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第六十六話『2-7の代表たち』


「はよーっす☆」

 2-8の教室によく通る声が響いた。

 綾香だ。それに続いて鷹久が苦笑いしながら控えめに「おはよう」と挨拶をした。

 クラスメイト等は、驚いて注目する者が多かったが、ひばりなどは笑顔で「おはよう」と応じた。

「ん? みんな集まってなにしてるんだ?」

 ひばりの声にそちらへ蒼い視線を転じれば、ひばりに慎吾に琴代の幼なじみトリオに、俊夫と洋介、雪菜が集まっていた。

 プレマッチ参加者が集まっている以上綾香も気にはなる。

「ああ、青島の奴が七組のプレマッチメンバーのリストを手に入れたというもんでな」

 答えた雪菜の言葉に、綾香は目を丸くした。

「洋介が? ほんとならお手柄かもな」

 言いながら綾香はそのグループに加わった。

 その様子に、洋介が満足げに髪をかき上げた。

「まあ僕にかかればこの程度の情報を入手するのは造作もないことだよ」

「自慢はどうでも良いからメンツを見せろよ」

 綾香にどうでも良さげに言われ、少なからず傷ついたような顔になる洋介。

 それをたしなめるのはひばりだ。

「綾香ちゃん、青島君は一生懸命調べてきてくれたんだから、そんなこと言っちゃあだめだよ?」

「……たしかに。悪かったな洋介。メンバー表見せてくれないか?」

 即座に非を認めた綾香は洋介に頭を下げた。それを見て彼は一瞬あっけにとられるが、「わかったよ」と言ってディスプレイを操作した。

「わかってるのは2-7のメンバーとその現在の装備傾向だよ。さすがにタレントはわからないけどね」

「……ほんとにどうやって調べたんだ?」

 リストを表示しながら説明する洋介に、綾香があきれたような視線を向けたがすぐにリストを注視した。

桜間おうま 片菜かたな[近接機動]、山岸やまぎし かえで[近接機動]、シモーヌ・ブリギッタ[近接防御]、千葉ちば 惣一そういち[射撃機動]、木野きの 修平しゅうへい[近接機動]、東野あずまや 辰美たつみ[射撃防御]、斉藤さいとう 和也かずや[射撃防御]」

「シモーヌは近接防御スタイルか。あたしとの相性は微妙だな」

 シモーヌのスタイルとして明記されたものを読んで綾香は嘆息した。

 しかし洋介は首を振った。

「いや、これは昨日の時点での装備だからね。今日にも変更するかもしれないよ? あくまで参考程度に考えてくれたまえ」

 洋介の言葉になるほどとうなずいてから、綾香は渋い顔になった。

「……おまえがこんなに役に立つとは思わなかったよ」

「ふふん♪ 惚れ直したかい?」

「いや、それは無い」

 即答である。

「ま、まあまあ。それでそれぞれどんな人かまでわかったりするの?」

 取りなすように言いながらひばりが訊ねると、洋介は少し顔をしかめた。

「まあ、プライバシーの侵害にならない程度には調べたけれどね」

 言いながら投影ディスプレイを操作する。

「木野君は剣道部の副将……副部長らしい。なかなかの腕前だそうだよ。千葉君は数学が得意なんだそうだ」

「へえ」

 綾香が興味深そうに声を漏らした。綾香自身数学者の娘であり、数学は大得意で好きな科目だ。

 だからこそ興味がわいたようだった。

「斉藤君は、シモーヌちゃんの後ろにくっついてる金魚のフンみたいな奴だね。あまり目立たない男だよ」

「和也はシモーヌの幼なじみだからね」

 洋介の言葉に補足を入れたのは鷹久だった。綾香もそれにうなずいている。

「ほんとだよ。よく一緒にいる。たいがい怒鳴られてるけどな」

「そうなの?」

 綾香の言葉に、ひばりが目を丸くして訊ねたが、彼女の代わりに鷹久がうなずいた。

「この東野ってのは?」

 不意に俊夫が口を開いて先を促すと、洋介が画面をスクロールさせた。

「東野さんはさっぱりした女子だね。居合い剣術同好会を主催しているよ」

 それを聞いて俊夫が目を細めた。楽しそうに口元が歪む。

「山岸さんは……」

「あれはただのバカだ。気にする必要はない」

 洋介を遮るように言ったのは雪菜だった。

 その表情は苦々しい。

「知り合いなの? 黒崎さん」

「……幼なじみだ」

 ひばりに訊かれイヤそうに答える雪菜。仲は悪いようだ。

「ケンカはダメだよう」

 その雰囲気を察してか、琴代が目を潤ませながら訴える。すると雪菜は困ったような顔になった。

「……べ、別にケンカばかりしているわけではない。ただその……世話の焼ける奴でな。時間にはルーズだし、だらしないし、何かにつけてこちらの揚げ足を取る。困った奴だ」

 雪菜の言葉を聞いて、ひばりと琴代が慎吾を見た。

 彼自身自覚があるのか小さな体をさらにちぢ込ませていた。

 それを見て小さく息を吐いたひばりは洋介に向き直った。

「で、桜間さんって?」

 訊かれて洋介が言葉を詰まらせた。

「……彼女は、よくわからない」

「わからない?」

 誰とも無しにオウム返す。

 洋介はそれにうなずき、画面をスライドさせた。

「彼女は、容姿こそ銀髪紅眼と目立つんだけどね。コレと言った情報は入手できなかった」

 洋介が悔しそうに下唇を噛んだ。それを見てから、ひばりは片菜の写真を見た。

 紅い瞳が自身を見つめているような錯覚に陥り、ひばりは体を震わせた。

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