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第七十六話『洋介対和也』

「いくよっ!!」

 その声とともに、和也が突進した。しかし、洋介にはあわてた様子もない。


 タンッ!!


 と、短音節の破裂音が響いて、和也がバランスを崩した。

 素早く銃を引き抜いた洋介が、和也の脚が出た場所を狙って撃ち抜いたのだ。

「わわっ?!」

 つんのめって顔面から地面へとダイブする和也。

 その様子を気にするでもなく洋介は硝煙の煙をたなびかせたリボルバー片手に後退した。




「さてさて、いよいよ試合開始だよん♪ 司会進行はおねーさんことクリスティーナ・ウエストロードでお送りするよん♪」

 その様子を見てとれる実況席で、クリスは楽しげにウインクしてみせた。

 ついで横に手を向ける。

「んでもって解説は、二年七組北丘たけぴーだよん」

「たけぴーではない、武瑠だ」

 否定する顔も鉄面皮のごとく揺るがない黒髪ボブカットで小柄な少女、北丘武瑠がムッツリと応えた。

「……暗いよん。もっと明るくできないかなん?」

「……悪かったな。これが地だ」

 さざ波ほども表情を揺らさずに言う武瑠に、クリスのこめかみを、汗が伝う。

「……絡みづらいよん」

 つぶやくが、気を取り直してマイクに向かう。

「さらにゲストは! 学園で一番えらい人〜♪ おーみしょーかりんだよ〜ん♪」

「やっほぅついにあたしの出番よ! こうなったらあたし好みの美少年も美少女もとことん喰い散らかし……」


 言いながら握った拳の中指と薬指の間から親指をにゅっと出して高らかに宣言し……。




【しばらくお待ちください】




「さあ、何事もなかったかのよーに解説にうつるよん!」

 マイク片手に宣言するクリス。その隣の武瑠は無表情だ。

 そして、ゲスト席には、なぜかアライグマのぬいぐるみが置かれていた。

「さて、たけぴー。開始早々に突進したかずやんをあおちーが阻止したよん。この流れにはどんな意味があるのかなん?」

「たけぴーではない。まあ、斉藤が接近戦タイプと見て、青島は距離を取ることを選んだのだろう。装備も軽装で、動き回ることを主眼に置いているようだしな」

「ふむん。けどもかずやんが追跡しない可能性もあるんじゃないかなん?」

「もっともな話だ。だからこそ、試合開始前になにやらいろいろ声をかけていたんだろうな」

「そうやって自身を追ってくるようにし向けたんだねい」

「どれほどの効果を見込んでいたかは知らないが、うまくいったようだ。後は距離を保ちつつ銃を撃ち続ければ良いはずだ」

「にゃるほど。魔法の言葉がなんだったかはわかりかねるけどねい。うまく機能したようだよん♪ 果たしてこのままあおっち優勢で進んでしまうのかっ?!」

「……まあ、斉藤の奴はあれでなかなか見所のある奴だよ」

 テンションの高いクリスの隣で、武瑠が小さくつぶやいた。




「……さて、接近戦につき合う必要はないからね」

「ま、待て!」

 和也は急いで起きあがると、洋介を逃がすまいと走り出した。

 するとそれを待っていたかのように洋介が足を止め、もう片方の手で腰からショットガンを引き抜いた。

 轟音とともに無数の散弾が吐き出され、和也の姿を覆い隠さんと迫った。

「わあっ?!」

 悲鳴を上げた瞬間には和也は鋼弾を浴びていた。が、そのダメージは最小限となっていた。

「……やるじゃないか。あの一瞬で顔をかばいながら身を縮込ませて被弾を最小にするなんて……」

 言いながら後方へ飛び退き、ショットガンを捨て去る洋介。

「けど、ダメージは決して小さくはないようだね。ここで決めさせて貰うよ! リミットリリース!!」

 躊躇することなくタレントを解放する。

 すると手にしていた二丁のリボルバーが輝いた。

「うっぐっ?!」

 和也があわてて逃げようとするが、ダメージからか素早く動けずにいた。

「バイバイだよ!」

 引かれた二つのトリガーに応じてリボルバーが回転し、ハンマーが叩いた。


 瞬間。


 閃光が溢れ、和也を飲み込んだ。

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