第七十五話『第一試合!!』
「さて、双方とも準備は良いかな?」
ステージの両側に姿を見せた七組と八組の生徒の間に立ったひとりの男性教諭が柔らかく訊ねた。
学年主任のレオンハルト・タングセン教諭だ。
ドイツ出身でアッシュブロンドの美形であり、学園内にファンクラブまである二十八歳だ。
そんな彼がこのプレマッチの審判を務めるらしい。
しかし、声をかけられた双方のクラスの代表であるブリギッタも綾香も、対戦相手の事しか見ていなかった。
「問題ありませんわ」
「こっちも大丈夫だ」
互いに目を離すことなくレオンハルトに応える。
彼はそんな二人の様子に小さく苦笑いしながらうなずいた。
「わかりました。それではクラス対抗戦プレマッチ第一試合を開始します」
その宣言に、会場から歓声が上がった。
「行きなさい和也。あなたなら勝てますわ!」
「斉藤君! がんばって!」
「うん!」
シモーヌに促され、辰美の声援を受けて、和也はステージ端の待機スペースから前に出てくると、そのままステージ上のバトルスペースへと足を踏み出した。
「よし、頼んだぞ洋介!」
「頑張ってね!」
「ぬかるなよ」
「勝てよ!」
綾香を筆頭に、ひばりや俊夫、秋人も声援を送り、洋介が髪を掻き上げた。
「まあ、任せたまえ」
言いながら待機スペースを出て歩き始めた彼が、バトルスペース上に足を踏み入れると、その姿が変化した。
レオタードのような肌に密着したグリーンのボディスーツに、メカニカルブーツ。両腰にリボルバータイプのハンドガンを下げ、ブラウンのマントを羽織り、テンガロンハットをかぶった姿は、ガンマンを意識しているらしい。
対して同じくバトルスペースに足を踏み入れた和也はシルバーのボディスーツに、赤いブレストアーマーと黒いガントレットとレガースだ。
彼らはすでにアバターだったのだ。ホログラム投影が可能な央華学園ならではの仕掛けだ。
和也は洋介の姿を認めると、即座に身構えた。
しかし、洋介は自然体で立っていた。
「やあ、斉藤和也君。僕は青島洋介さ。よろしく頼むよ」
「……どうも」
フレンドリーに声をかけてきた洋介に、和也は警戒を解かずに小さく会釈した。
「さて、君のことはある程度調べさせてもらったよ」
「!」
洋介の言葉に、和也の肩が小さく震えた。
「ブリギッタさんの幼なじみと言うだけで、普段から金魚のフンみたいに彼女にくっついて回ってるだけ。勉強が出来るわけでも無く、運動が特に秀でているわけでもない。容姿が優れているということも無い君を、なんでブリギッタさんが容認しているのか? 僕にはよくわからないね」
「……」
肩をすくめながら言う洋介に、和也は黙したまま語らない。
そんな和也に、洋介はため息を吐いた。
「……やれやれ。なにも言い返さないのかい?」
「……」
挑発するような洋介に、和也は構えを解くことはない。
そんなやりとりの間に、準備が整ったらしく、レオンハルトが右手を高々と掲げた。
『それでは、クラス対抗戦プレマッチ第一試合、開始!!』




