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第八十九話『インターミッション2』


『……勝負有り! 勝者、二年八組、前田俊夫!』

 モニターをチェックしていたレオンハルトの宣言を受け、俊夫は残心を解くと、片菜に向けて礼を取った。

「……楽しかったぜ? またやろうや」

 その俊夫の声に片菜はなんの反応も示すことは無かった。ただ、虚空を見つめるのみだった。




 ライフがゼロになっても、対戦モードが一時的にカットされれば動けるようになる。試合ごとにいったんモードが解除されることで、活動が停止しているアバターが再起動するのだ。

 ライフの回復には治癒系のタレント、もしくは一時間のインターバルが必要となり、その間は対戦モードに参加できなくなる。

 この辺りのやりくりは、大規模戦であるクラス対抗戦本戦では重要だが、このプレマッチには関係のない要素だ。

 ともあれ、対戦モードが解除されると片菜はむくりと起き上がり、七組のブースへと戻った。

「お疲れさまですわ。惜しかったですわね」

 シモーヌがねぎらいの言葉を掛けるが、片菜は反応する素振りすら見せない。しかし、シモーヌの真横を通る瞬間、小さく「……ごめん」とつぶやいた言葉だけは彼女の耳に届いていた。

 そのことに、シモーヌは小さく笑みを浮かべた。

 一方、八組のブースには俊夫が戻ってきた。

「お疲れ! 俊夫」

「お疲れさま♪ 前田君」

 綾香とひばりに出迎えられ、俊夫は笑いながら手を挙げた。

「ああ、まあ何とか勝てた」

 苦笑い気味に言いながらブース内へと足を進める。

 と、その巨体が傾いだ。

「と、とと……」

「わわっ?! 大丈夫? 前田君」

 そんな俊夫を支えようと、ひばりが駆け寄るが、どう見ても支えられそうにない。

「俺に掴まれ前田」

 すかさず声を掛けてきたのは秋人だった。

「……すまんな。毒の効果が対戦モードを終えても残ってるみたいだ。自然治癒にどのくらいかかるやら……」

 秋人に礼を言いつつ奥のスペースに腰を下ろしながら推測を述べる。その内容に綾香が眉根を寄せた。

「……ほんとに厄介だな。毒系タレントは。治療系タレントがいないうちのクラスにとっちゃ鬼門かもな……」

「……それはどうしようもあるまい。出来ることと言えば青島に調べてもらってどのクラスにどの位いるかを確認して警戒するくらいか」

 つぶやく綾香に、雪菜が応えた。綾香はそれに対してうなずく位しか出来なかった。

「けど、うちのクラスって登校してきてない子がふたり居るって話だよ? その子達のタレントに期待ってわけにはいかないかな?」

 不意に思い出したようにあかりが言うと、綾香はそう言えば……。となるが、すぐに首を振った。

「……いや、そのふたりが持っている可能性もそうは高くないだろ。持ってたらラッキー位のつもりで動いた方が良いだろうな」

 綾香はあかりにそう言いながらステージへと目を向けた。

 すると、ちょうどレオンハルトが次の試合をコールするところだった。

『続いては第三試合。二年七組、東野辰美対二年八組、支倉ひばりを開始します。両名とも、ステージ上にあがって下さい』

「あ、あたしの番だ……」

 名前を呼ばれ、顔を上げるひばり。その表情は、不安と緊張に彩られていた。

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