表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

第一話 入学式⑥

入学式編は、これで終りです<m(__)m>

 「何だあれ・・・?」


 大河は、男がリモコンのスイッチを押すと共に現れた物に、度胆を抜かれた。それはどう見ても、この世に存在しないはずの物だった。それは、ルービックキューブの形をしており、入学式の会場の入り口から入って来て、男の前でピタっと止まった。

 男は、そのキューブのいくつかの面の一部を指で触れると、その触れた部分が光った。すると、その部分から、いくつかの画像が現れた。それと同時に、何をしたのかは不明だが、講堂の明りがパっときえた。


 「何だ、この映像???」

 

 大河はそう言って、首をかしげた。


 「あ、あれは、ゲームについての説明するための画像だと思う。」麦人は、いまだに大河の手を握りながら、恐る恐る涙声でそう言った。


 「麦人、お前知ってるのか?ゲームについて。さっきから、何か様子が変だ。」大河は先ほどから感じていた疑問を麦人にぶつけてみた。すると、麦人は追い詰められたかのような表情になって、大河の顔を瞳をうるませて見上げた。その顔には、何も聞かないでと言っているように見えた。


 「ごめんね。」麦人はそれだけ言うと、再びうつむいた。ふと男の方を見ると、その光景を見て何が嬉しいのか、男は不気味な笑みを浮かべていた。まるで、麦人を知っているような反応だった。さっきも、ゲームの参加者を麦人だけをもったいぶって言わなかった事も気になった。しかし、麦人に聞いても、答えてはくれなさそうなので、その考えを大河は飲み込んだ。

 しかし、その途端。頭の中に声が流れた。それは、檀上で立っている男の声だった。(お前に教えてやろうか?我々が麦人に関心がある理由。そして、麦人が怯えている理由を。知りたいのなら、生き延びろ。今から説明する第1のゲームをな。)(ちょっと待て!!!)男に頭の中で呼び掛けたが、男はフっと笑っただけで、大河を無視した。


 「それでは、諸君。今流れている画像を見給え。」


 男はもったいぶっているような言い方でそう言うと、さっきまでずっと同じ画像だったが、次々と色んな画像が流れ始めた。それは、まるで林もしくは森のような物だった。そこにたまに、高原などが流れていた。これは、いったい何なのか?太河を含めて、麦人と除く全ての生徒が首をかしげた。


 「今流している映像は、明日に開催予定の君たちが参加する第一のゲーム ウルラド・ゲームの舞台だ。よーく見て記憶しておくように。」


 意地の悪い笑みを浮かべて男はそう言って、更に映し出す画像の量を増やして、次々と舞台を見せて行った。見ている中で、20個の小屋のような物を見た。多分、ここで一夜を明かせって事なのだろうかと大河は一つ一つの画像を見ながら、冷静に分析した。その他の画像も、何の仕掛けも無さそうな舞台だった。ここでサバイバルをするとでも言うのだろうか?そう思っているうちに、プツっと画像が消えた。そして、講堂の灯りが再びポウっと灯った。全員がざわざわと何かを語り始めた。男の方を見ると、男の手の中には、いつの間に変えたのか、キューブからマイクに変わっていた。


 「画像を全て流し終えた。」男は何の説明もなくそれだけ言うと、大河をジっと見た。先ほどから、この男は俺に興味があるらしかった。いったい俺に何かついているとでも言うのだろうか。そう思っていると、男が再びマイクを持って言った。

 「ここの生徒の一人が今、冷静に分析してくれているみたいで、サバイバルっていう考えに至ったみたいだけど、大正解だよ。」


 いつの間に考えを読んだのだろうか。大河は首をかしげた。こいつは超能力でも持っているのだろうか。大河はポツリとそう考えていると、男は大河を見るのを止めて、全体を見回した。


 「それでは、ここにいる全ての生徒のみなさんは、落ち着いたようなので、説明を始めよう。」男がそう言うと、全員がピタっと息をするのを止めたかのようにピタっと止まった。そして、大河もその一人だった。両隣にいる二人は、それぞれ異なる反応を見せていた。麦人は、男の声を聴きたくないとばかりに耳を抑えた。明香里は、ワクワクしたようすで目を輝かせていた。大河はこの明香里の様子を見て、プっと吹き出しそうになるのをこらえた。おかげで緊張が解けたようだった。明香里は何かをした訳では無いが、大河は明香里に感謝した。


