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第七話『ではでは教室へ、GoGo♪』

 クラスが判明した五人は連れだって昇降口をくぐった。

「し、死ぬかと思った……」

 つぶやくひばりの顔は真っ青だ。掲示板に自分達の名前を見つけたひばりだったが、そのことに琴代が飛び跳ねて喜んだため、遊園地の絶叫マシーンもかくやという恐怖を体験した。

 何しろ琴代は支えていたひばりの体を離して万歳しながら飛び跳ねたのだ。

 ひばりは琴代の頭にしがみついて悲鳴を上げた。

「……ごめんね? ひばりちゃん……」

 さすがの琴代も悪いと思ったのかしゅんとして体をちぢ込ませている。

「ま、まあ今度から気をつけてね? っと」

 落ち込む琴代に優しく言って、ひばりはげた箱に向かったが、げた箱を見て呆気にとられた。

 げた箱の扉には少し浮き上がるようにしてホログラムで名前が五十音順で表示されているのだが、ひばりの名前は一番上の段にあった。

 ひばりは顔をしかめてからげた箱に体を寄せて手を伸ばす。

 が、届かない。

 さらにつま先立ちになってみるが、扉の端に指先が触れるかどうか位までしか届かなかった。

 それを見かねてか、琴代がひばりに近づいた。

「大丈夫? ひばりちゃん。入れてあげるね?」

「あ、うん。ごめんね? 琴代ちゃん」

 ひばりの脱いだローファーを、げた箱に入れてやる琴代。

 そんな彼女を申し訳なさそうに見るひばり。そこへほかの面々が集まってきた。

「どうした? ひばり、琴代」

「げた箱だな。ひばりが指定されてる場所が高すぎて届かないんだ」

 ふたりの様子に慎吾声をかけると、状況を見た綾香が説明する。

「おそらく何かの手違いなんだろ。去年の身体測定でデータはあるはずなんだから、ひばりがこんな高い場所を指定されるのはおかしいしな」

 思案しながらつぶやく綾香の横で、鷹久がディスプレイを呼び出していた。

「データ管理していても、こんなケアレスミスが発生するものなんだね。うん。教室で担任に申請すれば大丈夫だ。よかったね支倉さん」

 ディスプレイで何事かをチェックしていた鷹久だが、軽くうなずきながらひばりの頭に軽く手を乗せた。

「う、うん。ありがとう吉田君。けど、あたしの頭に手を乗せるのやめてくれないかな?」

「っと、ゴメン。つい小さい子を相手にしてるつもりで……」

 微妙そうな表情で見上げてくるひばりに、あわてて謝る鷹久。その様子を見て、綾香が笑う。

「タカは子供好きなんだよ。親戚の小さい子の面倒とかよく見てるしな♪」

「余計な事を言わないでよ……。支倉さんが落ち込んでるじゃないか」

 綾香の言葉を鷹久がたしなめる。

 見ればひばりが、どんよりとしたものを背負っていた。

「……あたしちっちゃくないもん……」

 今度はそれを見た綾香があわて始めた。

「い、いや、そういうつもりで言った訳じゃないんだひばり。ゴメン」

「ふぇっ?! いやいいよ。それよりはやく教室に行こうよ。ね?」

 勢いよく頭を下げる綾香に恐縮したひばりがそう言うと、綾香が顔を上げた。

「そうか? じゃあ教室に行くか。二年八組だよな?」

 少しすまなそうにはしているが、綾香は調子を取り戻しながら鷹久に訊ねた。彼は彼女に答えながらディスプレイを操作する。

「そうだね。何の因果か五人とも同じクラスだしね。場所は東校舎四階か」

 鷹久がマップを表示したディスプレイを倒すと、高等部の校舎平面マップが階層ごとに重なるように浮かび上がった。

 央華学園高等部の校舎はなかなか大きい。

 四つある校舎はどれも四階建てであり、それぞれに施設を常設されている。

 昇降口のある中央校舎は、理科室や音楽室、視聴覚室などの設備が二階から四階に配置されており、移動教室では大抵ここにくることになる。学園のクラス数も多いためか、それぞれの設備は二つ以上存在するがそのどれもが中央校舎にあるわけだ。

 中央校舎から右手にあるのが東校舎。

 第二学年のクラスが集められているのがこちらで、二階から四階までに四つずつ教室があり、最大十二クラス編成可能である。

 一階には職員室、保健室、学園長室があり、教室と職員室の近さから、第二学年が一番油断できないと言われている。

 この東校舎からは広いグラウンドが一望でき、中央校舎との接続部を経て、屋内スポーツ設備と体育館を集めた体育場と運動部の部室棟に近い。

 東校舎と反対側にあるのが西校舎だが、中央校舎との接続部を真ん中に南北へ伸びるようにして二つの校舎がある。

 南側が東校舎とほぼ同じ作りで、第一学年が集められているが、こちらは一階部分も教室であり、四階部分に三年生が入っている。

 北側は三階と四階はふつうの教室となっており、二階と一階には美術室や電算教室などが集められている。

 この西校舎北側と体育場の間が中庭となっていて、さらに向こうにに文化部の部室棟が見えた。

 そこから駐車場を挟んで向こうが大学の敷地となっている。

 しかし、現在のところひばりたちにはあまり関係が無い場所だ。

 鷹久は浮かび上がったマップの四階部分をひょいと持ち上げると、それを拡大した。

「教室はどの辺りかなぁ?」

「八組の教室は、中央校舎に近い場所だね。じゃあ行こうか?」

 琴代の問いに答えながら、鷹久はみんなを促した。

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