第七十八話『攻防』
「……フ」
和也の張った障壁を見て、洋介が不敵に笑った。
「……?」
その意味が分からずに、和也が訝しげな顔になった。
その時。
ドンッ!!
と、銃声が響いた。
「?! うわぁっ?!」
突如として背面から散弾を浴びる和也。
「和也っ!!」
これには固唾を飲んで見守っていたシモーヌですら声を上げた。
見ていた者達が呆気にとられる中、洋介はいつのまにやら支えていたリボルバーから離した左手を掲げて見せた。
「……そ、それは」
その掌中にあるものを見て、和也が驚いた顔になった。
ハンドガンのグリップとトリガーだけになったような機器。
『ああっと?! これはリモコングリップだよぉん!?』
それを見てクリスがマイクを片手に驚きの声を上げた。
それを受けて和也が背後を盗み見た。すると目の端に入ったのは、銃口からわずかな硝煙の煙を吐き出しながら明後日の方を見ている洋介のショットガンだった。
「うまいな。ショットガンを捨てたのは布石。自身が距離を取る際に、相手の動きを誘導し、射線に入れていたんだろう」
『うむん。しかし、銃口は向こうを向いてるよん?』
「発射の際の反動で跳ねたか回ったかしたんだろう。事実として、斉藤へのダメージも少ない。だが……」
武瑠の言うとおり、和也へのダメージは大きくはない。
反動で銃口がブレ、散弾の効果範囲の広さから和也の背中を撫でたような程度だ。
しかし。
「……その障壁、ダメージを無効化するようだけど、正面。あるいは一方にしか効果がないね?」
洋介の言葉に、和也の肩がわずかに動いた。
「……しかも、張っている間は君は移動……いや、身動きがとれない。違うかな?」
「……」
その言葉に、今度ははっきりと肩が震えた。
「……図星かな?」
洋介が自信ありげに笑った。
「もしものときの保険だったんだけど、うまくいってくれて助かったよ」
「く……」
和也が悔しそうに歯噛みすると、彼のハーフアーマーが赤くなった。
「……バリアはおしまいかい? なら今度はこちらからいかせてもらうよ!」
リボルバー片手に洋介が走り出し、和也がそれを追う形になった。
『さあ、またもや状況が変わったよん! 距離を取りつつ射撃戦に持ち込むあおっち! しかし、それを追うかずやんの動きが鈍いよん!』
「当然だろうな。斉藤はショットガンの銃口を常に気にしなければならなくなったが、青島は自由に動ける。それでは集中力を発揮できん」
『おおう。そんではこのまま一方的な展開かなん?』
「……いや、手はある」
『おお? なにがあるのかなん?』
「なに、難しいことじゃない」
武瑠がクリスに応じた瞬間。鈍い破壊音がステージ上に響いた。
青いアーマーから紫に変わった和也のハンマーが、ショットガンを叩き潰した音だった。
「こういうことだ」
その様子を眺め、武瑠は淡々と言った。