 「今まで見せていた舞台で、サバイバルと一人の生徒が答えを導き出してくれたが、その通りだ。しかも、これは本物だ。君たちには、“殺しあってもらう”。」男が愉快そうに言うと、講堂の空気が一気に張りつめて、凍りついた。殺しあうだと?太河は目を丸くさせた。すると、隣にいる麦人が大河の手をギュっと握った。


 「やっぱり・・・。」麦人はそう言って、俯きながら涙を流した。「麦人?」大河は心配になって麦人に声をかけたが、彼は聞こえていないようで、一人聞こえない声で何かを呟いていた。


 「詳しいゲームについての詳細だが、今からここにいる全員に配るパンフレットに書いてある各自、自分で確認するように。」遠足ののりで男はそういうと、これまたいつの間に出したのか、キューブのいくつかの部分を指で触れた。今度は、その部分が光ると同時に、生徒全員の頭上に何か空間の裂け目のような物が現れた。そして、そこから薄い冊子が落ちてきた。大河の手元にもその冊子は落ちてきた。それは、20pくらいだと思われる薄い冊子だった。両脇の二人をうかがうと、二人は静かにその冊子の中を読んでいた。明香里は、色んな所でヒっと小さな悲鳴をあげていた。


 大河は、その冊子を読み始めた。まず表紙には、『第一のゲーム ウルラド・ゲーム』と書かれていた。そして、次のページに進むと、そこには、色んな項目が書かれていた。大きく分けると、こうなった。


 ①.期間 4月2日~5月31日 約2か月 PM7時~AM0時 就寝時間AM1時~AM7時。

 ②.場所 サバイバル場 ゲームの主催者が、参加者をそれぞれの小屋に輸送する。

 ③.人数 20人

 ④.説明 簡単には、以上の通りだが、その間の学問に遅れが生じてはいけないので、ゲームの開催時間は、以上の通りに行い、それ以外は、学生生活を行ってもらう。小屋と学校の行ききの仕方は、小屋の中にワープゾーンがあるので、それを使用する事。

      このゲームでは、生徒同士で殺しあってもらう。期間は決めているが、ある一定の死者数を超えない場合は、何人かを無作為に選定し、その人物を抹殺する。規定の人数については、未定。

      死んでしまった場合は、ある所に集められる。そこに入って中を見た物も、一緒の運命をたどると思ってくれて良い。

      ゲームに使用するための道具は、全てサバイバル場にあるそれぞれ参加者の小屋の中に収められている。道具の補充が必要となった場合は、サポーターを任意に選んでもらい、そのサポーターに調達を依頼しなければならない。また、小屋に参加者同士の行き来は禁止。破った場合も、死んでもらう。小屋についてだが、基本の学園生活以外は、寮では無く小屋で生活する事を義務付ける。

      そして、このゲームは映像で中継され、このゲームの関係者全ての、寮のテレビで放送される。

      以上。


      簡単な説明はここまでである。これから更に詳しいルールは、次からのぺージを参照。また、新ルールなどが出来た場合は、冊子の中身が変わるので、毎日の確認を推奨する。



 と行った事が書かれていた。大河はジっと見つめながら、殺し合わなければいけない理由が分からず、首をかしげた。そして、このゲームをする意図が大河を含めて、全員が分からない所だった。様々な事を考えていた大河に、再び男が声をかけてきた。

 (そうだ。海神大河。お前に良い事を教えてやろう。このゲームをやる理由だ。それは、生贄だ。お前達には、われわれが求める物を得るための、生贄になってもらうためだ。どうしてこういう回りくどい事をしているかと言うと、趣味だ。あぁ、そうだ。君たちは我々に抗えない。理由としては、私の能力にある。さて説明はここまでにしてやろう。それにしても、どうして私は君にここまで話してしまったのか・・・。君には、不思議な魅力があるね。君の両隣にいる二人がその“証拠”だ。そうそう私の名前を教えてやろう。“イエス”と言う、よろしく。)


