけではない。

 僕も、イベリスも、ガーベラも、ようやく着いたと言わんばかりに嘆息したり息を整えていたりと、思い思いの反応を示していた。

 尚、ネリネだけは相変わらず無表情で疲れている様子は微塵もなかったけど。


 あれから、何時間が経過したのか正確には分からない。

 慈悲大陸ディルウィードに到着した僕たちは、とりあえず町に向かって歩を進めた。

 船を停めた場所が悪かったのかどうかは定かじゃないが、雨の中ひたすら歩き続けた。


 土の精霊ラウンの能力のおかげで、あまり濡れずに済んだのはよかったものの。

 濡れた大地は滑りやすくもなっており、雨のせいで少し視界も悪い。

 そのせいか、余計に疲労がくるのが早かった気がする。


 何はともあれ、今日中に町に到着できてよかった。

 雨の中で野宿するわけにもいかず、このまま暫く辿り着けなかったらどうしようかと思っていたから。

 どうやら、この町の名前は『ホーリーフ』というらしい。


「次からは、もっと町の近くに停めたほうがいいわね」


「……む。同感だ」


 ヴェロニカが呟いた言葉に、ガーベラが重々しく頷いた。

 確かに、それができれば町に行くのにここまで苦労もしないだろうし、船の中で休めるから宿に泊まる必要もなくなる。

 問題は、町の場所が分からない以上、近くに停めることすら難しいことだが。


 そうして、僕たちはとりあえず町の中を歩く。

 まだ土の屋根は僕たちの頭上を雨から防いでくれているため、周りから奇異の視線を向けられている気がする。

 ちょっと恥ずかしい。


 辺りを見回しながら宿を探すこと、およそ十数分。

 看板に『リリー亭』と書かれた、一軒の建物を発見した。


 ヴェロニカが再びラウンを呼び出し、土の屋根を解除したあと。

 僕たちは、リリー亭へと入っていく。


 まず視界に入ったのは、左右にある二つの受付。

 左側には年配の女性が、右側には少しふくよかな女性が立っていた。

 テーブルや椅子も並んでおり、客と思しき様々な人たちが料理に舌鼓を打っている。


 右奥、受付の隣には階段があり、上を見上げるといくつもの扉が並んでいる。

 おそらく、二階が宿泊部屋となっているのだろう。


 僕たちは受付のもとまで行き、宿泊の手続きを済ませる。

 五人部屋というのが一つしかないらしく、今はちょうど誰も泊まっていないということで何とか全員同じ部屋に泊まることができた。


 鍵を渡されたので、二階へ登り部屋へ向かう。

 五人部屋だから当然と言えば当然だが、かなり広かった。

 ベッドが五つあり、テレビやクローゼットもあり、机や椅子も置かれ、そして風呂やトイレも設えられている。


 五人分なので料金も相応の高さだったが、思っていた以上に豪華で充分すぎるほどだ。

 一泊にしたのが、少しもったいないと感じてしまう。


「す、すごいデス! 広いデス!」


「くははははっ! 海王神たる我と、その眷属に相応しいではないか!」


 当然と言うべきか、イベリスとガーベラがはしゃいでいる。

 ここまで広い部屋に泊まったことなど僕も初めてだから、はしゃいでしまう気持ちも少しは分かる。


「……居心地が悪い」


 でも、ネリネだけは半眼でそう漏らしていた。

 僕たち四人とは、あまりにも対照的すぎる反応だ。


「もっと狭いほうが好きなの?」


「……ん。広いと、落ち着かないから」


 まあ、確かにその気持ちも分からなくはないかもしれない。

 たまにこうやって宿泊するだけならいいけど、自分の部屋だとしたら、もう少し狭いほうがよさそうだし。


「ということで、みんなで一緒に風呂に入りマショウ!」


「何が、ということで、よ……。一人で入ってなさい」


「そ、そんなぁ! ほら、ここまで来るのに疲れマシタし、風呂に入っておくべきデスって!」


「それなら、あたしたち四人が一緒に入るから、あんただけ先に入れば?」


「仲間外れにしないでくだサイよぉっ!」


 ヴェロニカの冷たい返しに、イベリスは涙目となって抗議する。

 正直、僕も一人のほうがいいんだけどな……。

 ヴェロニカといいネリネといい、イベリスの扱いがどんどん酷くなってきている気がするが……無理もないか。


「……血塗られし闇夜の童女よ」


「あれ、また僕の呼び方変わった?」


 ガーベラが僕のほうを向きながら言ったから、たぶん僕を呼んでいるのだとは思うけど。

 一体、僕のことをどう呼びたいのやら。


「明日、我の破滅を呼ぶ漆黒の方舟に欠かせないであろう〈鷹の眼〉を入手するべく、とある死地に赴こうと思うのだが。貴様は、我と行動をともにすることを許そう!」


「えっと……え?」


「だ、だから、買いたいものがあるから一緒に来いって言ってんの! それくらい察しろよぉっ!」


「あ、ああ、ごめん。いいよ」


 突然よく分からないこと言われ、思わず首を傾げてしまったが。

 そのあとで分かりやすく説明してくれたので、何とか理解できた。


 それにしても、買いたいものって何だろうか。

 ともかく、僕は明日ガーベラと一緒に買い物をすることになった。

 他の三人は町の中を見て回ったりと、各々好きに行動するらしい。


 でも……何で僕なんだろう。

 答えてくれそうになくて、訊くことはできなかった。

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