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第五話『ともだち100にん?』

 かたや去年から噂の金髪碧眼美少女と、常にその傍らにいる少年。かたや同学年ではトップレベルに体が大きい少女と小さい少年少女。

 お互いの姿を見て思わず立ち止まる二つのグループ。

「あれって確か夏目さんだよね?」

「ああ、去年はかなり目立ってたからな。俺も知ってる」

「二人ともどうしたの?」

 ひばりと慎吾は去年からちょくちょく小耳に挟んでいた、良くも悪くも噂の人物との遭遇に軽く驚いていた。

 その真ん中で首を傾げる琴代は大物と言うべきだろうか?

 しかし、当の綾香も軽く驚いていた。

「あれが如月さんと支倉さんか」

「なに、知ってる相手?」

「んにゃ? ぜーんぜん。ただ噂で高校生とは思えないくらい小さい子と、大きい子がいるって話を聞いてさ。会ってみたいとは思ってたんだ☆」

「……あんまりイジらないでよ?」

 鷹久の注意を聞いているのかどうか。

 綾香は鷹久と組んでいた腕を解いてひばりたちの方へと足を踏み出した。

 綾香はそのまま三人の前まで来ると、腰を屈めた。

「おっす♪ あたしは夏目綾香だ☆ よろしくな♪」

「……」

 ニコニコ笑いながら右手を出してきた綾香にひばりは戸惑った。そう、綾香は目立つ琴代でも慎吾でもなく、まっすぐひばりを目指して進み出て、右手を差し出したのだ。

「あ……えっと、はい。支倉ひばりです」

 綾香の勢いに呑まれるように、ひばりは琴代の手を離しておずおずと右手を差し出した。

 すかさずその手を捕まえるように握る綾香。

「おっし、これであたし達は友達だな☆ よろしくな? ひばり♪」

 突然のことにひばりは目を白黒させるが、うれしそうな綾香の笑顔を見て、小さく苦笑いしてから、満面の笑みを浮かべた。

「ふふ、よろしくね? 夏目さん」

「綾香でいーぞ? あたしはもうひばりって呼ぶからな☆」

「いや、それはなれなれしすぎじゃ……」

「ずっるーい!! わたしも綾香ちゃんと友達になるぅっ!!」

 綾香のフレンドリーさにツッコもうとしたひばりの言葉を、隣の琴代が遮った。

 それを見て、綾香は立ち上がりながら笑った。

「あはは☆ なら琴代ともだな♪ よろしく頼むぜ琴代」

「うん♪」

 言いながら手を差し出した綾香に、琴代は満面の笑みを浮かべてうなずいた。そして、バッと両手を広げた。

「夏目さん危ない! 逃げてぇっ?!」

「へ? むぐぅっ?!」

 ひばりの叫びも虚しく、琴代の唐突な行動に反応しきれなかった綾香は彼女に抱きすくめられてしまった。

 身長が170ある綾香は、女子では長身に入るが、188もある琴代にはまるで及ばない。

 しかも琴代は体格に見合ったパワーの持ち主でもあった。

「ぐ、ぬうぅぅ……」

「えへへへ♪」

 親愛の表現だと思い、琴代の殺人ハグに、必死で耐える綾香。そんな苦しそうな彼女の様子に、琴代はまるで気付かない。

 結局。

「も゛、もう゛無理いぃぃ〜〜っ?!」

 すぐさま限界を迎えてタップする綾香。

 しかし、琴代がタップの意味を知るはずもなく。

「ぎ、ぎぶ……」

 あえなく轟沈した。

 それを見て慌てたのはひばりだ。

「わわっ?! こ、琴代ちゃん! そろそろ夏目さんを放してあげてよ?!」

「? うん」

 そんなひばりの様子に、琴代は首を傾げて綾香を解放した。

「ぶっは、死ぬかと思った……」

「だ、だいじょうぶ? 夏目さん」

 地面に突っ伏し、息を荒げる綾香。それをひばりが懸命に介抱する。

「い、いや大丈夫。体はわりと頑丈だからさ……しっかし、すげえパワーだなあ」

 綾香はひばりに笑いかけながら道路にへたり込んだ。

 その様子を見て、遠巻きにしていた鷹久は軽い安堵の息を吐いた。

「琴代の奴が悪いな」

 不意に横合いから声をかけられ、鷹久がそちらを見ると、いつのまにやら小さな少年が頭の後ろで手を組みながら立っていた。

「いや、まあ、あれくらいならね。あれで綾香が懲りてくれたら言うこと無いんだけどさ」

 そう言って苦笑いをする鷹久を見上げて、慎吾も笑った。

「……なるほど、あんたも相方には苦労してるってわけだ」

「まあね。そっちもかい?」

「言わずもがなだ」

 互いに視線を交わしながら苦笑いを浮かべる二人。

「改めて、僕は吉田 鷹久。よろしくね」

「おう、鷹久か。俺は慎吾。牧野 慎吾だ。よろしくな鷹久」

 男ふたりで通じるものがあったのか、互いに名乗りあって握手するふたりであった。




「いやいや、今日は良い日だな☆ 朝から友達が三人増えたぜ♪」

「あ゛? 俺も入ってんのかよ?」

 上機嫌な綾香の言葉に、慎吾が嫌そうに言う。すると綾香が笑った。

「そうだぜ♪ えーっと?」

「牧野だ。牧野 慎吾」

 名前が出てこない綾香に、あきれたように慎吾が自己紹介した。すると綾香が手を打つ。

「あー、慎吾な。慎吾。うん、覚えとくわ」

「てめ、喧嘩売ってんのか?」

 ぞんざいな綾香の態度に、慎吾がこめかみをひきつらせた。

 すると綾香が不敵に笑った。

「ふっふーん♪ あたしは誰の挑戦でも受けーるっ☆ あだっ?!」

「上等! いだっ?!」

「やめんか」

「やめなさい」

 挑発するような綾香とふっかけようとした慎吾の頭に衝撃が走った。

 ふたりの様子を見ていた鷹久とひばりが、同時にゲンコツとハリセンでツッコんだのだ。

「なにすんだよタカ!」

「そうだぜひばり。つーかハリセンなんざどっから出したんだよ?」

「企業秘密です」

 綾香と慎吾、ふたりで抗議の声を上げるが、鷹久もひばりも素知らぬ顔だ。

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