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岡村は永遠に

 時代はもはや、何でもありだった。森では熊にストーカーされる娘がいたり、川ではビーバーが木造二階建ての建築物を自慢して、更に、亀が騎馬戦をやってのけてる光景が、日常的だった。


 岡村晴一は、そんな世界を管理する役目を担っていた。人、動物、妖怪がちゃんと手を取り合っているのかと、塩豆大福を頬張りながら、いつものように業務を遂行していた。


 それは、ある日突然起きた。鳩が豆鉄砲と共に送ってきた、一枚の紙切れの内容によれば、こう、記されていた。


 ーーー世界はやっぱり分割させて、其々でその責任を従事させてやれーーー


 数年前に全ての世界を統合化させといて、めんどくさくなった?《天》の経営は、昔から行き当たりばったり的な計画が目立っていた。しかも、明日から開始する・・・。因みに、岡村が配属となる部署は〈人部門〉と、なっていた。


 岡村にある思いが脳裏に掠めていく。相思相愛、もっと、いやらしくいえば、全身をくまなく接吻をぶっかまし合った、妖精シホナ。

 自分は元々〈人〉だ。世界がまた、パズルのようにバラければ、あのさわり心地いい肌・・・じゃなくて、純粋無垢なシホナのあの笑顔が見れなくなる。


 時間はあっという間に過ぎて、世界を分割させるスイッチを・・・《天》は岡村に押っつけた。


 なんばしょっとね?はよ、押さんね!


 業を煮やして《天》は催促する。

 いつまでたっても岡村は、そのスイッチを押すことを躊躇った。


 ーーー岡村さん、悲しいけど、あなたとの思い出は、発光ダイオードみたいに、私の中で輝かせます。


 聞き覚えがある声。その方向を見ると、しくしくと、すすり泣きするシホナの姿が飛び込んだ。


 やはり、別れは嫌だ。岡村は一度《天》におしりペンペンの仕草を見せると


「シホナ!」と、叫びながら駿足して・・・。


 シホナをがっちりと、抱き締める。


 お互い、顔を正面にさせ、唇があと一歩で重なる時にーーー。


 世界はバラけていった。



 〈人〉の中では岡村の存在は、空想の生き物として扱われていた。


 ーーーおとーさん。この、異世界図鑑の岡村て、何?


 ーーーお?カナコ、そいつはな、妖精さんの為に〈人〉を辞めた自由な生き物だ。


 ーーーどうして?


 ーーーカナコにはまだ、難しい事だ。


 ーーーこんどは、こっちの本を読んでよ。


 ある父と娘、寄り添いながら絵本のページを捲る。


 先程まで読まれていた図鑑が父親の膝の側に置かれていた。


 その表紙、シホナの頬を両手で挟む岡村。


 愛おしいそうな眼差しで想像図として、描かれていた。


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