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初恋

        「・・・・・」




「・・・・・・。」            「 ・・・・・・・・・・・・・・。」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」       「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」




 治癒の庭で、空気が重くなった。二人のあいだに長い沈黙がつづく。思えば、色とりどりの花たちも、気まずいのではないか。そんな風に思えてしまって仕方がなかった。そして、この沈黙を終わらせるために勇気を振り絞った。


 「僕は、霧夜子龍。まぁ、リュウってよんでよ。」


 ミルフィからキスをされて戸惑っていたが、気まずい空気が流れだしていたので、先づは自己紹介をしようと思った。それに、この世界のことも全く分からない状態なので、彼女から話を聞かなくては、これからの方針も定まらないので、彼女と友好的になるのは大切なことだろう。また、その点について一つ補完をしておこう。友好的になりたいのは、目の前にいる女の子が絶世の美女だからというわけではない。決して、あわよくばなんて妄想をしているわけでもない。つまり下心があるわけじゃない・・・うん。そういうわけでは・・にゃいはずだ。いや、そうでありたいと思う。


 「あの、えっと・・私、ミルフィーユ・セントレア・リリカユノハっていいます。えと、みんなからはミルフィって呼ばれてます。ミルフィって呼んでください。それで、そのリュウさん。助けてくれてありがとうございます。リュウさんは命の恩人です!」


 屈託のない笑顔でミルフィが答えてくれた。それにしても長い名前だと思う。前いた世界では、まぁ、海外にいけば長い名前もあるのだろう。けれど、漢字の名前しか知り合いがいない僕には、とても新鮮なことに感じた。

 って、それよりも、どうしても一つ気になることがある。奇跡的に言葉が通じるということに、ほんと、今さら感満載だけど気がついた。これは、いわば異世界トリップのチートなのだろうか?それならそれで有難いことこの上ない、けど、今気になるのはそれではない。僕は彼女に確認してみることにした。


 「えー、ミルフィさん?」 (僕の馬鹿野郎!疑問形ってなんだよ)ここにきて照れてしまった自分が憎い。


 「はい。なんでしょう。」 笑顔でミルフィが答えてくれる。


 「えーと、その。何でキスをしたのでしょうか?」


 「キス?とは何でしょうか?私は陸上で暮らす方々のことをあまりしりませんので、申し訳ありません。」


 えっ!知らないってどういうことなのだろう。この世界にこの言葉が通じないのだろうか。いや、人間がかってにつけた言い方なのかもしれない。僕は言い方を変えてみることにした。


 「そのー、僕の唇にくちづけをしたのはどういうことなのかなと思いまして。」


 「もしかして、私は失礼をいたしましたのですか!その、私の母が命の恩人のかたには、そのようにお礼をするものだと言われまして・・」


 ミルフィの声音が徐々に小さくなってしまったので、僕は慌てて訂正をした。


 「いやいや、失礼なことなんてしてませんよ。」  (僕のファーストキスだぞ。この年だけど。それに、こんな可愛い子からキスされて嬉しくないなんてことは。A・RI・E・NA・I)


 自分の中でテンションがオーバーヒートしてしまいそうになるが、僕は理性を努めて保った。ここで頭のおかしいやつなんて思われたら。僕は詰んでいた人生をまた詰んでしまうところだった。


 「僕は、その。女の子が男の人と唇を重ねることに対して、なんか、初対面なのに、僕の方が申し訳ないと思いまして。」 僕は極めて紳士的に言葉をつなげた。


 「いえ、私はただ感謝の気持ちを伝えたかっただけですので。けど、私は唇を重ねるのが初めてだったもので、なんていうか、恥ずかしかった気持ちはあります。それでも、今リュウさんとお話して、目を見ていて確信しました。」


 ミルフィの語気が先ほどよりも大きくなっている。そのためか、僕も緊張してしまう。それでも、このフラグか?的な状況は破壊してはなるまいと、必死に紳士的な態度を貫こうと思った。爆破しそうだけれども。


 「何を確信したんですか?」


 「リュウさんはとても優しいお方です。私は最初海辺でリュウさんを見たとき、怖かったんです。お父さんから聞かされていた人間というのは、とても恐ろしいものだったので。だから、リュウさんが怖くて、みんなを守るために息の根をとめようなんて・・・リュウさんみたいな優しいお方のことを何も知らなかったのに。だから、本当に・・うぅっ・ん。・んぐ・・ごめ・・ん・・なさい」


 感極まったのか、最後の方は大粒の涙をこぼしながら話していたので、ミルフィの言葉がはっきりとは聞こえなかったが、何を言いたかったのかはわかった。


 「・・・。」 僕はなんて声をかけてあげればいいのかわからなかった。ただ、ミルフィの青く澄んだ綺麗な髪を撫でてみるだけだった。今の僕にはさっきまでの下心は完全になくなっていた。そして、全く違う気持ちにへと変わっていた。

 きっかけは、最悪な下心だったかもしれない。ほんと、一目惚れだった。でもきっかけはそれでもいいのだ。僕はミルフィの優しさにふれて感じた。僕は僕以上に彼女のことを好きになってしまったんだと。むしろ、好きという感情を通り越して、愛しているといってもいいかもしれない。いや、愛しているのだ。

 また、ミルフィを愛していると自覚して、自分の内面にも大きな変化があることに気がついた。

ミルフィは僕のことを優しいと言ってくれた。今まで偽善だとか自己中だと言われ続けた僕の優しさを、ミルフィは素直に受け止めてくれたのだ。けれど、ミルフィの流した涙に映った自分をみて感じた。いや、確信したのだ。僕の優しさは、偽りだったのだと。今、初めてそれを認めた。簡単なことだった、僕の優しさという嘘は、僕の自己犠牲による自己愛の現れだったということに。けれど、それでも僕はミルフィにだけは嘘をつきたくないと心から思った。そして、僕はミルフィに、笑って過ごしてもらおうと、今はなき妹がくれたネックレスに誓うのだった。

 

投稿の感覚が空いてしまいました。

不定期の投稿になると思います。読者の方には申し訳ないです。


そのうち、ミルフィの絵を載せられたらなぁ。と思っています。

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