第五十五話『部活勧誘?』
すべての授業が終わり、ホームルームも済んで、教室の掃除をひばりが中心となって終わらせ、放課後となった。
一学期初日とはいえ、授業も部活もあるのが央華学園の普通ではある。
とはいえ、ほとんどすべての部活動はこれから一週間は勧誘活動が主であり、帰り際の一年生を狙った勧誘合戦は学園の名物である。
そんな中を、二年生であるひばりと綾香、鷹久の三人は歩いていた。
「今年もやってんなあ☆」
鷹久の左腕に預けるようにして右腕を絡めた綾香は、楽しそうな顔で周囲を見回した。
辺りでは、野球部や天文部、文芸部、剣道部などよくある部活から、マイナーな部活まで自分たちの活動をアピールしている。
ひばりは学生鞄を手に、綾香を見上げた。
「綾香ちゃんは何か部活入ってるの?」
「ん? いちおうゲーム部ってとこに入ってる」
さらりと答える綾香に、ひばりは意外そうな顔になった。
「……意外。綾香ちゃんて運動部かと思ってたよ」
「綾香は確かに運動得意だけど、スポーツが好きってわけじゃあないからね」
ひばりの言葉に鷹久が苦笑いしながら答えた。
綾香もそれにつられて笑う。
「あはは。まあ、たまにやる分にはいいんだけどさ。大会とかピンとこなくて。ひばりも入るか? ゲーム部。つーか、ひばりはなんか部活入ってるのか?」
綾香は思いつき勧誘しながらも、ひばりに訊ねた。それを聞いて小さく笑うひばりだが。
「あたしは家庭科部だって自己紹介の時に言ったよ?」
その言葉に、綾香は虚を突かれたような顔になって首をひねった。
「……あれ?」
「なに聞いてたんだ? おまえは」
「うぐ……」
やれやれと言わんばかりに頭を振る鷹久。この少女にしては珍しい失態だ。
顔を赤らめ言葉に詰まる綾香。それを見て、ひばりと鷹久が軽く吹き出した。
「わ、笑うなよ! 今日はいろいろありすぎてすっぽ抜けてただけだ!」
慌てるように言い募る姿は、普段の快活な彼女とは違い、可愛らしかった。
思わぬ不意打ちに、今度は鷹久の方がわずかに赤くなった。
それに気づいてか、ひばりはふたりより前に出ると、振り返った。
「まあ、あたしは家のことが忙しくて、あまり部活には出れないんだよね。今日もこれからやらなきゃいけないことがあるし。だからまた明日ね♪」
笑いながら駆け出す小さな少女。
「……って待てよひばり!」
綾香が慌てて止めるが、「ごめーん、急いでるんだ」と、苦笑いとともに返され、引き留められなくなった。
部活の勧誘の声を背後のBGMに、立ち尽くす綾香。
「……友達になった記念に遊びに行くつもりだったんだけどな」
つぶやいて、鷹久の腕に絡めていた自らの腕に力を入れた。
「……まあ、また誘えば良いよ。今日は牧野君も如月さんも部活の方に行くって話だったしね」
鷹久が綾香を慰めるように言うと、彼女はうなずいた。そして、その蒼い瞳は駆けていく小さな影を見送っていた。




