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第八十話『決』


「だああぁぁっ!!」

 叫びとともに和也はトリガーを引いた。瞬間。銃口からクリスタルのように透明な液体が射出され、洋介に迫った。

 しかし、その一撃は彼の頬をかすめていっただけにとどまった。

 続けてトリガーを引く和也。

 だが。

「くそっ、くそっ! なんで……」

 弾丸は射出されなかった。

 それを見て、洋介は息を吐いた。

「……いや、今のは驚いたよ」

 つぶやきに、和也が彼を見た。

 対して肩をすくめつつ、洋介は口を開いた。

「撃つことが分かっていたのにまったく反応できなかったよ。狙いが良ければ、あるいは二発目があればそこで終わっていたかもしれないね。けど……」

 そして和也を見る。

「……君、もしかしてそのタレントの力をほとんど引き出せてないんじゃないのかい?」

 余裕の笑みを浮かべ。

 反対に、和也は血の気が引きそうな顔になった。

 よくよく隠し事が苦手なようだ。

「……スタイルチェンジは利便性が高く、能力の多彩さが売りだ。パラメータの変更などは副次的な産物に過ぎない」

 洋介は、喋りながらリボルバーをチェックする。

「君のスタイルは、この戦いで四つ見せて貰った。見せ過ぎな感はあるけどね?」

 そして顔を上げ、テンガロンハット越しに和也を見る。

「今回見れたのは、赤、青、紫、緑。その中で特殊効果を発現させたのは紫だけ。ほかの三つのスタイルは普通に攻撃しただけだ。スタイルの出し惜しみをしていない割に、特殊効果をまるで見せない。紫のバリヤーの欠点が露呈したにも関わらずだ」

 強い口調にたじろぐ和也。

 洋介は笑みを浮かべた。

「……つまり、君はまだ自分のタレントを使いこなすどころか、完全に把握することも出来ていない。違うかい?」

 洋介の指摘に、和也は真っ青になった。

 その様子を見ていたシモーヌの顔色も変わった。

 それらを見て、綾香がうなずく。

「当然だよな。まだ一週間だ。使いやすいタレントの奴だって、どう応用していくかで悩むくらいだしな」

「あたしも使いこなすって意味だとまだまだだしね」

 ひばりが答えながら苦笑いした。

 その頭に大きな手が乗った。

 俊夫だ。

「まあ、支倉はまだまだ基本的なことをやるべきだな。そのために武装の扱いをレクチャーしているんだ。焦らんようにな」

 巨漢が笑いながら彼女の頭を撫でた。

「んにゃあっ?! 撫でないでよっ!?」

 突然のことに憤慨するひばりだが、俊夫は気にした風でもなかった。

 と、声が響いた。

「……確かに、僕はこのタレントの力を半分も引き出せていないよ」

 その鎧が、赤く染まった。

「このタレントの力は本来こういうものだから」

 ついで、和也の瞳が金色に輝いたかと思えば、ステージ上が薄暗くなっていく。

「こ、これは……?」

 看破していたことで余裕を見せていた洋介が、驚いて周囲を見回した。

 構わず和也は続ける。

「このタレントは、フィールドに干渉するんだ」

 そして、彼の背後に巨大な満月が顕れた。

「自分に有利なフィールドを構築して戦えるんだ!」

 叫んで、突進する和也。そのまま繰り出される鋭い一撃に、洋介はギリギリで避けた。

 その瞬間、洋介は違和感を覚えた。だが、和也の攻撃は止まらない。

 小太りした少年とは思えないほどのキレで拳打を繰り出す。

 それが、洋介のマントを引き裂いた。

「くっ?!」

 歯噛みしながらマントをパージしつつ転がって避け、起きあがる間め惜しいとばかりにトリガーを引く。銀光が溢れて“銀の弾丸”が和也に向かった。

 和也はその白銀を左の拳で殴りつけた。

「ぐぅっ?!」

 光が弾け、和也が大きく後ろへ飛ばされる。

 即座に立ち上がり、ズタズタになった左腕を押さえながら洋介を見る。

「和也っ!! 時間がっ!!」

 うわずったような声はシモーヌのもの。和也はそれに応えて走り出した。

 その勢いに呑まれたように洋介は後退した。

 それにすら追いつこうとする和也に、洋介が今一度銃口を向けた。

 溢れた銀色に和也が回し蹴りをたたき込んだ。

 甲高い音を引いて、弾丸が明後日へ向かい、和也の右レガースが砕けた。

 そして、その腹に銃口が押し当てられた。

「しまっ……」

「lastshooting……」

 つぶやきとともに、銀色の光が和也の体を撃ち抜いた。

 反動で大きく飛ばされ、地面に落ちた彼の姿に、シモーヌの目からこぼれるものがあった。

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