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第六十三話『綾香の住む場所』


「……相変わらずすごいマンションだな……」

 暗証番号を入力している綾香の後ろで鷹久はぼやくようにつぶやいた。

 鷹久のアパートから徒歩三十分。区画整理によって造られたマンション区域に二人はやってきていた。

 彼らがいるのは、その中でもひときわ立派なマンションだ。

 一年前、鷹久が一人暮らしを始めてから少したった頃に綾香も一人暮らしを始めていた。

 半分は鷹久に当てつけたようなものだったが、綾香の父親が過剰に反応し、央華学園都市でもトップレベルのセキュリティーを誇るこのマンションの一室を、現金一括払いで購入したらしい。

 綾香自身は鷹久のようなアパート住まいを目論でいたのだが、駄々をこねる父とそれをなだめる母。さらにはセーフティーに詳しい叔父の鷹介らにも言われて渋々ここに入居したという経緯があった。

 初めのうちこそ落ち着かない感じであった綾香だったが、今では慣れたものである。

 しかし、鷹久はそうはいかない。去年は喧嘩していたこともあって、このマンションに泊まりにきたことは無かった。

 実家の夏目邸には節目節目に泊まってはいたのだが。

 だからだろうか?

 鷹久は妙に緊張した面もちで綾香の後に続いた。




 エレベーターから降り、玄関までいくと、パスコードを入力してからカードキーをスリットに通して読み込ませると玄関のロックが解除された。

 そのまま開けて中へと入っていく綾香は鷹久を振り返った。

「閉まる前に入れよ? 電気錠でロックがかかるからな?」

 言われてうなずき、彼女に続いた。

 綾香は『ただいま〜♪』と言いつつそのまま三和土に靴を脱ぎ散らかしながらあがるとくるんと回って鷹久の方を見た。

 軽くスカートが広がり、癖のある金髪が踊った。

 そうして鷹久を見る。その意図に彼はすぐに気づいた。

「……ただいま」

「おかえり♪」

 鷹久の言葉に綾香が笑顔で返した。

 おひさまの笑顔だ。そのやりとりで鷹久の落ち込んでいた気分がやわらいだ。

 そのまま自分も靴を脱ぎ、彼女のものと併せてそろえる。

 その間に綾香は買い物袋を持って奥へと行ってしまった。

 何とも楽しげなその後ろ姿におもわず苦笑する。

「……こういう訪れ方でなきゃ、楽しめたかもしれないけど……」

 軽く息を吐いて鷹久は綾香の後を追った。




 中に入ってみて、鷹久は軽くうなってしまった。

 部屋数を数えた結果、5LDKはある。

 どう考えても綾香ひとりで住むには広すぎるように思えるが、彼女の父はなにを考えて購入したのやら。

「……セキュリティーがしっかりしてるとは言ってもなあ」

 リビングに足を踏み入れて鷹久はぼやいた。すると、キッチンから金髪碧眼の少女が顔をのぞかせた。

「どうした?」

「いや、なんでも?」

 不思議そうな顔で訊ねた綾香に、鷹久は軽く笑いながら答えた。

 そして、ブレザーを脱いでイスにかけ、腕まくりをしながら歩きだした。

「じゃあ、なにから手伝おうか?」

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