第四十九話『ライバル……?』
「相変わらず見せつけてくださいますわね? 夏目綾香」
響いた声に、綾香が振り向き、一同がそれに追従する。
と、そこに立っていたのは、長い金髪を縦ロールにしたタレ目の白人少女だ。
その姿を認め、綾香が笑顔になった。
「お? シモーヌじゃん♪ おひさ☆」
軽い調子で挨拶をする綾香に、シモーヌと呼ばれた少女は柳眉を逆立てた。
「『おひさ☆』じゃありませんですわ! 夏目綾香! あなたという方は! いつもいつも……いつもいつもいつもいつも鷹久君とイチャイチャイチャイチャしてっ!!」
握り拳を作りながらじだんだを踏むシモーヌ。しかし、綾香は大きな?マークを浮かべた。
「なに言ってんだ? タカとイチャイチャなんてしてないぞ?」
綾香の言葉にその場の面々はおろか、学食中の人間が『え゛っ?!』とばかりに綾香に注目した。それに気が付いた綾香はさすがに戸惑ったような顔になり、鷹久も困り顔になった。
「な、なんだよみんなして? あたしとタカは従姉弟同士で、姉弟みたいなもんだぞ? イチャついたりなんてある訳ないだろ?」
「そうだよ。みんな勘違いしないでよ」
綾香と鷹久が口々に言うが、周りは納得しそうになかった。
「わたくしを無視しないでくださいましっ!!」
さらにシモーヌがいきりたった声をあげ、綾香は片方の耳に指を突っ込んだ。
「なんだよシモーヌ。さっきからうるさいぞ?」
うるさそうに眉間にしわを作った綾香に言われ、シモーヌははなじろんだ。
その間隙をぬって、ひばりが口を開いた。
「ねえ綾香ちゃん。知ってる人?」
聞かれて綾香が、あっ。となった。
「おっと悪い悪い。コイツはシモーヌ=ブリギッタ。去年クラスメートであたしの友……」
「ライバルですわ!」
綾香の言葉を遮り、シモーヌが堂々と宣言した。
それを聞いてひばりは目を丸くし、アキが片眉を跳ねさせ、クリスが面白そうな顔になった。宣言された綾香自身はげんなりした顔でため息をついており、由里達は苦笑いをしている。
慎吾は我関せずとばかりにそっぽを向き、琴代が目を輝かせた。
そして……。
「ブラボー!」
突如として上がった声に、シモーヌは肩を跳ねさせた。
「な、なんですの?」
戸惑い気味にその声の主を見ると、そこには薄茶色の髪を無造作に撫で着けた少年が立っていた。
「ブラボー美しいお嬢さん。僕は青木洋介。よろしく頼むよ」
言いながらシモーヌへと近づいていく洋介。
それを見たシモーヌの目が鋭くなるが、彼はまるで気づく様子が無く、何事かを口にしながら彼女へと近づいていった。
「実に素敵だよシモーヌさん。その気高く美しい姿。まさに綾香ちゃんのライバルにふさわしいよ! さあ! 僕と結婚しよ……」
脈絡もなにもない洋介の話は、唐突に打ち切られ、彼の体が掻き消えた。
と、同時に派手な音が響いて、洋介は床に叩きつけられていた。
「ぐぅおぉぉおっ?!」
激痛に転がり回る洋介。そこへひばりがあわてて駆け寄った。
「だ、だいじょうぶ?! 青木君!」
「おぉ……我が女神……。やっぱり僕には君しかいないみたいだよ……結婚しておくれ……」
「それはイヤ」
即答だった。