 大河はパっと顔をあげて、男を見た。男の顔は、いつの間にかフードを少しだけ外しており、大河に見えるように大河の方を向いていた。その顔を見て、大河は凍りついた。そこには、“ありえない”顔があった。その顔は、“イエス・キリスト”の顔をしていたのだ。しかし、その事実に他の生徒は気づいていない。誰もが、冊子を読みふけっていた。しかし、例外が一人いた。麦人だ。麦人はキっと、イエスの顔を睨みつけていた。


 「イエス・・・どうしてお前が。」麦人は忌々しそうに小さな声でそう言った。「麦人。」大河が麦人に声をかけると、麦人はハっとしたように大河の方を振り返った。


 「大河・・・。気をつけてね。」麦人はそれだけ言うと、さっきまでの事は無かったかのように再び、顔を下に向けて、本を読みふけり始めた。それと同時に再び、声が聞こえた。


 (ほほう。今はああいう“状態”なのだな。もうすぐと言った所か。それでは、海神大河。我々はこれで失礼するよ。また明日だ。明日には、全ての準備が整っている。)イエスは大河の頭の中にそう呟くと、キューブの違う面を押した。すると、そのキューブはマイクに変化した。


 「それでは諸君。我々は準備のために、これで失礼する。集合場所については、参加者の冊子に現れるようになっている。時間はそうだな。明日の昼頃に出るだろう。それでは、失礼する。」


 イエスは、話しを終えると、マイクを空中に放り投げた。すると、マイクは空中で消えた。全員がそれに見入っていると、その間に、イエスが消えたのだった。しかし、消える様子を大河だけは見ていた。イエスは、スっと消えたのだ。まるで、今まではホログラムだったのでは無いかと言いたくなるくらいに突然に。辺りを見回すと、他のやって来た男達はいつの間にか消えていた。


 講堂の中は、急にざわつき始めた。そして、全員が気づいた。校長の死体も一緒に消えている事に。すると、講堂の舞台袖から老人がやって入って来た。それに、更に全員がざわついていた。


 「こんにちわ。私の名前は、ジュラ。今さっき校長が殺された事を受けて、理事会から臨時で派遣された新しい校長です。よろしくお願いします。全生徒・全教員の皆様。」老人はそれだけ言うと、再び舞台袖に隠れて行った。全員、更にざわついたが、教師陣がここで我に返って、生徒全員を静かにさせ始めたので、全員が数分したら静かになった。


 大河は老人の姿を思いだした。さっきまでの事態を何とも思っていないかのようだった。しかも、校長が死んだのは、30分程度前の事だ。それをほんの一瞬で、こんな対応を行ったのだろうか。更に言うと、どうしてこの現状を“知る事が出来た”のか。あの男達にも疑問がかなりあるが、この学校の理事会にも疑問を感じた。しかし、考えても答えが出ないので、大河は考える事を諦めて、両脇で、いつの間にか自分の手を放してしまった二人を見てから、フっとため息を吐いて、再びいつの間にか始められていた入学式に集中する事にした。

 

 


....secret1...


 入学式を終えると、全生徒は教室に行き、何事も無かったようにオリエンテーションを終えて、それぞれの寮へと戻って行った。しかし、その合間に麦人は、その列を抜け出した。そして再び、時計塔に入って行った。

 麦人の向かった先は、講堂では無く、5階にある教室だった。その中には、生徒のために設置された席に腰かけるイエスがいた。


 「イエス・・・。」


 麦人は咎めるような目つきで、イエスを睨みつけた。イエスはその視線にひるむ事なくクスリと笑った。


 「おや。これはこれは、麦人様ではありませんか。どうされましたか?」イエスは、麦人を嘲笑するような表情で一瞥すると、馬鹿にするような言い方でそう言った。麦人は、そんな言い方に怒る事なく、逆に呆れたように盛大なため息を吐いた。


