第七十七話『二人のタレント』
『おおっとぉっ?! これは決まったかぁっ?!』
展開された光景に、クリスがマイクを片手に立ち上がった。その隣で、武瑠が両肘を着いて口の前で手を組みながらつぶやいた。
「……さて、それはどうかな?」
その言葉にクリスがその青い瞳を向ける前に、会場がどよめいた。
『このどよめきはっ?!』
クリスが再びステージ上を注視すると、そこには紫色のハーフアーマーを着けた和也が、真っ黒なハンマーの柄を右手に持ち、左手をかざして立っていた。
「……情報は正しかったみたいだね」
つぶやきながらも銃を構える腕をおろさない洋介。
対して和也はゆっくりと左手をおろした。
「間に合った……」
大きく安堵の息を吐く和也。
その瞬間、洋介が真横に走った。
「あっ?!」
あわてて和也がそれを追わんとするが、その動作は緩慢だった。
その隙に、洋介が間合いを取った。そして左手の銃をホルスターに戻し、右手の銃の弾丸を確認した。
「さて、あと四発分か。僕の“銀の弾丸”は」
“銀の弾丸”。洋介のアバターのタレントだ。実体弾射出タイプの武器の弾丸を強化し、威力を高めるタレントだ。この手の能力にしては珍しく、複数回使える。
その分威力は抑え目だが、回数が使えるのは強みだ。
「……彼もスタイルチェンジタイプのレアタレントだって未確認情報を得て、速攻を狙ったけどダメだったか。まあ、まだ逆転の目はあるかな?」
つぶやき、和也を見る。そのダメージは残ったままのようだ。
と、和也のハーフアーマーの色が宵闇のような青さに変わった。
「くるかっ?!」
洋介が身構えたときには、和也はハンマーが変じた黒い短刀を片手に獣のごとき俊敏さで襲いかかってきた。
「だああぁぁっ!!」
「くっ?!」
その早さに洋介の反応が遅れた。
黒い斬閃が振るわれ、甲高い金属音が響いた。
洋介が、手にしたリボルバー銃で短刀を逸らしたのだ。
しかし、和也はすぐさま短刀を構え直して突きを放つ。
その尖端が届くより早く、洋介は横へ転がりながら避け、狙わすに銃を乱射した。
たまらず和也は大きく後退した。
息もつかせぬ攻防に、会場が静まり返った。
『……こ、これは凄ーいよんっ!!』
司会のクリスが声を上げると、会場が沸いた。しかし、戦っている二人はそれどころではない。
洋介は即座に片膝立ちになりながらリボルバーを両手で構え、片目で照準をつけてトリガーを引く。
銀光が溢れ、白銀の弾丸が撃ち出された。
すると和也のハーフアーマーが紫色に染まった。
そして、銀色の軌跡が彼にたどり着いた瞬間、爆光が広がった。
『おおうっ?! 青島選手のタレントがまたもや決まったよん』
「……高威力タイプだが、回数が使えるようだな。それだけに威力も抑え気味のようだが」
興奮気味のクリスの横で、武瑠が淡々と解説する。
そして、光が消えたとき、和也の前に紫色の障壁が出来ているのが今度は見えた。
『おおう、バリヤーだよん。相変わらずスタイルチェンジタイプのタレントは反則級の多彩さだねい』
「……どんなタイプの障壁かはわからないが、青島にとってはやっかいな能力だな。さて、彼がどう攻略するかが見物だよ」
『うむん? あおっちはまだ諦めてないと?』
「……あの目を見ればわかる。彼はまだ勝つ気だ。おそらく今の一発は、斉藤がどう防いだのか確認するために使ったんだろう。何回使えるのかはわからないが、思い切りが良いな」
『うむん♪ これは名勝負の予感だよん!』




