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第九十五話『炎と雷』


『おおっとぅ!? たつみんのライフが半分近く削れたよんっ!!』

「今のは支倉がうまかったと言うべきか。あの巨弾を目隠し代わりにして、即座にスタイルを変更し、辰美の虚を突いた」

『うむん。大したもんだよん』

 武瑠の解説に、クリスが大きくうなずいた。そんなやりとりの間にも、ひばりと辰美の戦いは続いている。

「たぁっ!」

「フッ!」

 気合いを込めて刃を振るうひばりだが、辰美は軽くステップを踏むようにして身をかわし、サブアームで刃をそらしていく。

 やはり、素人のひばりがふつうに切りかかったのでは辰美には届きそうになかった。

「それならっ!」

 ひばりが声を上げると、体の中心線から外へと向かって色が抜け落ちていき、それを追うように赤と黒に左右の衣装が染められていく。

「また変わるっ?!」

 驚きながらも辰美は四本の腕で構えた。そこへひばりが踏み込んでいく。

 そこへ四つの拳が上下左右から襲いかかった。

 瞬間。

 ひばりの目にはすべての軌道が見えた。

 そのわずかな時間差と隙間を縫うように頬やリボン、右肩と左のわき腹に攻撃をかすめさせながら避けて、辰美の体に手を届かせる。

 刹那、赤い光が膨らんだ。

「くっ?!」

 その輝きに、辰美の顔が焦りに包まれ、そのまま赤い火球に飲み込まれていく。

 が、ひばりは嫌な予感に身を震わせ、空を見た。驚愕の色に顔を染めながら、跳ねるようにその場から逃げた直後。

 天雷が火球を叩き潰すように降り注いだ。

 吹き散らされた炎の中から、雷をその身に宿し、辰美が姿を現す。それを見て、身構えるのと同時に、ひばりの右半身が水色に染め上げられた。




「何とかやり合えてるな。ひばりは」

 試合を見ながら綾香が一息ついた。

「それどころかリードしてるじゃんよ? 今の炎攻撃で、東野のライフは三分の一くらいしか残ってないけど、ひばりは八割くらい残ってる。このまま勝てるぜ」

 興奮気味に言うのは秋人だ。

 だが、油断は禁物である。

 それに、綾香はこの試合中、違和感を感じ続けていた。

「……確かにリードはしてるんだけどな。なんだか……妙な感じがするんだよな……」

「ふむ。夏目もか? わたしもなにやら奇妙な気分でな。釈然としないものを感じている」

 つぶやく綾香に同意するのは、長い黒髪をポニーテールにした長身の少女、黒崎雪菜だ。

 違和感の正体を探ろうと、顎に右手をやりながら試合を観察している。

「でも不思議だよねえ」

 すると、そこに割り込むように声が響いた。

 二人が振り向くと、そこにはベンチに座って頬杖をついている赤みの強い茶髪をツーサイドアップにした少女、狩羽あかりがいた。

「不思議、とはどういうことです? あかり」

 あかりへ友人でもある雪菜がまず聞いていた。あかりは軽く背筋を伸ばしてから伸びをすると、猫のような目を細めた。

「だって、あの東野って子は、えっと、イアイだっけ? さっきの桜間さんみたく剣を振り回すのが得意なんでしょ? なのにさっきから鉄砲ばっかつかってるじゃん」

「……そういえばそうだな」

 雪菜あかりの話を聞いて、確かに。と、うなずいた。

 その向こうで、綾香は眉根を寄せていた。

「……なにか、あるのか?」

 いいようの無い不安に駆られながら、綾香は心配そうにひばりを見た。

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