第六十八話『おねーさん、現れる!!』
「…………」
時は飛んでプレマッチ当日。
校門前で、癖のある金髪に碧眼の少女が顔に○を三つ作って立ち尽くしていた。
そこへやってきたのは、学園への坂を青息吐息で上ってきたひばりと、その幼なじみであるデコボココンビである。
「あ! ひばりちゃん、シンくん見て見て? あやちゃんだよ?」
「んぉ? ほんとだ。珍しくひとりじゃねーか」
「はあ……ひい……え? あ、綾香ちゃん? はあ……ひい……」
息も切れ切れながら綾香を見るひばり。
「はぁ、ふぅ、おはよう綾香ちゃん。なにしてるの?」
彼女に声をかけながら、その蒼い瞳が見るものへと目を向けた。
そして固まった。
“央華学園高等部二年クラス対抗戦プレマッチ開催”
デカデカとそう書かれた横断幕に、きらびやかなゲート。宙空には空中投影タイプの看板が乱舞し、昇降口へ続く道には屋台が立ち並んでいる。そこで鯛焼きやらクレープやらたこ焼きやら焼きそばやらを作って売りさばいている連中はどう見ても学生にしか見えない。
その状況に戸惑う生徒続出である。
「……なにこれ?」
呆然とつぶやくひばり。その隣で琴代が目を輝かせ、慎吾があきれたような顔になった。
「……っと、おはようひばり」
ハッとなった綾香がひばりに挨拶をすると、ひばりもおはようと返した。
しかしふたりとも未だ放心気味だ。
「……ねえ綾香ちゃん、央華祭って秋だよね?」
「……そのはずだ」
うろんげな顔で訊ねるひばりに、これまたうろんげに答える綾香。
ふたりの間に沈黙が落ちたその時。
「おおう♪ 盛り上がってるねい♪ けっこうけっこうコケコッコー♪ だよん♪」
と、陽気な声が響いた。
ハッとなって四人が振り向けば、そこには楽しそうに笑う金髪ボブに碧眼の少女、クリスティーナ・ウェストロードの姿。
「ク、クリス?!」
「姐さんっ?!」
ひばりと綾香が同時に声を上げると、クリスは笑顔で右手を挙げた。
「は〜ろろん♪ おねーさん参上! だよん♪ 今日も元気そうだねい、ひばりんにあやっぺ♪ ことよっちにシンシンもおっはろ〜ん♪ だよん♪」
「おっはろ〜ん♪」
「だれがシンシンだっ!? オレはパンダじゃねーぞっ!?」
にこやかに挨拶するクリスに、琴代が笑って挨拶を返し、慎吾がいきりたった。
それを見て、クリスは肩をすくめる。
「やれやれだよん。シンシンは心に余裕が無いねい」
「てめえに合わす必要もねえだろうが。あと、シンシンをやめろ」
「もう、慎吾君! ごめんね? クリス」
クリスに対して噛みつく慎吾をひばりがたしなめた。
慎吾が不満そうに舌打ちするのを見て、ひばりが嘆息し、クリスが笑みを浮かべた。
「別にかまわないよん? ひばりん♪ このくらいはジャレてる範疇だしねい♪」
余裕を以て言うクリスにひばりも笑みを浮かべた。
「それより姐さん。これはどういう状況なんだ?」
話がひと段落したのを見計らって、綾香がクリスに訊ねた。最初の口振りからして、クリスが何かを知っていると思ったからだ。
そしてこの質問を待っていたとばかりに金髪ボブカットの少女は得意げに胸を張った。
「うむん♪ これはねい、おねーさんぷれぜんつ、“クラス対抗戦プレマッチフェスタ”だよん♪」




