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第八十四話『第二試合』


「さて、いっちょ暴れてくるか」

 軽くストレッチをしながら言う俊夫の顔は、実に楽しげだ。

 だが、対面の片菜は何の感慨もないようで、ぼんやりとした表情のままたたずんでいた。

『両者、前へとお願いします』

 レオンハルトに促され、二人はステージへと足を踏み入れた。

 瞬間、その姿が変化する。

 俊夫の姿は胴着に鉢金、両手両足には真っ赤な籠手と具足とシンプルな装備。

 一方で片菜はといえば、銀色のボンテージスーツにレザー製のジャケットとショートパンツ。ガーターで止めた網タイツにショートブーツという出で立ちで、その手には白木の鞘に入った刀だ。

 その佇まいには一分の隙もない。それを感じて、俊夫は満足げに笑った。

「……なかなかに喰いでがありそうだな?」

 犬歯を見せるように笑う俊夫に、片菜は一言も発せずにぼぅっと俊夫を見る。

 しかし、俊夫は気分を害した様子も無く笑みを深くして見せた。

 そんな二人の空気に、両陣営ともに声を発することも出来ない。

 そのやりとりの間に準備が整え終わったらしいレオンハルトが手をあげた。

『ふたりとも、準備は良いですか? それではクラス対抗戦プレマッチ第二試合! 試合開始!!』

 その声に、俊夫はゆっくりと身構えた。

 その刹那。

 ステージ上に金属音が響いた。


 ぼんやりと立っていたはずの片菜が、いつのまにやら手にした刀を抜き放ち俊夫の目の前に移動していた。

 いつ動いたのかわからなくなるような滑らかで鋭い太刀筋。だが俊夫は、その鋭い斬撃を軽く持ち上げた右腕の籠手で受け止めていた。

 そして、その顔は野生動物のごとき獰猛な笑み。見ている者達が息を呑むような顔だ。

 それを見てなお、片菜は無貌のごとき無表情である。

 不意に籠手に包まれた俊夫の左手がぴくりと動くと、片菜はまるでステージ上を滑るようにして素早く離れた。

 抜き付けられていた刀はすでに鞘の中。

「……やるじゃねえか」

「……」


 楽しそうにほめる俊夫だが、片菜が返すのは沈黙のみ。

 やはり俊夫は気にした風でもなく無く構えを取った。

 右足を前に出し、左足を後ろへ置き、腰を落としながら脇を締めた両腕を軽く前につきだし手を開く。

 頭は若干うつむき加減で目は半開きで上目遣いに片菜を見据えた。

 一種独特の構えである。

 一方で片菜も今度は構えを取った。

 右足を少し前に出し、左足に体重をかけながら少しだけ背を丸める。

 右手はだらりと下がり、左手は白木の鞘へと添えられていた。

 表情無き表情で、銀髪紅眼の少女が俊夫を見る。

 ふたりの間を濃密な緊張感が支配した。それが観客席の人間達もに伝搬したか、のどを鳴らす事さえ出来ない緊張感が、会場すべてを包み込んでいた。

「いいねえ、この空気は」

「……」

 ふと、俊夫が漏らすが、片菜が応じる様子はない。

「アバター同士ってのが残念だが、まあそこは我慢するか」

「……」 小さく苦笑いしながら言う俊夫にしかし、返されるのは沈黙である。

 それを見てなお、俊夫は笑みを深めた。

「さて、喰い散らかしてやろう」

 俊夫は鬼のようなかおで、そう言い放った。

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