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第七十三話『クリス、ON stage☆』


 校庭に設けられた特設ステージ。その中央で、ヘソ出しバニーガールスーツを華麗に着こなした金髪碧眼の少女が、マイクを片手に左手を挙げながらアピールした。

 その姿はステージ上空に浮いた、大型の空中投影ディスプレイに大写しになっており、彼女はそれを意識してポーズを取る。

 サラサラの美しいボブヘアーに右側が前へと垂れた白いウサ耳カチューシャ。白くて細い首筋には黒い蝶ネクタイのチョーカーを着け、きめ細やかで照明の光を照り返す白磁のごとき白い肩を完全に露出させ、美しい弧を描いた鎖骨を惜しみなくさらす。

 深い谷間を形成するFカップという二つの巨大な白いマシュマロに張り付いている赤いバニースーツは、トップスとボトムスがわき腹のあたりで金色のリングによって接続され、彼女の白いおなかとその中央にあるすぼまりをまるでひし形の窓から覗かせるように魅せ付ける。

 そのトップスは、正面側に吸い着くようにしているだけで、背面側は大きく開いており、健康的な肩胛骨も、しゅっと伸びた白い背筋も、お尻の辺りまでなにも覆うものはない。

 流麗な腰のくびれを覆うボトムスはフロントはV字に、バックはY字になっており、特に下腹部まで露出している切れ込み具合は半端ではない。

 尾てい骨の辺りに付けられたふわふわの白いウサギのしっぽが、美麗な曲線を描く尻を彩り、そこから伸びる程良い肉付きのふとももと、細く長い脚を覆う黒い網タイツは、見るものに扇情感を感じさせた。

 赤いハイヒールを完全に履きこなし、ダンスでも踊らん限りにくるくると回りながら周囲へとアピールしていく。

 それでいて下品なところは無く、むしろ上品さを感じさせる立ち姿こそがこの少女の真骨頂だろう。

 そして、艶やかさと愛らしさを兼ね備えた笑みを浮かべた口元がうごめき、艶やかでふっくらとしたくちびるが開かれた。

『れでぃーす♪ えーん、じぇんとるめーん♪ これより、央華学園高等部二年、クラス対抗戦ぷれまっちをはっじめっるよ〜ん♪』

 少女、クリスティーナ・ウエストロードの宣言に、ステージ周囲に設置された観客席から歓声が上がった。




「そんな訳で司会のクリスティーナ・ウエストロードだよん♪ 気軽にクリスって呼んでほしいよん♪」

『クリス〜っ!』

「はぁい☆」

『ブラボーーっ!!』

 マイク片手に自己紹介するクリス。ノリの良い男子が声を上げれば、それに応えてウインク&投げキッスである。

 会場のボルテージは振り切らんばかりだ。

「そんなわけでぷれまっちだよん♪ みんな説明を良く聞いてねい♪」

 そういってウインクした彼女に、会場全体が聞く体制に入った。




「……やっぱすげえな。クリス姐ーさんは」

「……」

 感心するようにつぶやく綾香を、ひばりが心配そうに見上げた。

 それに気づいて綾香の蒼い瞳がきょろりと動く。

「ん? どうした? ひばり」

「……大丈夫? 綾香ちゃん」

 綾香に聞かれ、ひばりは心配そうに訊いた。

 綾香はすこし虚を突かれたような顔になったが、すぐに苦笑いを浮かべた。

「……そうだな。ちょっと緊張してるし、少し、怒ってる」

「怒ってる?」

 綾香が素直に吐露したことに驚きながらも、ひばりは不思議そうな顔になった。

「……ああ。タカが賞品になってることにムカついてるってのもあるけど、あいつが……鷹久がそんなことを簡単に了承するはずがないってあたしは知ってる」

 顔を上げ、『賞品席』とあるイスに座った鷹久を見やり、拳を握った。

「ってことは、了承せざる終えない何かがあるって事だ。それに気づけなかったあたしのバカさかげんにさ……」

 自嘲するような笑み。不意に、握った拳に触れるものがあった。

 ひばりの小さな手だ。

 驚いた綾香は小さな少女を見た。はたして彼女は笑顔だった。

「落ち着いて、がんばろうよ♪ ね? 綾香ちゃん♪」

 ひばりの柔らかい笑顔に、綾香は「そうだな♪」と応えて笑った。

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