オカムーラその2
ギンギン、ビッカビカ。シホから接吻されたオカムーラは、家中に飾られたイルミネーションのように、発光させる。頭の皿は木っ端微塵になり、それより少し七三分けの頭髪、胴体に反物が巻かれていくと、びっしりとした紺色のスーツ、足元に鏡の表面のように光沢した革靴が、すっぽりと収まっていく。
「姫・・・。私は、太古よりの言い伝えの戦士の話を、下手くそな話術の父上より、余計に寝付けないほど、読み聞かせされたことがある」
アルマは驚愕しながら、シホに向けて言う。
「オカムーラ様は《闇》によって、真実の姿を覆われていただけです。此こそが、本来彼に与えられた使命の形・・・・・・」
お?キャッチ出来ずに、地面に落下させたみたいですぞ!
戦士にしか使いこなせない、武器と防具が詰まってます。
中腰になり、黒いケースを拾い上げるオカムーラ。そして、直立不動の姿勢となり、シホとアルマを左斜めの視線で見つめる。
「私は、日々絶え間なく、五時間の睡眠をきっちりとって、三度のご飯も必ず食べる・・・・・・」
怪訝な形相で空を仰ぐオカムーラに、シホが駆け寄り、耳元にひそひそと、囁くと、慌てるようにアルマの側に戻っていく。
「悪が蔓延る組織を蹴散らし、世の人の暮らしを守る為に今、参上した!私の名はーーー」
ーーービジネス戦士、オカムーラッ!
「オカムーラ様!今こそ、あの《技》で悪が蔓延るカイーシャに、立ち向かうのです」
「パワハーラの“力”はとてつもなく、強大だ。私は、それに一度敗れた」
「あなたは独りではありません!此処にいるアルマも新たな仲間として、加わってくれるとのことです」
オカムーラは、瞳を懐中電灯のように輝かせ、アルマを見つめる。
「そうか!なら、心強い。頼むぞ、アルマ」
「姫の言葉を真に受け・・・・・・」
しくしく、と、啜り泣きするシホに、アルマはこう、いい続ける。
「もとい。姫の言葉の通り、私も闘う!」
こうして、遠足気分で鼻唄をふんふん、とするオカムーラと、途中で出会うチワワとじゃれ合うシホに、愛想を幾度もなく尽かせかけながら、アルマは保育士のように、二人を引率する。
そして・・・・・・何とか、カイーシャの本部に突入していく。
「オカムーラ・・・・・何度、私に立ち向かおうとも、この“力”は絶対に消すことは出来ぬ」
姫、こいつは何者だ?
オカムーラ様を裏切って《闇》を被せたジン=ザーイです。彼を折角育成したのに、恩を仇で返すと、いう、卑劣な行為をやってのけた最低な、ムッツリスケベ・・・・・・。
「なるほど、ドスケベ根性は師匠譲りと、いうわけか?」
ジン=ザーイは、ぴくりと、眉を吊り上げる。
「シホ・・・・・・おまえを我が手中に治める事が出来なかったのは、オカムーラの存在があった。まさに、そいつは、目の上のタンコブ。気が変わった!シホ、貴様を先に潰す事にする」
ジン=ザーイは、掌を腹部に乗せて、黒い球体を引摺り出す。
「オカムーラ様!ジン=ザーイはあの“力”までを習得しています」
「〈ハ・ラグロ〉まさに、腹の中を真っ黒にさせ、己に牙を剥くジュー=ギョインにリス・トーラ弾を投げる・・・・・パワハーラの一種だ!」
「奴に勝てる方法は、私も知らない!」
アルマは額に汗をだっくだくにまみれさせて、そう、叫ぶ。
「アルマ、諦めてはいけません!オカムーラ様は、究極の“力”を私の風より吹き込まれました!」
「二人とも、なるべく近くにいて離れるのだ!」
オカムーラは腕を伸ばして背を伸ばす運動をして、その掌をジン=ザーイに照準を合わせる。
「シホ、アルマ。カウントを頼む!」
「はいっ!」と、元気いっぱいに返事するシホ。その一方、アルマは渋渋と、仕方なく頷く。
「ロウドーキジュン砲!!!」
シホとアルマのカウントは、めんどくさい理由で省略されて、オカムーラは、えーと、誰だった?とにかく、悪い奴に何だか一丁前な叫びをしながら、ぶっ放していくと、どっかに消えていった。
「やった・・・ぞ。シホ」
真面目な事をした為、オカムーラはふらふらと、転倒する。
「シホ・・・・・いつの間か胸のボリュームをアップさせていたのだな?」
「オカムーラ様、私は、こっちですよ」
顔より血の気を失うオカムーラ。ひょいと、目を合わせたのはーーー。
花畑に行ってこいっ!!!!!!
アルマの拳、オカムーラを大気圏までを貫かせ、上昇させる。
「オカムーラ様、今度は宇宙の悪と闘う為に旅立って行かれた」
「姫がそう、言えば、いかにも其れっぽく見えないこともない」
アルマの彼氏はその後はお元気かしら?
バースか?タクトと会えないと愚痴ってうんざりしてる。
うふふ、あの男の子も学生生活で忙しいのよ。
姫にも感心する。あれだけドスケベなオカムーラを信じると、いう、心の広さにな!
「だって、結局あの人が帰る場所は、私なの!」
シホは空を仰ぐ。
オカムーラは、光の速度を超える。
そしてーーーその姿は、地上の人々に伝説にもならず、現すこともなかった。
たった一人・・・・・・シホの空想の中で永遠の時を、刻ませていった。




