第六十七話『その頃のシモーヌさん♪』
「そういう訳で、みなさんにはがんばってもらいたいところですわ!」
ところは変わって2-7の教室。
六人の生徒を前に、金髪碧眼縦ロールの少女、シモーヌが気勢を上げる。
それを真面目に聞いているのは半分の三人ほどだ。
その事に気づき、シモーヌの機嫌が下降線を辿った。
「……聞いてますの?! 千葉君、桜間さん、山岸さん!?」
言われてそれぞれ顔を上げた。
読みふけっていた本から顔を上げた黒髪オールバックにメガネの少年、千葉惣一。
ぼんやりと外を眺めていたショートボブの銀髪に紅眼の少女、桜間片菜。
机に突っ伏しヨダレを垂らして寝ていた天然パーマで赤茶色の髪に小さな体躯の少女、山岸楓の三人だ。
「……そんな事を言われてもね。もともと君が勝手に決めてきたことだろう? 僕にとってはどうでも良いことだよ」
冷淡に言うのは惣一だ。その鋭い眼光に射抜かれたかのような錯覚に、シモーヌは鼻白んだ。
ついでアクビをしながら楓が伸びをする。
「そーそー。あたしが居るんだから勝つのは当たり前なんだしさ。気楽にいこーよ☆」
口元は笑っているが、その瞳に映るのは絶対の自信。自分が負けるわけがないと信じるものの目だ。
「千葉君そのくらいにしようよ。ね? 山岸さんも油断してると痛い目に遭うかもしれないよ」
不意に横合いから言われ、楓がムッとなってそちらへ首を巡らせ、惣一が一瞥する。
返ってくるのは笑顔。コゲ茶色の髪をサイドテールにした姿勢の良い少女、東野辰美だ。
「なーに? 東野。あたしが負けるっての?」
「そうは言わないよ。けど、油断はしない方が良いんじゃないかな?」
突っかかっていく楓に困ったように笑いながらもしっかり自身の意見を述べる辰美。さらにそこへ。
「そうだな。慢心は足を掬う。自戒すべきだろう」
追従するように言うのは、ガッシリとした体躯に黒髪短髪でまるで目をつぶっているかのような糸目の少年、木野修平だ。
その真面目な物言いに楓が仏頂面になり、辰美が苦笑いを浮かべ、惣一は興味を無くしたように再び手にした本に目を落とした。
その様子にシモーヌが嘆息する。
「……即席とはいえ、この協調性の無さは問題ですわね」
痛痒をこらえるように額に手をやるシモーヌ。
と、彼女を心配する声が近くから上がった。
「だ、大丈夫? しーちゃん」
「しーちゃんと呼ばない。いつも言ってるでしょう? 和也」
シモーヌに注意され、小柄で小太りした少年がうなだれた。ぱっと見さえない感じの少年だ。
「ご、ごめんしーちゃ……シモーヌさん」
その姿に、シモーヌは小さくため息をもらした。
「……しゃんとなさい、斉藤和也。まったく。鷹久さんのように余裕を持って泰然とできないのですか?」
少し苛ついたように言い放つと、小太りの少年、斉藤和也は身をすくませた。
「ご、ごめん。け、けど、僕なんかが代表なんて……。やっぱり北丘さんか朱羽さんに変わってもらった方が……」
「あなたならできると思ったからこそ、私が推薦したのですわ! もっと自信を持ちなさい!」
弱気な発言をする和也を叱咤するシモーヌ。しかし、少年は恐縮するばかりだ。
それらの光景を眺め、銀髪紅眼の少女は、表情にさざ波すら立てない。
その紅い瞳は、いったい何を見ているのだろうか?




