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第八十二話『インターミッション1』


「いやあ、負けてしまったよ」

 ステージ上から八組のスペースに戻ってきてふたたび制服姿になった洋介は、そう言ってへらへら笑った。

 その姿に、ひばりは悲しそうに眉尻を下げた。

「……青島君。あ、あの……」

「なぁにやってんだよ。お前は」

 声をかけようとしたひばりを遮るように、綾香があきれたような声で言う。言われて洋介は苦笑いを浮かべた。

「はは、面目次第もないね」

 そんな彼を、綾香の蒼い瞳が軽くにらむように見た。

「油断してるから負けるんだぞ? まったく。でも、ま、お疲れさん。惜しかったな」

 そう言って表情を崩した綾香に、洋介は軽く息を呑んだ。

 と、気を取り直して髪を掻き上げた。


「いやあ、惚れ直してくれたかい? なんなら結婚を前提にお付き合いを……」

「いや、それはない」

 即答だった。

 しかし、洋介は笑って手を振りながら奥のスペースへ向かう。

「……少し涼んでくるよ」

 言い残し、彼のアバターが掻き消えた。それを見て、ひばりは反射的に追いかけようとするが、それを一人の人物が押しとどめた。ツーサイドアップの髪型に、少し肉感的な肢体の少女。狩羽あかり。

「……いまはそっとしておいてあげた方が良いと思うよ?」

「……けど!」

 やんわりと笑いながら言うあかりに、ひばりは声を上げる。

 それを見て、あかりが笑みを深くした。

「優しいね。支倉さんはさ」

「え?」 唐突に言われて戸惑うひばり。

 しかし、次の瞬間。あかりの顔が真顔になった。

「けど優しさは、時には毒になることもあるよ」

「?!」

 そんなあかりの言葉にひばりはのどを詰まらせたかのようになった。

 そんな彼女に、あかりはふにゃりと笑って見せた。

「……青島君も男の子だしね。見ないでほしい姿もあるんじゃないかな?」

 あかりに言われ、ひばりは少し悩むような顔になったが、すぐに表情をやわらげた。

「……うん。そうだね」

 そう言って、ひばりは洋介のアバターが消えた辺りを見つめた。




 薄暗い部屋に、いくつもの横倒しになった卵のような機械がいくつも並んでいた。

 リンクネット内へ移行するための感覚変換機だ。

 その一つが開き、中から少年が顔を出す。

「……くそ」

 少年、青島洋介は悔しそうに歯噛みした。




『そんなわけで! 皇見翔華ちゃん、ふたたび惨☆状!♪』

 ステージの真ん中で、理事長の翔華が☆を飛ばしそうな勢いで敬礼し、ウインクを飛ばしていた。

『えーっと、やっぱり明確な決着の着き方が目に見えないのが不満だって声があたしのアンテナに届いたから、アバターのデータ構造の耐久値を可視化して表示してみたわ。具体的にはライフバーみたいなもんね。実際には、耐久値の上限はパラメータで換算されるから一律では無いけどね』

 言いながら頭上の緑のバーを指さした。

『まあ、明確な数値の方が良いって声が多ければ、そちらも検討するわ。その辺り観客のみなさんも随時ご意見をよろしくぅっ☆』

 くるりと周囲を見回して、翔華が笑った。

『……それでは続いて第二試合を楽しんで頂戴ね♪』

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