第四十七話『央華の学食事情』
さて、昼食のために学食へ向かう綾香とひばりではあるが、そのメンツは確実に増加していた。
まず、鷹久は当然のように綾香に腕を取られて引っ張られ、ひばりが学食に行くのを聞きつけた琴代が慎吾を抱えて合流。
さらに綾香とひばりの二人で渋るアキを説得し、面白そうだというクリスも着いてきていた。
「つーかお前は誘ってねえんだけどな? 洋介」
「ツレないなあマイハニーは。我が女神も居ることだし、僕が同道するのは至極当然の流れだろう?」
ひとり邪険にされる洋介だが、まるでめげた様子もないあたり大した玉である。
「ま、まあ良いじゃない。それにしても八人か。みんな座れるかな?」
取りなすように言いながら、ひばりは思案した。
学園に併設されている学食を利用せず教室で弁当や購買のパンを食べたり中庭を利用する生徒も多いわけだが、生徒総数の多い学園だけあって、学食のスペースはかなり広く設備が整っているため、こちらを利用する生徒は少なくはない。
三学年の生徒数の合計は千三百人弱。そのうちの三〜四割くらいが学食を利用する。
つまり四、五百人だ。普通なら、この人数が一度に食事ができるわけも無く、入れ替え制のような形になるべきなのだろうが、この学園の理事長はそんな当たり前のことはしない。
『なら学食増やせば良いのよ。あ、後、おしゃれなカフェテリアもね』
おかげで各学年向け学食というものが出来、しかもカフェテリアまで作られてしまった。
しかもである。カフェテリアは学生が運営しているのだ。むろん調理師免状持ちの教師が監督責任者としてカフェ研究会の顧問をしており、安全面はしっかりしている。
そんなわけで、央華学園には食事処が四軒もあるのだ。
しかしながら、昼時はやはり四軒とも混み合うこと必至ではある。
ひばりの心配は当然のものであったが。
「お! いたいた♪ こっちだぜ」
『?』
混み合う学食に着くなり中をのぞき込んだ綾香が笑顔で案内しはじめたので、一同は不思議そうに顔を見合わせた。
そのままぞろぞろと着いていくと、昼時は開放されているはずの団体スペースにたどり着いた。
そこにはすでに三人の女子が陣取っており、こちらに気づいて手を振ってきた。
「綾香〜♪」
「早く来いよな」
「……待ってた」
「わりいわりい☆」
三人から口々に言われ、綾香は少しだけすまなそうにして頭を掻いた。
その三人は、そろってタイプの違う女子のようだった。
少しゴツい感じのヘッドフォンを首にかけたショートヘアで明るい感じの少女に、ボブカットにヘアバンドをしていて気の強そうな少女、茶髪のロングヘアで化粧っ気が強く、浅黒い肌のギャルっぽい少女の三人だ。
彼女たちから目線を外した綾香は、ひばり達の方を見て笑った。
「紹介するよ。あたしの友達☆」
そう言ってまずヘッドフォンの少女を手で示した。
「こいつは杏野 由里。それから……」
ついでヘアバンドの少女へ。
「こっちが天原 麗華。んで、このギャルっぽいのが坂上 優奈な? 三人とも、こっちがあたしのクラスでできた新しい友達だ」




