3.異世界人との戦い?
埋もれていた作品を久しぶりに更新。
退院をした雛子は、父親と家にやってきた。
「ここが君の家だ」
「ただいま、でいいのかな」
雛子は靴を脱いで上がった。
「あの、俺……いや、私の部屋は?」
「無理しなくていいんだぞ。君の部屋は二階だ」
雛子は階段を上がり、それっぽい部屋に入った。
そこには、黒服の男が立っていた。
「てめえ誰だ!? 泥棒か!?」
振り返る黒服の男。
「君は私が見えるのか?」
「……?」
「私は死神。指定された魂を狩るのが生業だ」
「死神?」
「ああ、そうさ。君は……東雲 光一か」
「……!?」
「すまぬ。これは君を救うために仕方なくやったことなんだ。赦してくれ」
「どういうこと? 説明して」
「実は、あのままでは君は死んでいたんだ」
「俺が死んでいた? ちょっと待て。あっちの俺は何者なんだ?」
「君のコピーだ。オリジナルは君で、そのコピーをあっちに入れさせてもらった」
「どうしてそんなことを?」
「あのままでは君は戦いに巻き込まれて死ぬ」
「戦い? なんの?」
「異世界人との戦いさ」
「お前はアホか? そんな漫画みたいな話、誰が信じるかよ」
そこへ父親がやってくる。
「お父さん、こいつ……」
「なに一人で騒いでんだ?」
「……!?」
雛子は男を見る。
(こいつ、父親には見えてない?)
「あ、なんでもないよ。それよりお腹空いちゃったな。何か作ってよ」
雛子は父親を追い出した。
「てめえが人間じゃねえってことは認めてやる。だがな、死神ごっこは他所でやれ!」
「なんだ? そのどこかで聞いたことのあるセリフは?」
「どうでもいいだろそんなこと!」
「まあいい。光一、君には異世界人と戦ってもらいたい」
「は?」
「このままでは世界は異世界人に乗っ取られてしまうんだ。それは我々死神界でも問題になっているんだ。通常、世界と世界は並行しているが、互いに干渉しあうことはできないんだ。だがな、件の異世界人が干渉する力を持ってしまってな。それでこちら側に攻めてこようとしてるんだ」
「話が見えないんだが……」
「実はな、雛子は私のバディでな」
「バディ?」
「ああ。雛子は君が巻き込まれて死ぬのを察知し、自分の体に君の魂を入れるのを提案したんだ」
「ちょっと待て。それが事実なら、俺は元の体に戻れないんじゃ?」
「その通りだ。だから、君には雛子の代わりに異世界人と戦ってほしい」
「待て待て待て待て! 雛子って何者なんだよ?」
「私が説明するわ」
雛子の体から雛子の魂が出てきた。
「うわああああ!」
驚いて腰を抜かす雛子。
「あ……ああ……」
「雛子、お前平気なのか?」
「なにが?」
「意識だよ。光一が入ってて、意識あったのか?」
「私を誰だと思ってるの? 世界最強クラスの霊能者よ。舐めないで」
「な、なんだよ霊能者って! 全く話が見えないよ!」
「あ、ごめん」
雛子の魂が振り返る。
「異世界人の話は聞いたよね?」
「ああ。だが信憑性がな」
雛子の魂が、胸の前で手の平を上に向け、虚像を出現させる。
「うわ!?」
虚像に驚く雛子。
「驚くことないでしょ? これが異世界人。私たちの世界の人と同じ姿だけど、侵略者なの。あなたにはこいつらを倒してほしいってわけ」
「お前がやればいいじゃねえか!」
「そうしたいんだけど、あなたが入ってるとなぜか力が使えないのよ。だから、あなたが倒す。わかった? 一応、会話だけなら中からでもできるから」
雛子の魂はそれだけ伝えると、雛子の体に重なって中に入り込んだ。