 「君は何がしたいのかな。僕にはよく分からない。僕は小さい頃の記憶が無いからね。君が何者かって事しか覚えていない。だから直接聞きたいんだ。どうしてこんな事を?」


 麦人が聞くと、イエスは椅子から立ち上がって、大きな声で笑った。


 「そんなの当たり前じゃないですか!!!“欲しい物”があるんですよ!!!あなたは、“覚えていません”がね。何も覚えていないあなたは、黙って見学していてください。海神大河に守られているあなたには、それがお似合いです。それでは。」


 イエスはフっと麦人を鼻で馬鹿にするような態度を見せた。そして、麦人に詰め寄り一気にまくしたてると、イエスと麦人の鼻がくっついたかと思った瞬間、イエスはスっと姿を消した。麦人は、しばらく呆然とその場で立ち尽くしていたが、いきなり気が抜けたのか、その場でグラっとなり膝を崩し、ぐずれ折れた。


 「僕には何も出来ない・・・。」麦人は、涙を流しながら、嗚咽してそう言うと、フラリと今にもこけそうな体感で立ち上がり、ゆらりゆらりと歩いて教室を出て行った。



....secret2...


 麦人が教室から消えると、再びイエスがその場に現れた。イエスは、ニヤリと笑うと、麦人のいた辺りを見た。そこには、涙の後があった。


 「そうそうそうこなくては、儚地の人間は弱くなければ。さて、いつまで隠れている気ですか?真貝明香里。」イエスは、カーテンの辺りを一瞥すると、そこから明香里がゴソゴソと現れた。


 「ばれちゃった???お願いがあって来たんだけど・・・。」明香里はボソっと、何故か分からないが顔を真っ赤にして、恥かしそうにそう呟いた。イエスは、明香里の頭をポンポンと優しく諭すようにたたいた。


 「まだだ。まだ無理だ。君にはもう少し先に参加してもらおうと思っている。それまで待ってくれ。」イエスはそう言って、今度は明香里の頭を優しくなでた。そこで、ふと思いだしたかのように明香里を見下げてイエスは尋ねた。

 


 「そうだ。明香里。お前はどう思う。海神大河について。」イエスがそう聞くと、明香里は、さっきよりも更に赤くなっていた。それを見ただけで、イエスは答えが分かった。「なるほど・・・。」と一人呟くと、何を企んでいるのかクスっと笑うと、明香里の頬をなでた。


 「明香里。」

 「な、何?」明香里はイエスに声をかけられ首をかしげた。

 「お前は、もう少し大人しくしててくれ。可愛い子。」イエスは愛おしそうな瞳をして言った。明香里は、しょうがないとばかりに頷いた。


 「うん。分かった。逆らえないし。良いよ。それじゃあね、パパ。」明香里はイエスに「大好き」と言って抱き着いた。イエスもそれにこたえて、明香里を抱きしめた。そして、しばらく経った後、明香里は教室を出て行った。それを見ながら、イエスは一人ポツンと教室の中で茫然と立ち尽くした。自分の大事な娘が、ここから消えた消失感だった。しかし、いつもの事なので、すぐに立ち直ると、イエスはボソリと呟いた。


 「ウルラド・ゲーム 死者は半分という所かな。海神大河。君は生き残れるかな?」


 イエスは、瞳を輝かせると、キューブを何処からか取り出して、それを机の上に置いて、グルっと回した。すると、キューブの回転数はどんどんと上がって行き、そこの教室は、サバイバル場に変化したのだった。そして、キューブの動作は宙に浮かび停止した。


 「ゲーム プログラムスタート」イエスはそう呟くと、机が無くなり宙に浮かんだキューブは、再び回転した。「さてと子供たち。ほんの数時間。束の間の平和を噛みしめ給え。」イエスは微笑みながら呟いた。そして、イエスのいる空間はどんどんと暗くなっていくのだった。



 next story         第2話 錯綜する思考

 結構。ここで色んな読んでたら分かるようなネタばれをいっぱいしました。今後の展開としては、次の話で、参加者やその他の人達の平和な日常パートを挟んで、ウルラド・ゲームを3話として始めようかなって思ってます<m(__)m>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