無題
書いてみたもののどうしようもなく、晒し中です
半長靴の工員達が巨大な人型の骨格の回りを荒々しく動きまわっていた。
彼らは腰に下げた工具で次々と機体に魔導線を付設して、まるで巨体を廻る血管のように骨格の周囲にそれを這い巡らせていった。
そして天井から吊り下げられた金属の塊が機体を覆うように取り付けられていき、巨体は骨格から肉を持つ人ーー否、肉ではなく鎧、ただ生きていく為よりもそれは戦う事を前提で作られたとしか考えられない畏怖の念を覚える造形であった。
工員達の長が工員達に合図する。
1人の青年を除いて工員達は一斉に機体から下がっていく。
青年は工員達が機体から十分に離れているのを確認すると、巨体の首下背面から機体内部に潜った。
機体内部で青年は座席につくと印を組み、決められた手順で起動式を展開していく。機体内部の水晶盤にほの暗い明かりが灯り外部の様子が映し出された。
青年は水晶盤に映る長が機体につながった金属盤を持っているのを確認する。
「これより耐魔導圧検査を行います」
青年は伝声管からそう言うと機体に僅かずづ魔力をかけ始め、決められた量に保つ。
「定格魔導圧安定、測定願います」
「定格魔導よし、昇圧せよ」
長の声を確認すると青年は息を吐き出しいくつか複雑な印を組み意識を集中した。先ほどの2.5倍の魔力を機体にかけるというより、まるで機体に魔力を吸い取られているように感じる。
「昇圧よし、測定っ願います・・・!」
「測定開始、魔導圧を保て」
決められた手順なのはわかってはいるが、長の単調な声に青年は顔をしかめた。
青年は拳を握り、腹に力を入れ魔力を保つ。額から汗が流れ落ちた。
無限にも感じられる時間、青年は水晶盤の中の長を睨む。
ふいに長が手を上げた。
「耐魔導圧良し、検査終了。」
「了解、魔力落とします。」
青年は息を吐いて魔力を抜き、硬直していた体を座席に預けた。
□
「よ、お疲れさん!」
年かさの工員が青年に声をかける。
「お前さ、耐魔導圧試験出来るほど魔力あったんだな。何で機体乗りにならなかったんだ?」
「いや、まあ、その、・・・何ででしょうねー?・・・ははは」
工員に青年は乾いた笑いを向ける。
「はぁ、勿体ねーなぁ。」
立ち去る工員から視線を外し、先ほどまで乗っていた機体を見上げた。